質問主意書

第166回国会(常会)

答弁書


答弁書第六三号

内閣参質一六六第六三号
  平成十九年七月十日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員加藤修一君提出第三十三回主要国首脳会議(ハイリゲンダムサミット)と地球環境問題についての我が国の世界戦略の重要性等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員加藤修一君提出第三十三回主要国首脳会議(ハイリゲンダムサミット)と地球環境問題についての我が国の世界戦略の重要性等に関する質問に対する答弁書

一の1について

 太陽光やバイオマス等の再生可能エネルギーの利用は、エネルギー源の多様化や地球温暖化対策の観点から有効であり、その推進は、政府の資源エネルギー政策における重要な柱の一つである。
 しかし、再生可能エネルギーの多くは、現時点では、経済性や供給安定性の面における課題があることから、技術開発や財政支援措置等により、こうした課題を克服し、再生可能エネルギーが中長期的に更に重要なエネルギー源の一つとなるよう、努力してまいりたい。

一の2について

 バイオマスの利用及び活用は、地球温暖化の防止や循環型社会の形成という視点に加え、耕作放棄地の活用を通じて食料安全保障にも資するなど、農林水産業の新たな領域を開拓するものである。
 このため、「バイオマス・ニッポン総合戦略」(平成十八年三月三十一日閣議決定)に基づき、関係府省の連携の下で、バイオマスタウンの構築等バイオマスの利用及び活用の推進を図っているところであり、今後とも、関係府省の連携の強化を図りながら、バイオマスの利用及び活用の一層の推進に取り組んでまいりたい。

一の3について

 バイオマスを原料として国内において生産されるバイオエタノール等のいわゆる国産バイオ燃料については、本年二月に、関係府省の局長級から成るバイオマス・ニッポン総合戦略推進会議において、大幅な生産拡大に向けた工程表を取りまとめたところであり、その中で、食料供給と競合しない稲わら、間伐材等のセルロース系原料などを活用して、国産バイオ燃料の大幅な生産拡大を図ることとしている。

二について

 エネルギー憲章に関する条約(平成十四年条約第九号)においては、締約国はエネルギー・サイクルにおけるすべての活動から生ずる有害な環境上の影響を経済上効率的な方法で安全性に適切な考慮を払いつつ最小にするよう努力する旨が規定され、その手段の一つとして再生可能なエネルギー資源の開発及び利用の促進が掲げられており、また、エネルギー効率の向上が、エネルギーの有効利用に資するのみならず、地球温暖化や酸性雨等の環境問題への対策として重要であるとの認識が高まったことを背景に、千九百九十四年にエネルギー効率及び関係する環境上の側面に関するエネルギー憲章に関する議定書(平成十四年条約第十五号)が採択されたところである。我が国としては、これらの枠組みにおいて再生可能エネルギーの導入を促進していく所存である。

三について

 本年五月に公表された「気候変動に関する政府間パネル第四次評価報告書」においては、今後、地球温暖化が加速的に進行し、農業生産や生物多様性にも深刻な影響を及ぼすと予測されているところであり、農林水産省としては、本年六月二十一日に策定した「農林水産省地球温暖化対策総合戦略」に基づき、現在発生している農畜産物の被害状況等を踏まえ、当面の地球温暖化適応策の生産現場への普及及び指導、暑さに強い品種や気象被害に対応した栽培管理技術の開発を推進するなど、農林水産分野における地球温暖化対策を総合的に推進してまいりたい。

四の1について

 本年六月にドイツのハイリゲンダムで開催された主要国首脳会議(G8サミット)において、我が国は、安倍内閣総理大臣が本年五月二十四日に発表した地球温暖化対策に関する提案に基づき、世界全体の温室効果ガスの排出量を現状から二千五十年までに半減することを世界共通の目標とすること等について説明し、その結果、G8サミットの首脳宣言において、二千五十年までに地球規模での温室効果ガスの排出量を少なくとも半減させることを含む、欧州連合、カナダ及び日本による決定を真剣に検討することで意見が一致した。
 この意見の一致に至るまでの過程で、米国との間では、本年四月二十七日の日米首脳会談に際し、気候変動問題について対話を強化していくことについて合意したことを踏まえ、その後、本年五月十四日の日米首脳電話会談や、本年六月六日の日米首脳会談を含め、様々な機会を通じ我が国の考え方を説明し、連携及び協力について話し合ってきたところである。
 政府としては、G8サミットにおける成果を踏まえ、我が国の提案に対する理解及び協力を各国に働きかけ、国際的な議論を主導していく考えである。また、我が国としては、二千十三年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みは、米国、中国及びインドを含む主要な温室効果ガス排出国が参加する実効性のある枠組みとすることが何よりも重要であるとの認識であり、お尋ねの温室効果ガス排出削減目標の基準となる年を含む適切な目標の在り方等について、各国と協議していく考えである。

四の2について

 我が国としては、二千十三年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みについては、米国、中国及びインドを含む主要な温室効果ガス排出国が参加し、京都議定書を超え、世界全体における排出削減につながること、各国の事情に配慮した柔軟かつ多様性のある枠組みとすること及び省エネルギーなどの技術をいかし環境保全と経済発展とを両立させることを原則としつつ、どのような枠組みを作るかについての国際的な議論を主導していく考えである。

