質問主意書

第168回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五号

改正薬事法に伴う配置販売員の資質向上と省令に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年九月十四日

又市 征治   


       参議院議長 江田 五月 殿



   改正薬事法に伴う配置販売員の資質向上と省令に関する質問主意書

 医薬品の流通・利用において、家庭用の置き薬・配置販売のシステムは歴史的に優れた重要な役割を果たしてきた。すなわち「先用後利」を合言葉に、過剰な医薬品使用を制し、自宅で安全な医薬品の使用・管理ができるシステムである。核家族化、高齢者と子育て世代との分断により、この良き伝統が失われたかに見え、さらに近年の誤った「規制緩和」政策、無責任な大量販売体制による医薬品乱売は、医薬品の誤用や、深刻な副作用を生んだ。これとは逆に、昨今、「セルフ・メディケーション(自己治療)」の理念が市民権を得て、配置薬システムも今再評価されている。この間、配置販売業者は府県と協力して従事者の定期的講習システムを確立し、被害防止・従事者の資質向上に先進的な取組をしてきた。
 他方、厚生労働省は医薬品の乱売・誤用・副作用の弊害にかんがみ、薬事法の一部を改正する法律(平成十八年法律第六十九号)(以下「改正薬事法」という。)において「登録販売者」とその資格試験の制度を導入した。改正薬事法施行に必要な省令は本年十月施行が予定されている。
 そこで、以下質問する。

一 改正薬事法では、配置販売業については、一般原則(改正薬事法第三十六条の五第二号)として薬局、店舗販売と並んで、薬剤師又は登録販売者による販売を行わせることを義務付けるとともに、他方で既存配置販売業者にかかる経過措置(改正薬事法附則第十二条)を規定し、その配置員について、「配置員の資質の向上に努めなければならない」と定めたところである。これについて「配置販売業については、既存の配置販売業者に対して、その配置員の資質の向上に向けた取組を行うよう指導するとともに、新制度への移行を促すこと。」と参議院厚生労働委員会で附帯決議が行われていることからも、配置販売業にあっては、その資質向上の延長線上に登録販売者試験受験資格があると考える。したがって省令では、配置員の資質の向上のための規定を定め、この点を具体化すべきと思われるが、どのように規定することを予定しているか、明らかにされたい。

二 多くの業界団体が「社会的説明責任」と「国民の安全・安心を求める観点から参入障壁にならない合理的な基準の設定」を求めている。ところが、現在検討されている省令案では、「配置販売業者については、専門家としての登録販売者の資格は、従事者全員に要求するのではなく、区域管理者のみの要件とし、区域管理者が監督する従事者は、無資格者で構わない」とし、「既存配置従事者は、従事していた期間が一年以上である旨を雇用者が証明すれば、受験資格を付与する」方向であると聞くが、事実なのか明らかにされたい。改正薬事法の条項どおり「医薬品販売については、配置販売業も全員登録販売者でなくてはならない」旨を遵守させるべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 受験資格の実務経験については、「登録販売者試験実施ガイドライン検討会報告書」及び平成十九年八月八日に厚生労働省医薬食品局総務課長通知「登録販売者試験の実施について」において、「専門家である薬剤師又は登録販売者の管理・指導の下で、医薬品の購入者に対して、薬剤師又は登録販売者が行う一般医薬品を販売又は授与する業務に関し、その補助として行うものに限られることに留意が必要である。」と限定した上で、資質向上について「医薬品の販売等の現場において、医薬品の取り扱いを知ることや、購入者等からの要望を聞きそれを専門家に伝えて応答の仕方を知ることなどを内容とする。」と示されている。医薬品の販売・利用にかかる有害事象への対処を考えるとき、実務経験とは、単に外形的な経験年数だけでなく、通知の字句どおり資質向上の内実を伴うものとして厳守されるべきではないか。現状でも「五年以上配置販売業の実務に従事した者であつて、都道府県知事が適当と認めたもの(薬事法施行令第五十二条第三号)」という規定をもって無資格者に等しい者が配置販売業者となっている事情は、いかがなものかと考えるので、政府の見解を示されたい。

四 医薬品の日進月歩及び反面における副作用の知見の拡大等の社会的要請を考えれば、配置販売業に限らず医薬品販売従事者全般に、継続的な資質向上が望ましいところである。したがって、平成十八年四月十八日の参議院厚生労働委員会における川崎厚生労働大臣の私に対する答弁にあるように、少なくとも配置販売業従事者について、登録販売者試験への合格のためにとどまることなく、継続的な資質向上のためのシステムを各界各層の協力の下で構築することが望まれる。この点を厚生労働省としてどのように考えているか、明らかにされたい。

五 例えば現在、幅広い医薬品販売・利用の関係団体などが、講習を行っている。改正薬事法の趣旨に従えば、これらの講習を、「資質向上」に資する内容である旨を厚生労働大臣が評価し認定して登録(指定)を行うことが最も相応しいと考えるが、政府の見解を示されたい。また、これに関連して厚生労働省は、現在各都道府県で行われている講習について、「受講者が講義の内容を十分に理解しているかどうか的確に把握できず、講習等を受ける者との取引関係その他の利害関係のある者が行うなど、講習の実施の基準、実施状況報告、記録等が曖昧である」との認識であるやに聞くが、既存配置販売業の「配置員の資質向上」に向けた講習の実情をどのように把握しているか明らかにされたい。これについて改善すべき点、厚生労働省として認定するための条件等があれば、示されたい。

六 省令においては、受験資格として「配置販売業における一般用医薬品の販売の実務に従事した」といった実務経験期間の規定にとどまらず、「厚生労働大臣の登録(指定)を受けた者が行う講習を修了し」といった内容的要件の規定を加えるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

七 既存配置販売業の経過措置に関する法の規定が期限を付していないことにかんがみ、資質向上の努力及び「新制度への移行」(すなわち配置員が登録販売者の試験を受験すること)についても、着実に実行することが、混乱が少なく、国民の理解も得られるので、期限は設けないことが当然であると考えるが、政府の見解を示されたい。

八 厚生労働省は省令の整備に当たり、またそれと平行して、改正薬事法に明記されている「資質向上努力義務」の重要性を再認識し、国民の理解を得られる対策を配置販売業者自らが開発し実行することにより、「新制度への移行」を円滑に行うべく、指導・援助するべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。