質問主意書

第168回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第八五号

内閣参質一六八第八五号
  平成十九年十二月二十一日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員円より子君提出女性が身近な地域で安心して出産できる環境確保に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員円より子君提出女性が身近な地域で安心して出産できる環境確保に関する質問に対する答弁書

一について

 厚生労働省としては、良質な医療を提供する体制の確立を図る施策の一環として、助産所における分娩の安全を確保していくことは重要なことであると考えており、今後とも、分娩を取り扱う助産所(以下「分娩取扱助産所」という。)における嘱託医師及び嘱託医療機関の確保を含め、周産期医療体制の整備等に努めてまいりたい。

二について

 厚生労働省としては、お尋ねの「この文章の脈絡では、嘱託医療機関は当然産科のある病院」に限るとは理解しておらず、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第十九条に基づく厚生労働省令の内容を検討するに当たり、産科又は産婦人科医師である嘱託医師のみでは対応が困難な場合があることが考えられたことから、医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)第十五条の二第三項において、分娩取扱助産所の開設者は、嘱託医師による分娩時等の異常への対応が困難な場合のため、診療科名中に産科又は産婦人科及び小児科を有し、かつ、新生児への診療を行うことができる病院又は診療所(患者を入院させるための施設を有するものに限る。)を嘱託する病院又は診療所として定めておかなければならないことを規定したものである。

三について

 医師法(昭和二十三年法律第二百一号)第十九条第一項においては、「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と規定しており、医師が嘱託医になることの依頼を拒否することは、これに違反するものではない。
 いずれにせよ、厚生労働省としては、分娩取扱助産所における嘱託医師及び嘱託医療機関の確保が着実に進むよう都道府県等に対する指導等に努めてまいりたい。

四について

 厚生労働省としては、医療法第十九条等の規定の施行に当たり留意すべき事項について、本年十月三日の全国看護行政担当者説明会において説明するとともに、その周知徹底を図るため、既に「分娩を取り扱う助産所の嘱託医師及び嘱託する病院又は診療所の確保について」(平成十九年十二月五日付け医政発第一二〇五〇〇二号厚生労働省医政局長通知)を発出しているところである。

五について

 厚生労働省としては、分娩時等の異常に適切に対応するためには、助産所と嘱託医療機関との間の日頃からの信頼関係が必要であり、そのような信頼関係の有無に関わらず、御指摘の周産期センター等に対して一律に嘱託医療機関となることを義務付けることは適当ではないと考えている。

六について

 医療法第十九条において助産所の開設者は嘱託医師及び嘱託医療機関を定めておかなければならないことを規定しているのは、助産所における分娩の安全を確保するためであり、御指摘は当たらないと考える。

七について

 既に、医療法上、地域の実情に応じて医療提供体制の確保を図るため、都道府県は医療計画において周産期医療の確保に必要な事業に係る医療連携体制に関する事項等を定めるものとされているところであり、また、厚生労働省としても都道府県が医療計画を作成するに当たって必要な助言を行うなどの支援を行ってきているところであることから、御指摘のような法整備を行う必要はないものと考える。
 また、お尋ねの「閉鎖されている産科棟」については、厚生労働省としては、例えば、これを活用した助産師外来の実施や院内助産所の開設に対する支援等を行うこととしている。

八について

 厚生労働省としては、国によって助産師資格の取得方法は様々であり、助産師教育の期間の長さについて単純に比較することは困難であると考えている。
 また、我が国の助産師の業務範囲については、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)上は「助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導」とされているが、厚生労働省として承知している限りにおいては、これは他国の助産師の業務範囲と比較して特に狭いものではない。
 いずれにせよ、厚生労働省としては、助産師外来の実施や院内助産所の開設に対する支援等により、助産師の活用を推進してまいりたい。