五について

 本年五月二十九日に行われた地球温暖化対策推進本部による京都議定書目標達成計画(平成十七年四月二十八日閣議決定。以下「目標達成計画」という。)の進捗状況の点検によれば、目標達成計画に示された対策・施策の中には、目標達成計画策定時から更に進展し、又は具体化されているものも見られ、我が国の地球温暖化対策は前進しているといえるものの、現状では、総合的に見れば、対策が十分に進捗しているとはいえず、対策の進捗は極めて厳しい状況にあること等を踏まえれば、抜本的な対応を早急に検討する必要があると考えている。
 したがって、例えば二酸化炭素排出量が大幅に増加している家庭部門や公的サービスを含む業務部門などの各部門等について、過去の進捗が目標達成計画策定時の見込みと比べ十分とはいえない対策の加速化を図り、また、更なる削減の可能性が見込める対策については、その一層の強化を図るために、削減効果の確実な措置について早急に検討を進め、実施する必要があると考えている。
 本年度に行う目標達成計画の定量的な評価・見直しにおいては、このような認識を踏まえ、必要な対策・施策の追加・強化を適切に行い、本年度中に目標達成計画を改定し、京都議定書上の削減目標の達成に確実を期してまいりたい。

六について

 環境負荷の低減に向けて、国民一人一人が環境負荷を実感することは重要であると認識しているところであり、そのための適切な手法等の情報収集及び検討に努めるとともに、機会をとらえてこれらを世界に向けて発信してまいりたい。

七の1及び2について

 御指摘のクリーンエネルギー自動車の普及台数は、その価格が高いなどの理由により、現時点において目標達成計画に掲げる目標台数と開きがあることから、更なる普及のため、製造事業者や消費者等に対する支援が必要であると考えている。
 このため、コストダウンや性能向上を図るための技術開発に対して引き続き支援措置を講じていくとともに、クリーンエネルギー自動車の購入等に係る現行の補助制度の延長及び税制措置の延長の可否等についても今後検討を行うこととしている。また、こうした取組に加え、これまで以上に積極的な普及啓発活動を行うことにより、普及台数目標の達成を目指してまいりたい。

八について

 京都議定書の目標達成のための京都メカニズムの活用については、地球規模での温暖化防止に資するという観点を踏まえ、追加的な温室効果ガスの排出削減や吸収に寄与するいわゆる「クリーン開発メカニズム(CDM)」及びいわゆる「共同実施(JI)」並びに排出枠の移転に伴う資金が環境対策目的に使用される排出量取引の仕組みであるいわゆる「グリーン投資スキーム(GIS)」の活用による排出枠の取得に最大限努力してまいりたい。
 温室効果ガスの排出削減に向けた国内の省エネルギー対策については、業務部門及び家庭部門における住宅及び建築物の省エネルギー性能の一層の向上、住宅及び建築物でのエネルギー管理の促進、省エネルギー機器の一層の普及促進等に向けた対策の加速化と一層の強化を図ってまいりたい。

九について

 本年六月に開催されたG8サミットにおいても再確認されたように、省エネルギーの推進やエネルギー効率の向上は、エネルギー安全保障の確保と温室効果ガス削減を同時に実現する最も費用対効果の高い施策であることから、我が国が世界に誇るエネルギー効率技術を外交上も活用し、特に中国、インド等のエネルギー需要の増加が著しい国のエネルギー効率改善を積極的に支援するなど、世界的なエネルギー需要の伸びを抑制すべく様々な取組を行っているところである。
 御指摘の「国際的な省エネ基準づくり」については、現在、国際エネルギー機関(IEA)が中心となり、産業部門別のエネルギー原単位の比較、建築物、電気機器等についての各国の基準の比較、最善の政策事例(ベスト・プラクティス)の提示等に向けた作業を行っているところであり、その結果が、来年我が国で開催が予定されているG8サミットで報告される予定であるが、我が国としては、同サミット議長国として、このようなIEAの作業を支援しつつ、気候変動・エネルギー効率が重要なテーマの一つとなる同サミットにおいて、主導的役割を果たしてまいりたい。

十の1について

 気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準の大気中の温室効果ガスの濃度や、許容されるべき気温上昇幅については、様々な議論があると承知しているが、我が国としては、本年五月二十四日に安倍内閣総理大臣が、世界全体の温室効果ガスの排出量を現状から二千五十年までに半減することを世界共通の目標とすることを提案したところであり、現状の世界における温室効果ガス排出量が自然界の吸収量の二倍を超えており、大気中の温室効果ガスの濃度が高まる一方であることを踏まえ、まずはこの目標が国際的に共有されるよう、今後とも様々な機会を通じて世界各国に呼びかけてまいりたい。

十の2について

 御指摘の「ETSの設立とその機能の強化」や「世界炭素市場の設立」については、我が国や諸外国の経験などを踏まえ、施策の効果や経済への影響など幅広い論点から総合的に検討してまいりたい。

十一の1について

 原子力発電所の解体費用については、解体時点で費用計上するのではなく、費用負担の平準化等の観点から、原子力発電施設解体引当金に関する省令(平成元年通商産業省令第三十号)において原子力発電施設解体引当金制度が設けられており、電気事業者は当該制度に従い、毎年積立てを行っているところである。
 御指摘の資産除去債務に関する会計基準については、現在、民間の会計基準設定主体である企業会計基準委員会において、特定の業種に限らず広く一般の企業を対象に、会計基準をめぐる国際的な動向や市場関係者の意見等を踏まえつつ、基準化に向けた検討を進めているところであると承知しており、政府としては、企業会計基準委員会における資産除去債務に関する会計基準についての検討結果を踏まえ、当該引当金の取扱いについて、適切に検討してまいりたい。

十一の2について

 会計基準については、企業における経済活動の国際化等を背景に、国際的ないわゆる「コンバージェンス」のための取組が進められており、我が国としても、引き続き、米国やEUとの間のいわゆる「コンバージェンス」を含め、会計基準の国際的ないわゆる「コンバージェンス」の推進を図っていく必要があると考えている。