質問主意書

第168回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六八号

北上川上流改修一関遊水地事業に関連した遊水地内営農被害の増大に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年十一月二十七日

平野 達男   


       参議院議長 江田 五月 殿



   北上川上流改修一関遊水地事業に関連した遊水地内営農被害の増大に関する質問主意書

 昭和四十七年に事業着手した北上川上流改修一関遊水地事業の周囲堤はほぼ概成し、平成十九年九月十七日の洪水においてもその効果が発揮されたところである。しかし、この周囲堤の概成に伴って、洪水時において、遊水地内にある第一遊水地、第二遊水地、第三遊水地内の農地等の冠水被害等が大きくなっている。現在、営農被害には農業共済が適用されているが、そもそも本件のように公共事業の実施に伴って被害が発生、拡大している場合には、別途の補償を行うべきであると考える。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 公共工事の実施によって、特定の地域、対象者等に被害の発生、拡大が予見される、あるいは現に起こっている、という事態に対し、政府はどのような方針で対応しているのか明らかにされたい。

二 一関遊水地事業計画では、周囲堤の建設によって、洪水の発生に伴い、第一遊水地、第二遊水地、第三遊水地内の営農にどのような影響が出てくると想定しているのか。また、その補償の考え方について、政府の見解をそれぞれ明らかにされたい。

三 前記二について、これまで遊水地内地権者に対して、どのような説明を行ってきたのか明らかにされたい。

四 周囲堤のない状況に比べ、洪水時における遊水地内の農地は、冠水面積・冠水深の拡大や洪水の滞留時間の長期化に伴い、冠水被害が増大するとともに、上流から流れ込んだ土砂の沈殿や流木等の堆積によって営農に大きな支障が生じることが想定されるが、その影響評価を行っているのか明らかにされたい。また、行っている場合にはその結果を、行っていない場合にはその理由を示されたい。

五 現在、こうした営農被害には、農業共済が適用されているが、その対応が適切かつ十分と政府は考えているのか明らかにされたい。また、農業災害補償法の第一条「農業者が不慮の事故に因つて受けることのある損失を補填し」という規定との関係はどのようになっているのか明らかにされたい。

六 平成十九年九月の洪水においては、冠水によって農作物の品質低下や収量の減収が起こっただけではなく、冠水によって沈殿した泥等によって、収穫時のコンバインに破損が生じ、農家に大きな負担増となっているが、これらと、周囲堤概成との因果関係について、政府はどのように考えるか明らかにされたい。

七 周囲堤の概成によって、洪水時における遊水地内の農業被害が増えるとすれば、国の責任においてその部分を補償すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

八 前記七について補償すべきことが明らかであるとすれば、周囲堤の着工時点で補償金を交付すべきであったと考えるが、政府の見解を示されたい。

九 本件事業において、地役権とは何か、具体的に示されたい。

十 地役権補償は、土地の利用上の規制による土地の財産的損失の補償という考え方に基づいて行われると聞いているが、その具体的算定の方法について示されたい。

十一 北上川河川堤防の設計洪水流量の超過確率を明らかにされたい。

十二 一関遊水地(周囲堤)の設計洪水流量の超過確率を明らかにされたい。

十三 周囲堤の完成時期を明らかにされたい。

十四 小堤の建設予定はどのようになっているか。その具体的スケジュールを明らかにされたい。

十五 小堤の役割は何か、明らかにされたい。また、小堤の建設によって何がどのように変わるのか、明らかにされたい。

十六 一関遊水地が洪水時に満水となった場合、遊水地地点と下流との間の水位差が増すことになると考えられる。これが、下流への流量に与える影響についてはどのような評価を行っているか、明らかにされたい。

十七 渡良瀬遊水地など他の遊水地内の現状の土地利用、所有権はどのようになっているのか明らかにされたい。また、遊水地に対する補償はどのような考え方で行ったのか。遊水地ごとに具体的に明らかにされたい。

  右質問する。