質問主意書

第166回国会(常会)

答弁書


答弁書第八○号

内閣参質一六六第八○号
  平成十九年七月十日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員福島みずほ君提出久間章生前防衛大臣の「原爆発言」と政府の核兵器に対する見解に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出久間章生前防衛大臣の「原爆発言」と政府の核兵器に対する見解に関する質問に対する答弁書

一の1から5までについて

 久間前防衛大臣の個人の考え方について、政府として答弁することは差し控えたいが、久間前防衛大臣自身は、米国としては、当時の状況の中で、広島及び長崎に対する原子爆弾の投下もやむを得ないと判断したのであろうと思うとの趣旨で発言したと述べていると承知している。いずれにせよ、政府としては、広島及び長崎に対する原子爆弾の投下は、極めて広い範囲にその害が及ぶ人道上極めて遺憾な事態を生じさせたものであると認識しており、人類に多大な惨禍をもたらし得る核兵器が将来二度と使用されるようなことがないよう、核兵器のない平和で安全な世界の実現を目指して、現実的かつ着実な核軍縮努力を積み重ねていくことが重要であると考える。

二の1及び2について

 久間前防衛大臣は、政府の認識や見解と同様、広島及び長崎に対する原子爆弾の投下は、国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないものと考えており、原子爆弾の投下を是認するとの趣旨で発言されたものではないと承知している。しかしながら、被爆者の方々を始めとする多くの方々に原子爆弾の投下を是認するとの趣旨で発言したとの誤解を与えたことについては、安倍内閣総理大臣から、かかる発言を厳に慎むよう注意したところである。

二の3について

 御指摘の件について内閣総理大臣がお会いするかどうかは、裁判の進行状況等を踏まえて判断されるものである。

三の1及び3について

 国際司法裁判所が千九百九十六年七月八日に発表した勧告的意見は、核兵器による威嚇又はその使用は、武力紛争時に適用される国際法の規則、特に人道法の原則と規則に一般的には反するが、国家の存続自体が問題となるような自衛の究極的状況における核兵器による威嚇又はその使用が合法か違法かについて最終的な結論を出すことはできない等と述べているところであり、政府としては、国際連合の主要な司法機関である国際司法裁判所が同意見の中で示した見解について、厳粛に受け止めるべきものと考えている。
 なお、政府としては、かねてから明らかにしてきたとおり、核兵器の使用は、その絶大な破壊力、殺傷力の故に、国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないと考えており、人類に多大な惨禍をもたらし得る核兵器が将来二度と使用されるようなことがあってはならず、核兵器のない平和で安全な世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮努力を積み重ねていくことが重要であると考えている。

三の2について

 お尋ねの広島、長崎両市長による国際司法裁判所における発言は、被爆地の市長として、被爆の実相等について証言したものであると承知している。

三の4について

 当時の交戦国たるアメリカ合衆国が、いかなる意図をもって我が国に原子爆弾を投下したかについては、政府としてお答えする立場にないが、広島及び長崎に対する原子爆弾の投下は、極めて広い範囲にその害が及ぶ人道上極めて遺憾な事態を生じさせたものであると認識している。政府としては、人類に多大な惨禍をもたらし得る核兵器が将来二度と使用されるようなことがないよう、核兵器のない平和で安全な世界の実現を目指して、現実的かつ着実な核軍縮努力を積み重ねていくことが重要であると考える。

三の5について

 久間前防衛大臣は、広島及び長崎に対する原子爆弾の投下を是認するとの趣旨で発言したものではなく、核兵器が将来二度と使用されることがあってはならないということを強く認識しているが、被爆者の方々を始めとする多くの方々に誤解を与える発言をしたことについて、深く反省し、辞任したところである。