質問主意書

第168回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五五号

障がい者の所得の確保に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年十一月十二日

谷 博之   


       参議院議長 江田 五月 殿



   障がい者の所得の確保に関する質問主意書

 二〇〇六年四月に施行された「障害者自立支援法」(以下「自立支援法」という。)により、政府は障がい者に負担だけ押し付け、所得の確保に関する取組はほとんど進んでいない。
 そこで、以下質問する。

一 障がい者の所得の確保について、自立支援法に対する参議院厚生労働委員会の附帯決議では、「障害者の所得確保の在り方について速やかに検討し、三年以内に結論を得る」とあるが、これは決議日の二〇〇五年十月十三日から三年、つまり二〇〇八年十月という意味であり、自立支援法附則第三条第一項が示す施行後三年という時期とは明らかに異なる。ところが厚生労働省の「障害者の所得の確保に係る施策の検討チーム」はまだ二回しか会合を開いていない。政府はあと一年間で具体的な結論を得て、附帯決議の期限を守るつもりがあるかないか明らかにされたい。

二 障害年金について何点か質問する。

1 現在の障害基礎年金は、二級で年額七十九万二千百円と子の加算額、一級で九十九万百円と子の加算額であるが、現状では、これは非常に低い水準と認識する。諸外国と比較して、政府はこの水準をどのように認識しているか明らかにされたい。また、政府はこの水準を見直す考えはないか明らかにされたい。
2 障害厚生年金があるにもかかわらず、自営業者の年金の二階建て部分である国民年金基金に障害年金の制度がない理由を明らかにされたい。
3 厚生年金加入者は被用者であることから、厚生年金加入者が障害者となった場合、一般的に仕事を辞めねばならず、再就職先もすぐ見つけるのは困難という考え方に立って障害厚生年金の制度があると聞いている。しかし、今や国民年金加入者も、家族の補佐等により商売を続けられ、ある程度の収入を維持できるような自営業者だけではなく、フリーターや非正規雇用者が増えている。障がい者の所得確保を考える上で、所得比例部分である年金制度の二階建て部分に障害年金の制度がある必然性はないのではないか。むしろ障害基礎年金を充実する方が、多様なライフスタイルと転職が当たり前の時代には、公平なのではないか。政府の認識を明らかにされたい。

三 障がい者の特定求職者雇用開発助成金や法定雇用率、職業能力開発事業において、障害者手帳(以下「手帳」という。)がないと制度の適用を受けられないという声を以前から聞いている。つまり手帳のない発達障がい者、高次脳機能障がい者、難病者等にとっては使えない制度である。手帳の基準と就労上の制限にギャップがあるにもかかわらず、違う基準で対象者を排除するような運用はあってはならない。本年一月三十一日、私はこの問題を、参議院本会議で難病者の就労支援として取り上げ、安倍内閣総理大臣(当時)は「障害者の就労支援策においては、障害手帳の有無にかかわらず、それぞれの方の障害の状況に応じて様々な支援を実施し、また強化しているところであります。」との答弁をしている。

1 現時点で、全国十九校の障害者職業能力開発校のうち、手帳を持たない発達障がい者、高次脳機能障がい者、難病者等を受け入れた実績のある学校は何校あり、手帳の所持を応募資格から外した学校は何校あるかそれぞれ明らかにされたい。
2 障がい者の特定求職者雇用開発助成金や法定雇用率等の対象に、手帳を所持しない発達障がい者、高次脳機能障がい者、難病者等を加えるべきではないか。政府の見解を示されたい。
3 精神障がい者に対して医師の診断書を根拠に対象としているように、社会生活上の制限が同程度認められる場合は、手帳のない発達障がい者、高次脳機能障がい者、難病者等においても医師の診断書等により制度を利用できるようにするべきではないか。政府の見解を示されたい。

四 障がい者の能力開発の成果を、実際の就労につなげるためには、企業とのつながりを握っている職業安定局、ハローワークがもっと連携する必要があると考えるが、国の法定雇用率二・一パーセントに対し、厚生労働省全体で二・一六パーセント、職業安定局は一・二六パーセントにすぎない。意識改革のために全国すべてのハローワークで障がい者を雇用してはいかがか。政府の見解を示されたい。

五 就労継続支援事業所や授産施設は、自立支援法の枠組みであり、自立支援法が手帳所持者しか対象としていないため、工賃倍増計画の対象施設にも発達障がい者、高次脳機能障がい者、難病者等は入所することや通所することはできない。これについても対象者の見直しを行うべきではないか。政府の見解を示されたい。

六 本年十月三十一日に、二〇〇六年度の工賃月額の実績調査結果が発表された。それによると平均は月額一万二千二百二十二円となっているが、これは二〇〇二年度の民間団体の調査結果と比べて低くなっている。少なくとも自立支援法初年度の実績は、工賃は下がったと言えるのではないか。政府の見解を示されたい。

七 従来の福祉工場は、五年間のうちに就労継続支援A型事業所に移行することが求められているが、就労継続支援A型事業所に対する報酬単価は、福祉工場に対する単価より下げられている。まだ全国に百の福祉工場があるが、今後スムースにA型に移行するには、報酬単価の引上げが不可欠と考えるが、政府の見解を示されたい。

八 精神障がい者の授産施設はその多くが今後五年以内に就労継続支援事業B型に移行することになると思われるが、現行報酬体系では、精神障がい者特有の「出席率」の低さにより、運営収入の減少を避けられない。B型の単価を引き上げる考えはあるか。あるいは報酬を月払い方式(旧支援費方式)に変更する考えはあるか。それぞれ明らかにされたい。

九 精神障がい者に対する「一人ひとりへのきめ細かな個別支援」業務を、利用する精神障がい者の再発率予防の生命線と位置づけ、精神保健福祉士加算など専門業務に対する報酬を創設する考えはあるか。政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。