質問主意書

第168回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三三号

産総研特許生物寄託センターの不祥事対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年十月二十五日

谷 博之   


       参議院議長 江田 五月 殿



   産総研特許生物寄託センターの不祥事対応に関する質問主意書

 経済産業省が所管する独立行政法人産業技術総合研究所(以下「産総研」という。)の特許生物寄託センターは、二〇〇一年四月まで工業技術院生命工学工業技術研究所に所属していたが、一九八四年から危険な病原菌を内規に違反して受け入れ、二〇〇〇年にはその事実を把握していたにもかかわらず、関係者に口封じをして事実を隠蔽しつづけているとの驚くべき通報を、私は本年九月に受けた。
 さっそく事実関係を確認していた最中、大きな報道記事となり、あわてた産総研は初めて事実を公表し、病原菌に感染のおそれのあった関係者や地元自治体に周知してこなかったことについて非を認めた。人命がかかるかも知れぬ事態をこれだけ長きに渡って放置し、あまつさえ正義感から注意惹起と善後策を提起した責任者を実質的に更迭し、私の問題指摘にも事を内々に始末しようとし、報道記事が出るまで頬被りをするという、全くあきれた対応である。
 十月十七日には甘利経済産業大臣から、コンプライアンスの徹底のための体制整備等について指示が出され、十九日には第三者調査委員会を産総研内に設置するとの指示が立て続けに出されたところである。
 そこで、以下質問する。

一 産総研では今回の不祥事のお詫びをホームページに掲載し、「お客様の利便性を図る」と述べているが、一番寄託者が不満を持っているのは寄託手数料の高額さであると聞いている。今後産総研に対し、コンプライアンスの遵守以外に、顧客の利便性を図る上でどのような努力を求めていくのか明らかにされたい。

二 政府は今後も引き続き産総研を特許生物寄託制度の委託先として指定し続けるつもりか。厳しい財政難のなか我が国に複数の寄託機関を維持する必要性を明らかにされたい。

三 独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センターを特許生物寄託制度の第二の委託先として指定した狙いを明らかにされたい。

四 特許生物を受託する同じ機能を持つ独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許微生物寄託センターは、当初の設備投資を除けば現在では特許特別会計から一円も支出がなされていないにもかかわらず、国内寄託手数料も国際寄託手数料についても割安となっている。更に産総研にはない生物遺伝資源機関機能も有している。なぜこのような相違点があると政府は考えているか。

五 産総研による内規違反の危険病原菌受託問題を特許庁に対して告発した産総研の元職員は、その後産総研の複数の幹部から、国家公務員法の一〇〇条の守秘義務違反だと糾弾され、謝罪する誓約書を書くよう、二〇〇三年から今日にいたるまでメールや文書、電話、対面などあらゆる手段で、執拗に要求されてきた。元職員は不当だとして拒み続けてきたが、精神的肉体的に相当のダメージを受けている。私は、そのような不当な脅迫じみた要求を経産省や産総研の誰が行ってきたかなどの詳しい経緯や証拠文書の一部を入手している。これらの卑劣で非道な行為はまさに公益に反する行為であり、第三者調査委員会によって徹底的に調査され、元職員に対する謝罪と、名誉回復を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

六 元職員は現職の時からこの問題を内部で提起し、主務官庁にも情報提供したが、適切な対処がされないまま、実質的に更迭され定年を三年余して退職を余儀なくされている。その後に特許庁に対し情報提供した行為が国家公務員法の一〇〇条の守秘義務違反に当たると、産総研から糾弾されている。しかし過去の判例を見ても公益目的であり、目的達成のため必要かつ社会的に相当と認められる方法によれば、守秘義務が免除されるのであって、元職員のこの行為は国家公務員法一〇〇条違反には当たらないと私は考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

七 私はかねてより各種研究機関における危険な病原菌や遺伝子組換え生物のずさんな取扱いについて警鐘を鳴らしてきたつもりだが、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正施行後も、この分野の隠蔽体質は変わっていないと考えざるを得ない。そこで今回の問題発覚を受けて、厚生労働省は官民を問わず、病原菌や遺伝子組換え生物のずさんな管理や類似の隠蔽工作がないかどうか、改めて上部監督機関に注意喚起したり、立ち入り調査等を継続的、積極的に行うべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

八 ミートホープ社や株式会社赤福の事件など、内部告発が真相究明と公益の保護に役立っていることを踏まえるまでもなく、危険な病原菌や遺伝子組換え生物を取り扱っている官民の機関において、公益に資する内部告発をしっかりと受け止め、その者を確実に保護する仕組みが必要である。その意味で、厚労省や経産省が二〇〇六年四月に施行された公益通報者保護法に基づく外部窓口を未だに設置していないことは、大変遺憾である。まだ内閣府や金融庁などわずかな省庁しか設置しておらず、ほとんどの省庁が検討段階であることは行政の不作為ではないか。「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」及び「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」を所管する厚労省、経産省、農水省、文科省、環境省、財務省における外部窓口の今年度中の設置と職員への徹底周知が早急に必要と考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。