質問主意書

第166回国会(常会)

答弁書


答弁書第四五号

内閣参質一六六第四五号
  平成十九年六月十二日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員荒井広幸君提出保険会社による保険金不払問題の実態解明と抜本的対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員荒井広幸君提出保険会社による保険金不払問題の実態解明と抜本的対策に関する質問に対する答弁書

一の1について

 金融庁が、保険会社の保険金及び給付金(以下「保険金等」という。)の支払状況の実態を把握するために、平成十七年二月以降、保険業法(平成七年法律第百五号)第百二十八条第一項等に基づき報告を求め、公表を行った事案の概要については、次のとおりである。
 (一) 生命保険会社
  (1) すべての生命保険会社に対し、平成十七年七月二十六日に、保険業法第百二十八条第一項等に基づき、同年九月三十日までに、平成十二年度から平成十六年度までの間の保険金等のすべての不払の事案について、保険約款、事業方法書等に照らして、保険金等の不適切な不払(保険契約者等から保険金等の請求を受けた保険会社が、不適切な判断により保険金等を支払っていなかったことをいう。以下同じ。)がなかったかどうかにつき検証結果を報告するよう求めた。この結果、明治安田生命保険相互会社の保険金等の不適切な不払千五十三件及び明治安田生命保険相互会社以外の生命保険会社三十一社の保険金等の不適切な不払四百三十五件が認められ、その旨を平成十七年十月二十八日に公表した。金融庁は、保険金等の不適切な不払等の問題が認められた明治安田生命保険相互会社に対し、平成十七年十月二十八日に、同法第百三十二条第一項及び第百三十三条の規定に基づき、業務改善命令及び業務停止命令を発出した。
  (2) すべての生命保険会社に対し、平成十九年二月一日に、保険業法第百二十八条第一項等に基づき、同年四月十三日までに、平成十三年度から平成十七年度までの間の保険金等の支払漏れ(保険事故が発生し、主たる保険金等の支払は行われているにもかかわらず、保険会社が、臨時費用保険金等の保険金等について、保険契約者等から請求がなかった等のため、支払っていなかったことをいう。以下同じ。)等がなかったかどうかにつき検証結果を報告するよう求めた。生命保険会社が四月十三日時点の進捗状況につき公表を行っており、それによれば、全生命保険会社三十八社のうち三十七社において保険金等の支払漏れ等約四十四万件、保険金等の支払漏れ等の金額約三百五十九億円があるとのことであるが、現在各社は引き続き調査を継続している。
 (二) 損害保険会社
  (1) すべての損害保険会社に対し、平成十七年九月三十日に、保険業法第百二十八条第一項等に基づき、同年十月十四日までに、平成十四年四月一日から平成十七年六月三十日までの間に保険金支払事由が発生した事案について、付随的な保険金の支払漏れ(保険事故が発生し、主たる保険金の支払は行われているにもかかわらず、臨時費用保険金等の付随的な保険金について、保険契約者等から請求がなかったため、本来支払われていなければならないものを支払っていなかったことをいう。以下同じ。)がなかったかどうかにつき調査結果を報告するよう求めた。この結果、自動車保険、火災保険、新種保険、傷害保険等に関し、東京海上日動火災保険株式会社、三井住友海上火災保険株式会社、株式会社損害保険ジャパン、日本興亜損害保険株式会社、あいおい損害保険株式会社、ニッセイ同和損害保険株式会社、富士火災海上保険株式会社、共栄火災海上保険株式会社、日新火災海上保険株式会社、朝日火災海上保険株式会社、セコム損害保険株式会社、明治安田損害保険株式会社、スミセイ損害保険株式会社、大同火災海上保険株式会社、ソニー損害保険株式会社、セゾン自動車火災保険株式会社、三井ダイレクト損害保険株式会社、そんぽ24損害保険株式会社、エース損害保険株式会社、アクサ損害保険株式会社、ジェイアイ傷害火災保険株式会社、アメリカン・ホーム・アシュアランス・カンパニー、エイアイユーインシュアランスカンパニー、チューリッヒ・インシュアランス・カンパニー、アシキュラチオニ・ゼネラリ・エス・ピー・エイ及びザ・ニュー・インディア・アシュアランス・カンパニー・リミテッドの付随的な保険金の支払漏れ約十八万件、付随的な保険金の支払漏れの金額約八十四億円が認められ、その旨を平成十七年十一月二十五日に公表した。金融庁は、付随的な保険金の支払漏れの問題が認められた二十六社に対し、同日、保険業法第百三十二条第一項等の規定に基づき、業務改善命令を発出した。
 この二十六社は更に調査を行っていたが完了しないため、この二十六社に対し、平成十八年十一月十七日に、保険業法第百二十八条第一項等に基づき、同年十二月八日までに、付随的な保険金の支払漏れに係る調査が最終的に完了する時期等について報告するよう求めた。その報告によれば、平成十九年六月までには最終的な調査が完了するとのことである。また、平成十八年十一月十七日に、それまでに判明した付随的な保険金の支払漏れの件数及び金額については、平成十七年十一月二十五日に公表したものを含め、約三十二万件及び約百八十八億円である旨を公表した。
  (2) すべての損害保険会社に対し、平成十八年七月十四日に、保険業法第百二十八条第一項等に基づき、同年十月三十一日までに、平成十三年七月一日から平成十八年六月三十日までの間の第三分野商品に係る疾病又は介護を支払事由とする保険金のすべての不払の事案について、保険金等の不適切な不払がなかったかどうかにつき検証結果を報告するよう求めた。この結果、全損害保険会社四十八社のうち二十一社において保険金等の不適切な不払五千七百六十件、保険金等の不適切な不払の金額約十六億円が認められ、その旨を平成十九年三月十四日に公表した。金融庁は、第三分野商品に係る保険金等の不適切な不払が認められた二十一社のうち東京海上日動火災保険株式会社、日本興亜損害保険株式会社、あいおい損害保険株式会社、ニッセイ同和損害保険株式会社、富士火災海上保険株式会社、共栄火災海上保険株式会社、日新火災海上保険株式会社、日立キャピタル損害保険株式会社、アメリカン・ホーム・アシュアランス・カンパニー及びエイアイユーインシュアランスカンパニーに、保険業法第百三十二条第一項等の規定に基づき業務改善命令を、東京海上日動火災保険株式会社、日本興亜損害保険株式会社、あいおい損害保険株式会社、富士火災海上保険株式会社、共栄火災海上保険株式会社及び日新火災海上保険株式会社に、同法第百三十二条第一項の規定に基づき業務停止命令を発出し、その旨を平成十九年三月十四日に公表した。

