質問主意書

第168回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第六一号

内閣参質一六八第六一号
  平成十九年十一月二十七日
内閣総理大臣 福田 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員谷博之君提出特許微生物寄託制度の在り方に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員谷博之君提出特許微生物寄託制度の在り方に関する質問に対する答弁書

一の1について

 独立行政法人製品評価技術基盤機構(以下「評価機構」という。)の特許微生物寄託センターが用いている施設は、平成十一年度第二次補正予算の一般会計から支出された約五十九億六千三百万円によって、生物遺伝資源の保存等のために整備されたものであるが、特許微生物寄託センターの業務は生物遺伝資源の保存等の業務の一部として位置付けられることから、特許微生物寄託業務に係る費用を抜き出してお示しすることは困難である。
 特許微生物寄託業務に係る機器等の購入のため、平成十六年度の寄託業務開始以降平成十八年度までに、一般会計の独立行政法人製品評価技術基盤機構運営費交付金のうちの計約二千三百万円及び特許特別会計の特許微生物寄託等業務委託費のうちの計約二千五百万円がそれぞれ充当されている。

一の2について

 工業技術院年報によれば、特許特別会計より、施設整備費として、昭和六十年に二億四千六百五十七万五千円が、昭和六十一年に三億八千九百十六万三千円がそれぞれ支出されている。
 また、参議院議員谷博之君提出独立行政法人産業技術総合研究所と特許特別会計に関する質問に対する答弁書(平成十九年十一月二日内閣参質一六八第三四号)の十三についてでお答えしたとおり、平成八年度及び平成九年度の決算によれば、両年度における特許特別会計の施設整備費の総額は、十三億三千六百三十一万五千円となっている。
 独立行政法人産業技術総合研究所(以下「産総研」という。)によれば、平成十三年以降、特許生物寄託センターの修理及び工事の代金として、一般会計より二億百六十二万五千円が支出されているとのことである。

一の3について

 参議院議員谷博之君提出産総研特許生物寄託センターの不祥事対応に関する質問に対する答弁書(平成十九年十一月二日内閣参質一六八第三三号。以下「三三号答弁書」という。)の四についてでお答えしたとおり、産総研及び評価機構における寄託手数料は、日本国において国際寄託当局が行う特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づく微生物の寄託等に関する実施要綱(平成十四年経済産業省告示第二百九十号)第二十四条又は特許微生物寄託等事業実施要綱(平成十四年経済産業省告示第二百九十一号)第二十二条の規定に基づき、実費を勘案して定められたものである。評価機構においては、生物遺伝資源の収集及び保存等のための施設を有し、これを活用していることや、寄託手数料の算定においては、人件費や物件費等も考慮されることなどから、産総研及び評価機構における寄託手数料に差が生じているものと承知している。

二について

 産総研における微生物の国際寄託手数料二十二万円は、微生物一株当たりに要する人件費十一万七千八十八円、物件費八万九千百九十二円及びその他二千六百十円並びにこれらの費用に係る消費税に基づいて算出されている。また、評価機構における微生物の国際寄託手数料十四万五千九百五十円は、微生物一株当たりに要する人件費五万四千三十円、物件費五万六千三百九十九円及びその他二万八千六百七十六円並びにこれらの費用に係る消費税に基づいて算出されている。

三について

 三三号答弁書の四についてでお答えしたとおり、産総研及び評価機構における国際寄託手数料は、それぞれ実費を勘案して定められたものであり、微生物の寄託者から手数料を徴収しつつ事業が運営されているところであるが、経済産業省としては、今後とも、国際寄託手数料の額については実費を勘案しつつ適正に定められるべきと考えている。

四の1について

 国際寄託当局としての地位を取得するためには、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約(以下「ブダペスト条約」という。)第六条(2)に掲げられている要件を満たす必要があり、国際寄託当局となる主体には、それが国であるか否かにかかわらず、これらの要件を満たす者がなるべきものと考えている。

四の2について

 平成十六年度以降にブダペスト条約に基づいて産総研に寄託された特許微生物の保管に係る費用は、これまで特許特別会計からは支出されておらず、現時点において当該費用について特許特別会計から支出する予定はない。今後については、利用者のニーズ等を踏まえて適切に対処してまいりたい。

