質問主意書

第168回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九五号

監査を前にした東京の歯科保険医の自殺に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年十二月十八日

小池 晃   


       参議院議長 江田 五月 殿



   監査を前にした東京の歯科保険医の自殺に関する質問主意書

 歯科医療機関の経営は患者減と診療報酬点数の抑制で悪化を続けている。特に開業歯科医師は、従業者数の削減など支出の削減を強いられているにもかかわらず、所得を減少させている。今後の歯科診療報酬の改定も、歯科医療機関の経営困難を更に促進する危険性が強い。多くの歯科医師が将来の歯科医院経営に展望を持てない状況に追い込まれている。
 それに加えて、保険診療にかかわる指導や監査が歯科医師に重大な困難をもたらしている。本年九月には、東京都港区で開業する歯科保険医の松下武史氏が予定されていた監査を前に自殺をされた。一九九三年に富山県で保険医が個別指導後に自殺し、大きな社会問題にもなった。それにもかかわらず再びこのような事件が起き、富山の事件が教訓として全くいかされていない。松下医師は、二〇〇六年四月二十一日に行われた第一回目の個別指導で、指導に当たった技官から「こんなことをして、おまえ全てを失うぞ!」、「今からでもおまえの診療所に行って調べてやってもいいぞ、受付や助手から直接聞いてもいいんだぞ!」などと恫喝されたことを述べ、「なぜあそこまで人権を無視したことを言われなければいけないのか」と精神的苦痛を受けたことを訴えていた。そして、第一回目の指導が中断された後、再開まで九箇月もかかった上、「中断」に対する説明、連絡なども行われず長期間放置状態に置かれていたという。もちろん、不正な請求は許されるものではないが、犯罪者扱いとするような行き過ぎた個別指導や行政手続法など法律から逸脱した個別指導に対する改善を求める声が、多くの医療関係者から寄せられている。
 そこで、以下の点について質問する。

一 本年十月二十五日の参議院厚生労働委員会における私の質問に対して、舛添要一厚生労働大臣は、「監督指導へ行くときに、・・・、暴言を吐いたとか脅すとか、そういうことがあっちゃいけないんで、これはやっぱり懇切丁寧にやる。」、「(第三者を入れるシステムが)機能していないということは大変ゆゆしいことでありますから、きちんと指導していきたいと思います。」と答弁をした。個別指導は「指導大綱」に沿い、懇切丁寧に行われる必要があるが、二〇〇六年四月二十一日に行われた歯科の個別指導の実施時間、担当技官等行政側の出席者氏名、歯科医師会等の立会人の氏名を実施された個別指導ごとに明らかにされたい。

二 二〇〇六年四月二十一日に松下医師が受けた個別指導がどのような内容であったか明らかにされたい。また、当日の担当技官の氏名を明らかにされたい。

三 松下医師が二〇〇六年四月二十一日に第一回目の個別指導を受け、本年一月十九日に再開されるまでの九箇月間、中断した理由を明らかにされたい。また、行政側としてはどのような作業をしていたのか。この期間、松下医師に対してはどのように対応したのか。それぞれ明らかにされたい。

四 本年九月二十日に予定されていた監査に出席できない旨の連絡が、松下医師の家族から社会保険事務局にはいつ行われたのか、どのように受理され、家族への連絡などどのような対応が行われたのかそれぞれ明らかにされたい。

五 東京都における歯科の個別指導の中断について、二〇〇六年度から二〇〇七年度までの個別指導実施の中断件数と中断期間を明らかにするとともに、中断の理由別の数、再開時期を被指導者に文書で連絡を行っている件数をそれぞれ明らかにされたい。

  右質問する。