質問主意書

第167回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質一六七第三号
  平成十九年八月十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員近藤正道君提出新潟県中越沖地震と原子力発電所に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員近藤正道君提出新潟県中越沖地震と原子力発電所に関する質問に対する答弁書

一及び六について

 先の答弁書(平成十六年十一月二十六日内閣参質一六一第七号)一の1についてにおいては、当時の最新の知見に基づく判断を述べたものであり、当時の認識として「誤りがあった」とは考えておらず、また、「前回の答弁を撤回すべき」とは考えていない。
 なお、平成十九年新潟県中越沖地震(以下「今回の地震」という。)において、東京電力株式会社の柏崎刈羽原子力発電所の設計時の基準地震動を上回った要因については、柏崎刈羽原子力発電所周辺海域における地質調査結果等を踏まえ判断することとしており、また、平成十八年九月に改訂された後の「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(以下「新耐震指針」という。)においては、直下地震についての一律マグニチュード六・五という地震規模の想定は廃止され、個別の発電所ごとに基準地震動を策定することとされている。
 また、新耐震指針の見直しの要否に関しては、平成十九年七月三十日に原子力安全委員会において決定された「新潟県中越沖地震による影響に関する原子力安全委員会の見解と今後の対応」(以下「原子力安全委員会決定」という。)において、「バックチェックにより、新耐震指針に基づく地震動を想定し、それを今回の地震等の実際の影響により検証した上で判断すべきものであり、現時点では議論できる状況にはない。原子力安全委員会としては、こうした検証の結果等を踏まえ、専門家の意見を参考に見直しの要否について適切に判断したいと考えている。」としており、これを踏まえ、適切に対応してまいりたい。

二について

 御指摘の「大前提」が何を指すかが必ずしも明らかではないが、柏崎刈羽原子力発電所に係る原子炉の設置許可が核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第二十四条第一項各号に掲げる基準に照らし問題があるとは考えておらず、当該設置許可を取り消す必要があるとは考えていない。

三について

 今回の地震において、柏崎刈羽原子力発電所の設計時の基準地震動を上回った要因については、柏崎刈羽原子力発電所周辺海域における地質調査結果等を踏まえ判断することとしており、現時点でお答えすることは困難である。

四について

 原子力発電所の耐震設計に必要な活断層調査は、事業者が行うべきものと考えており、東京電力株式会社においては、新耐震指針に基づき調査を行うこととしていると承知している。

五について

 今回の地震を引き起こした震源断層については、東京電力株式会社等において調査が行われることとされており、その結果を踏まえ、御指摘の可能性も含めて、適切に評価してまいりたい。

七について

 今回の地震が発生した後に、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会に設置された「中越沖地震における原子力施設に関する調査・対策委員会」等において、柏崎刈羽原子力発電所の設備の健全性について評価を行うこととしており、適切に対応してまいりたい。

八について

 現在、東京電力株式会社において、新耐震指針に基づき、柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性の評価が実施されているところであり、今回の地震を引き起こした震源断層の活動についても、この評価の中に適切に反映されるものと考えている。

九について

 社団法人日本電気協会が作成した「原子力発電所耐震設計技術指針」においては、横波速度が毎秒七百メートル相当以上の値を有する硬質地盤を、基準地震動を設定する解放基盤表面の要件としているものであり、御指摘は当たらない。

十について

 今回の地震では、柏崎刈羽原子力発電所は設計どおりに停止するなど、安全上重要な機能は確保されており、また、安全上重要な施設に耐震安全上の問題は確認されていないが、地盤の不等沈下等により著しい影響を受けている周辺の設備・機器類や配管・ダクト類が相当数見受けられることから、東京電力株式会社においては、重要度分類SクラスのみならずB・Cクラスの建物・構築物についても、今回の地震による破損状況を調査した上で、その分類に応じ、新耐震指針へ適合するものとなるよう、地盤支持性能の確認やこれを踏まえた必要な補強等の措置を講ずることを、原子力安全委員会決定において要請したところである。

十一について

 御指摘の「炉内の様子を示す全データ」の範囲が必ずしも明らかでないが、平成十九年八月十日に、東京電力株式会社から「中越沖地震時におけるプラントパラメータについて」が公表されているものと承知している。

十二について

 今回の地震では、柏崎刈羽原子力発電所は設計どおりに停止するなど、安全上重要な機能は確保されており、また、安全上重要な施設に耐震安全上の問題は確認されていないことから、直ちに、「全国の原子力発電所を停止させて緊急の安全点検を行うとともに、全国の原子力発電所の耐震補強を実施する」ことが必要であるとは考えていない。

十三について

 原子力発電所の設置に当たっては、新耐震指針に基づき、耐震安全性が確保されることが必要であると考える。

十四について

 今回の地震の際、柏崎刈羽原子力発電所で発生した三号機の所内変圧器の火災において、事業者が行う初期消火活動に迅速さが欠けた面が見られたことから、原子炉施設の安全性に直接関係するものではないが、国民の安心を確保する観点から、電力会社等十一社に対し、初期対応要員の確保、化学消防車等の配備、消防機関との専用通信回線の開設・確保、消防機関と連携した訓練の実施等について指示し、改善計画の提出を受けたところである。
 今後、これらの改善計画が確実に実施されるよう、電力会社等を厳格に指導してまいりたい。