質問主意書

第167回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三号

新潟県中越沖地震と原子力発電所に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年八月九日

近藤 正道   


       参議院議長 江田 五月 殿



   新潟県中越沖地震と原子力発電所に関する質問主意書

 二〇〇四年一一月一八日、私は「新潟県中越地震と原子力発電所に関する質問主意書」(第一六一回国会質問第七号)(以下「前回質問主意書」という。)において、「耐震設計審査指針では直下地震の規模をマグニチュード六・五と想定しているが、これは過小評価につながらないか」と、政府に対し原子力発電所の耐震基準の見直しを強く求めた。
 これに対して政府は、「敷地の直下又は近傍に、マグニチュード六・五を超え、敷地に大きな影響を及ぼす可能性がある地震の震源となり得るような活断層がないことを確認している。マグニチュード六・五という直下地震の規模を見直すことが必要となるとは考えていない」旨の答弁をした。
 柏崎刈羽原子力発電所(以下「本原発」という。)の耐震設計の地震想定は、S1地震動(設計用最強地震動)で三〇〇ガル、S2地震動(設計用限界地震動)で四五〇ガルである。しかし去る七月一六日発生の新潟県中越沖地震(以下「今回の地震」という。)では、水平最大六八〇ガルが観測された。
 本原発は、三〇〇ガルで損傷がないこと、三〇〇以上四五〇ガル未満は塑性変形があっても破断やリーク(容器や配管から冷却材などが漏えいするような亀裂や裂け目などの貫通孔)がないことで設計、運転され、四五〇ガル以上はあり得ないとされている。言い換えれば三〇〇ガル未満は再使用可能であるが、三〇〇ガル以上は再使用せず廃棄することを前提に設置許可が与えられている。
 しかし今回の地震では、この政府が想定したS2地震動を大きく超えている。まさに私が指摘し続けてきたことが現実のものになったのであり、政府と東京電力の地震規模の想定の甘さと危機意識の欠如が露呈したと言える。
 そこで、以下質問する。

一 今回の地震を踏まえれば、「敷地の直下又は近傍に、マグニチュード六・五を超え、敷地に大きな影響を及ぼす可能性がある地震の震源となり得るような活断層がない」との前回質問主意書に対する答弁は、認識に誤りがあったのではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 大前提が大きく崩れた今、本原発の敷地地盤は、新しい耐震設計審査指針の「基本方針」に照らしたとき、原子力発電所の立地として著しく不適格であることが明らかであり、本原発の全号機の設置許可は取り消すべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 東京電力は海域を含む周辺地域の地震を引き起こす断層を過小に評価し、「想定」を上回る地震に見舞われたと述べている。しかし、なぜ「想定」できなかったのか。また、過小評価したのか。「想定外」だったこと自体が問題ではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 東京電力は、改めて海底断層の調査を自ら行うとしているが、従前の調査方法を抜本的に改めるべきではないか。又は東京電力に任せるのではなく、国が責任をもって直接調査をすべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 今回の地震を引き起こした海底断層が、本原発の直下付近まで延びている可能性を認めるか、明らかにされたい。

六 政府は、前回質問主意書に対する答弁で、「マグニチュード六・五という直下地震の規模を見直すことが必要となるとは考えていない」としているが、今回の地震を契機に、前回の答弁を撤回すべきではないか。また、昨年九月改訂の新耐震指針を含め、原子力発電所の「耐震基準」を全面的に見直すべきではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

七 設計上の想定を超えた地震、とりわけS2地震動を超えた地震に見舞われたということは、原子炉内外の重要機器がひずみ・塑性変形を受けた強い可能性があるということである。ひずみ・塑性変形は受けていないということを単なる計算による推論ではなく、完璧に証明できない限り、本原発は動かすべきではないのではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

八 かねてより、本原発の敷地内の西山層とともに安田層を切る断層であるα・β断層やF系V系断層等の存在と、その再活動が論争となっていた。今回の地震で、これら断層の一部が再活動したことが、原子力発電所敷地の大きな変状から示唆されている。敷地内の西山層とともに安田層や番神砂層を切る断層について、全調査が必要だと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

九 従前の基準では、「原子炉等の重要構造物は岩盤に支持されなければならない」とされ、岩盤とは、Ⅴs(横波速度)で毎秒七〇〇メートル以上との民間基準があった。本原発Ⅴsで毎秒七〇〇メートル以上は地下二〇〇メートルより深い。本原発は従前基準で岩盤支持の条件を逸脱した違法なものではないか。違法なものでないならば、その理由を明らかにされたい。

十 改定された指針では、「建物・構築物は十分な支持・性能を持った地盤に敷定されなければならない」と規定されている。建物・構築物が著しく不等沈下し、損傷を受けた本原発は指針に違反していることになると考えるが、政府の見解を示されたい。

十一 炉心が損傷を受けずに正常に停止したかどうかはデータが公表されていないので確認できない。スクラム(緊急停止)時の炉内の様子を示す全データを公表するべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

十二 全国の原子力発電所を停止させて緊急の安全点検を行うとともに、全国の原子力発電所の耐震補強を実施する必要があるのではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

十三 「大地震の震源域が予想される場所に原子力発電所を建設しない」という常識が確立・実現されるべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

十四 原子力発電所の自主防災・消火体制を強化すべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。