質問主意書

第168回国会(臨時会)

答弁書


第百六十八回国会答弁書第一一四号

内閣参質一六八第一一四号
  平成二十年一月十八日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員峰崎直樹君提出証拠の標目及び特信情況に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員峰崎直樹君提出証拠の標目及び特信情況に関する質問に対する答弁書

一について

 大正十一年五月五日に公布された刑事訴訟法(大正十一年法律第七十五号。以下「旧刑事訴訟法」という。)第三百六十条第一項は「有罪ノ言渡ヲ為スニハ罪ト為ルヘキ事実及証拠ニ依リ之ヲ認メタル理由ヲ説明シ法令ノ適用ヲ示スヘシ」と規定し、戦時刑事特別法(昭和十七年法律第六十四号)第二十六条は「有罪ノ言渡ヲ為スニ当リ証拠ニ依リテ罪ト為ルベキ事実ヲ認メタル理由ヲ説明シ法令ノ適用ヲ示スニハ証拠ノ標目及法令ヲ掲グルヲ以テ足ル」と規定していたものと承知している。
 戦時刑事特別法が戦時刑事特別法廃止法律(昭和二十年法律第四十七号)により昭和二十一年一月十五日に廃止された後、旧刑事訴訟法を全部改正するものとして、昭和二十四年一月一日から、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号。以下「現行刑事訴訟法」という。)が施行されたところ、現行刑事訴訟法の国会審議における政府説明等によれば、旧刑事訴訟法に規定する「証拠ニ依リ之ヲ認メタル理由」の説明が形式に堕しており、また、裁判官の重大な負担となって、審理が遅延するという結果もあったこと等から、判決を書く手数をなるべく省き、実際の公判において事実の真相を発見する面において裁判官の主力を用いるとの趣旨により、現行刑事訴訟法第三百三十五条第一項において、有罪の言渡しをするには証拠の標目を示さなければならない旨が規定されたものと承知している。
 現行刑事訴訟法第三百三十五条第一項の規定は、「事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現する」という現行刑事訴訟法の目的を実現するために合理的なものであり、これを旧刑事訴訟法の規定のように改める必要はないと考えている。

二について

 旧刑事訴訟法第三百四十三条第一項は「被告人其ノ他ノ者ノ供述ヲ録取シタル書類ニシテ法令ニ依リ作成シタル訊問調書ニ非サルモノ」については「供述者死亡シタルトキ」等の場合に限りこれを証拠とすることができる旨を規定し、戦時刑事特別法第二十二条ノ三は「裁判所又ハ予審判事相当ト認ムルトキハ証人又ハ鑑定人ノ訊問ニ代ヘ書面ノ提出ヲ為サシムルコトヲ得」と規定していたものと承知している。
 一についてで述べたように、戦時刑事特別法が廃止された後、旧刑事訴訟法を全部改正するものとして、現行刑事訴訟法が施行されたところ、現行刑事訴訟法の国会審議における政府説明等によれば、現行刑事訴訟法は、旧刑事訴訟法において採られていた予審制度を廃止する一方、いわゆる伝聞証拠禁止の原則を採用した上で、同原則の例外についても詳細に規定することとし、その一つとして、検察官の面前における供述を録取した書面に証拠能力が認められる場合を定めた第三百二十一条第一項第二号の規定が設けられたものと承知している。
 現行刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号の規定は、供述者が公判期日において前の供述と相反する供述をした場合等に適正に事実を認定するために重要な役割を果たしており、これを廃止すべきものとは考えていない。