質問主意書

第168回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第六八号

内閣参質一六八第六八号
  平成十九年十二月七日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員平野達男君提出北上川上流改修一関遊水地事業に関連した遊水地内営農被害の増大に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員平野達男君提出北上川上流改修一関遊水地事業に関連した遊水地内営農被害の増大に関する質問に対する答弁書

一について

 公共事業の施行中又は施行後における損害については、公共事業の施行により損害が発生し、又は損害の発生が確実に予見される場合において、その損害が社会生活上受忍すべき範囲を超えるものであるときには、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱の施行について」(昭和三十七年六月二十九日閣議了解)第三に従い、その損害に対する賠償を行っているところである。

二及び三について

 一関遊水地事業に係る計画においては、一関遊水地の周囲堤(以下「周囲堤」という。)の建設によって、洪水の発生に伴い、第一遊水地、第二遊水地及び第三遊水地内の営農が受ける損害が著しく増大することは想定しておらず、これについて賠償を行うことは考えていない。また、昭和四十七年に当該計画を公表して以降、一関遊水地内の地権者に対しても、その旨の説明をしてきているところである。

四について

 一関遊水地内は、周囲堤の建設前より洪水時に頻繁に冠水する地域であり、周囲堤の建設による影響については、冠水深のわずかな増加の可能性はあるものの、冠水面積の拡大、冠水時間の長期化等の冠水被害及び土砂の沈殿、流木のたい積等による被害が、著しく増大することはないと考えている。

五について

 農業災害補償法(昭和二十二年法律第百八十五号)は、第一条において、農業者が不慮の事故によって受けることのある損失を補てんして農業経営の安定を図り、農業生産力の発展に資することを目的としており、風水害等の気象上の原因による災害等に起因して農作物等の損害を受けた場合については、同法第八十四条第一項の規定により共済事故として補償の対象となる。したがって、このような災害によって農作物等の損害を受けた農業者に対しては、同法に基づき、その損害の程度に応じて補償が行われることとなっている。

六について

 御指摘の平成十九年九月の洪水における一関遊水地内の農業被害は、当該洪水に起因するものであり、周囲堤の概成に起因するものではないと考えている。

七及び八について

 周囲堤の概成によって、洪水時における一関遊水地内の農業被害が著しく増大することは想定しておらず、賠償が必要になるとは考えていない。

九について

 地役権とは、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利であり、一関遊水地事業においては、一関遊水地の小堤(以下「小堤」という。)が完成した後に、一関遊水地内の土地について、小堤の敷地である土地を要役地(民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百八十一条第一項に規定する要役地をいう。)とし、遊水地の機能の保全の妨げとなる工作物の設置その他の行為の禁止等を目的として、地役権を設定する予定である。

十について

 地役権の設定に伴う補償の具体的な額は、国土交通省の公共用地の取得に伴う損失補償基準(平成十三年国土交通省訓令第七十六号)第二十六条第二項の規定に基づき、地役権が設定される土地の正常な取引価格に相当する額に、当該土地の利用が妨げられる程度に応じて適正に定めた割合を乗じることにより算定している。

十一及び十二について

 北上川については、年超過確率百五十分の一の降雨を対象として、周囲堤を含めた堤防の整備等の河川整備を行っている。

十三及び十四について

 周囲堤及び小堤は、平成三十年代を目途に完成する予定である。また、小堤の建設については平成十八年度より着手している。

十五について

 小堤は、一関遊水地内の冠水の頻度を低下させるためのものであり、冠水面積の拡大を抑制するための周囲堤と相まって、北上川上流域の治水安全度の向上に資するものである。

十六について

 お尋ねの「下流への流量に与える影響」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、一関遊水地の満水時には、遊水地地点より上流からの流量がそのまま下流に流下することとなるため、下流への流量は変わらないと考えている。

十七について

 利根川の渡良瀬遊水地、鶴見川の鶴見川多目的遊水地等では、遊水地内の用地を買収し、掘削による遊水地容量の増大等を行っている。また、最上川の大久保遊水地、木津川の上野遊水地等では、遊水地内の用地に地役権を設定し、地役権の設定に伴う補償を行っており、遊水地内の農地については、従前どおりの営農が可能となっている。これらのいずれの場合においても、冠水被害に対する賠償を行っているものではない。