質問主意書

第168回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一○○号

内閣参質一六八第一○○号
  平成十九年十二月二十八日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 町村 信孝   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員紙智子君提出サンルダムに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出サンルダムに関する質問に対する答弁書

一の1について

 名寄市内を流れる天塩川及び名寄川では、現時点においても、天塩川水系河川整備計画(以下「整備計画」という。)の目標流量を流下させるために必要な河道が確保されていない区間があるなど、十分な治水対策が行われていないため、整備計画の目標流量の洪水が発生した場合、流量が河川の流下能力を超える箇所においては、破堤のおそれがある。

一の2について

 整備計画における名寄川等の目標流量は、効果的な河川整備を実施するために、河川法施行令(昭和四十年政令第十四号)第十条の規定に基づき、実績流量のみならず、地域の気象、開発の状況等を総合的に考慮して設定したものである。

一の3について

 整備計画においては、サンルダムの建設、堤防の整備等により目標流量を流下させるための措置を講ずるとともに、内水対策等に取り組むこととしている。このうち、下川町三の橋地先については、流下能力が不足している箇所の河道掘削等を実施することとしている。また、音威子府村筬島地先等については、河川管理者等が保有する排水ポンプ車等を活用し内水排除を行うこととしている。

二の1について

 名寄川の真勲別地点における九月から四月までの非かんがい期の正常流量(漁業、流水の清潔の保持、動植物の生息・生育地の状況等を総合的に考慮して定められた維持流量及び流水の占用のために必要な水利流量の双方を満足する流量をいう。以下同じ。)は、サケ、マスの産卵等に必要な水深及び流速を考慮した流量である毎秒四・八立方メートル並びに工業用水と上水の取水のために必要な流量である毎秒〇・七立方メートルの合計である毎秒五・五立方メートルに設定している。
 九月から十一月までの時期においてはサケの産卵のために、十二月から四月までの時期においてはサケの卵・稚仔魚の保全のために、必要な水深を確保すること等としているものである。

二の2について

 流水の占用の許可を行うに当たっては、「行政手続法の施行に伴う河川法等における処分の運用等について」(平成六年九月三十日付け建設省河政発第五十三号・河治発第七十三号・河開発第百十八号・河砂発第五十号建設省河川局水政課長、治水課長、開発課長及び砂防部砂防課長連名通知)一1(3)①に基づき、取水予定水量が基準渇水流量(十年に一回程度の渇水年における取水予定地点の渇水流量をいう。以下同じ。)から正常流量を控除した水量の範囲内のものであることに留意し、審査を行うこととしている。
 名寄川においては、真勲別地点における基準渇水流量(毎秒二・五八立方メートル)が、整備計画において定めている正常流量(かんがい期は最大おおむね毎秒六・〇立方メートル、非かんがい期はおおむね毎秒五・五立方メートル)を下回っているため、現状では新たに流水の占用の許可を行うことはできない。

二の3について

 岩尾内ダムは、正常流量を確保することが目的ではなく、発電を実施しないときは放流しないため、ダムの下流で無水となる期間が生じることとなる。一方、サンルダムは、整備計画において、ダムの下流に対し常に正常流量を確保することとしており、また、サンルダムにおける発電事業は、下流の正常流量を確保するための放流を利用して、ダムの直下に位置する発電所において行うこととしている。したがって、岩尾内ダムのような無水となる期間が生じることはなく、発電と正常流量を確保することとは両立すると考えている。

三の1について

 御指摘の天塩川流域委員会の意見や関係住民、北海道知事等からの意見を踏まえ策定した整備計画においては、「サンル川流域においてサクラマスが遡上し、産卵床が広い範囲で確認されているため、サンルダム建設にあたっては魚道を設置し、ダム地点において遡上・降下の機能を確保することにより、サクラマスの生息環境への影響を最小限とするよう取組む。サクラマスの遡上、降下対策にあたっては専門家の意見を聴くとともに、現状の機能を保全しながら事前の段階から必要に応じて試験を行い、その生息環境の推移を継続的にモニタリングするなどその効果を確認したうえで必要な対策を講ずることができる体制を整備する」こととしている。この趣旨を踏まえ、北海道開発局は、魚類等の生息環境の保全に向けた川づくり等について、学識経験や知見を有する専門家の意見を聴取するため、「天塩川魚類生息環境保全に関する専門家会議」を設置したところである。
 また、現在、事前の段階からの試験の実施も含め種々の対策を検討しているところであり、本専門家会議の議論も踏まえ、必要な対策を実施してまいりたい。

三の2について

 サンルダムにおける暫定水位運用とは、サクラマス幼魚(以下「スモルト」という。)を確実に降下させるために、利水者の協力を得ながら、スモルトの降下時期に可能な限りダム貯水池の水位を下げることとする暫定的な対策である。また、スモルトを確実に降下させるための恒久的対策として、湖岸沿いに設置する管路等を利用するバイパス方式等を現在検討しているところであり、暫定水位運用は、恒久的対策の効果を十分把握・検証するまでの間の暫定的な運用であることから、恒久的対策の効果が把握されれば、サンルダムは所定の目的のための通常の運用を行うこととなる。

四について

 サンルダム建設事業の事業費約五百三十億円のうち、平成十八年度までに、約二百二十二億円を執行している。今後の事業費は、コスト縮減も見込み、魚道整備費を含むダム本体等の工事費で約二百六億円、付け替え道路等の用地費及び補償費で約四十四億円、環境調査等の測量及び試験費で約二十九億円、船舶及び機械器具費で約三億円、営繕費等で約三億円並びに事務費等で約二十一億円と算定している。今後の事業の執行に当たっては厳格に事業費管理を行い、予算の範囲にとどめてまいりたい。

五について

 平成十八年以降、北海道開発局は、天塩川水系河川整備計画原案等について、広く関係住民に対する説明会等を開催しているところである。現時点において、御指摘のサクラマスへの影響については、必ずしもすべての関係団体の理解を得ているものとは認識していないが、引き続き理解が得られるよう努力してまいりたい。