四の3について

 評価機構に対しては、平成十六年度から平成十八年度までの間、特許特別会計から、円滑に特許微生物の受託関連業務を実施する観点からの支出がなされたが、平成十九年度は特許特別会計からの支出はなく、現時点において、特許特別会計から評価機構に支出する予定はない。今後については、利用者のニーズ等を踏まえて適切に対処してまいりたい。

四の4について

 「特許特別会計からの支弁は一切受けられない」との御指摘の根拠が必ずしも明らかではないが、今後については、利用者のニーズ等を踏まえて適切に対処してまいりたい。

四の5について

 特許微生物寄託業務に係る費用の扱いについては、今後、利用者のニーズ等を踏まえて適切に対処してまいりたい。

四の6について

 我が国の特許微生物寄託制度は、昭和四十五年の制度開始以来、当該制度をめぐる状況の変化、利用者のニーズ等を踏まえつつ、寄託範囲の拡大等の見直しを行ってきたところであり、今後も、利用者のニーズ等を踏まえて適切に対処してまいりたい。

四の7について

 「知的財産推進計画二〇○七」の第2章I.5.(2)のa)からc)までに記載された事項の進捗状況は次のとおりである。
 aについては、現在、特許庁内において微生物等の寄託の要否を明確化するための事例集を検討しており、本年度中に公表することを予定している。
 bについては、特許寄託機関がホームページ等を通じて、分譲を受けた者が微生物等を使用するに当たり留意すべき使用条件等を周知している。
 cについては、微生物を寄託する際の寄託者の負担軽減に関して財団法人知的財産研究所に学識者、制度利用者等から構成される委員会を設置し、所要の検討を進めているところである。

四の8について

 四の7についてで述べたとおり、既に制度利用者の参加も得た上で、微生物を寄託する際の寄託者の負担軽減に関して検討を開始したところである。

四の9について

 産総研によれば、産総研に設置された第三者委員会において「世界的水準から見た特許生物寄託機関・制度の妥当性」についても議論するとのことであるが、経済産業省としては、この議論の結論等も踏まえつつ、今後とも特許微生物寄託制度の円滑な運営に努めてまいりたい。

四の10について

 四の1についてで述べたとおり、国際寄託当局としての地位を取得するためには、ブダペスト条約第六条(2)に掲げられている要件を満たす必要があり、国際寄託当局となる主体には、それが国であるか否かにかかわらず、これらの要件を満たす者がなるべきものと考えている。

四の11について

 産総研及び評価機構それぞれの発明に関係する微生物の寄託については、今後、必要に応じて、適切に対処してまいりたい。

五の1について

 特許特別会計は、収支相償の原則の下、工業所有権行政全体として出願料等の総収入で総経費を支弁するよう料金水準を設定し、運営されてきているところであるが、これは、各事業ごとに実際の費用と手数料収入が一致するということを意味するものではなく、仮にある事業について手数料収入を上回る歳出が生じたとしても、特許特別会計全体として収支相償しているのであれば問題ないものと考える。

五の2について

 産総研への寄託業務関連研究費によって行われた研究に関しては、論文、学会発表、特許生物寄託センター技術報告集等により公表されているが、こうした研究は、特許生物寄託業務においても実用に供されていると承知している。

五の3について

 評価機構は研究機関ではなく生物遺伝資源の収集及び保存等を行う機関であることなどから、これまでのところ、評価機構に対しては寄託業務関連研究費は支出されていない。

五の4について

 これまで特許特別会計は、収支相償の原則の下、工業所有権行政全体として出願料等の総収入で総経費を支弁するよう料金水準を設定し、運営されてきているところであるが、特許特別会計の歳出には、工業所有権制度の維持及び発展に必要な機械化経費や中小企業の知的財産活動への支援経費等の共通経費も含まれており、知的財産権の種類ごとに勘定を設けることは困難であると考えている。

五の5について

 現在、特許特別会計から支弁している特許微生物寄託に係る経費は、平成十五年度までに既に特許特別会計に国際寄託手数料として受け入れられた維持経費分であり、平成十六年度以降の特許微生物寄託については、産総研及び評価機構において、微生物寄託者から手数料を徴収しつつ、事業運営を行っているところである。

六について

 我が国の特許微生物寄託制度は、昭和四十五年の制度開始以来、当該制度をめぐる状況の変化、利用者のニーズ等を踏まえつつ、寄託機関における寄託範囲の拡大等の見直しを行ってきたところであり、経済産業省としては、今後とも特許微生物寄託制度の円滑な実施に努めてまいりたい。