一の2及び3について

 金融庁が現時点において行っている保険会社に対する点検等の要請の概要は次のとおりである。金融庁は、火災保険を取扱う損害保険会社三十社に対し、平成十八年十二月二十日に、火災保険の募集態勢が整備されているかどうか等についての点検を要請し、平成十九年一月三十一日までに点検の対象範囲、方法、完了予定時期について報告するよう要請した。金融庁としては、各社がこの報告に基づいて募集態勢等について点検を行うとともに個々の契約内容を確認し、問題がある場合には適正化を図っていくことと承知しており、今後とも各損害保険会社において進行中の調査の進捗状況等を注視していくこととしている。
 また、一の1についてで述べたもののほか、平成十七年二月以降の保険業法第百三十二条及び第百三十三条に基づく行政処分に際して、金融庁が把握していた保険会社の付随的な保険金の支払漏れ及び保険金等の不適切な不払に関し、公表を行った事案の概要については、次のとおりである。
 (一) 生命保険会社
 明治安田生命保険相互会社の詐欺・錯誤を広く適用した保険金等の不適切な不払等につき平成十七年二月二十五日に公表した。
 (二) 損害保険会社
  (1) 株式会社損害保険ジャパンの付随的な保険金の支払漏れ二万八千六百七件、付随的な保険金の支払漏れの金額約十億五千五百十万円が認められ、その旨を平成十八年五月二十五日に公表した。
  (2) 三井住友海上火災保険株式会社の保険金等の不適切な不払九百二十七件、保険金等の不適切な不払の金額約一億六千六百万円及び付随的な保険金の支払漏れ四万四千四百六十九件、付随的な保険金の支払漏れの金額約二十六億六千五十万円が認められ、その旨を平成十八年六月二十一日に公表した。
 さらに、保険会社の保険金等の支払状況について、御指摘の「報告徴求等」により金融庁が把握した以外の内容としては、保険会社に対する立入検査等が該当すると考えられるが、公にすることにより、検査・監督業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあること等から、お答えすることは差し控えたい。

一の4について

 金融庁では、保険会社の業務の健全かつ適切な運営を確保し、保険契約者等の保護を図るため必要があると認められるときは、保険会社に対し報告を求めることとしており、一の1についてで述べた対応を行ったところであるが、現時点においては、直ちに追加的な対応を取る必要性は認識していない。

二の1について

 データが揃っていないこともあり、保険契約全体に対する御指摘の事案の発生状況を統計的に示せるか、その可否も含めて今後検討してまいりたい。

二の2について

 一の1について及び一の2についてで述べた行政処分については、いずれも、経営管理態勢、保険金等支払管理態勢等の不備を要因とするものであると認識している。

三の1について

 金融庁は、把握している保険会社の保険金等の支払に関する不適切な取扱いについて、次のように分類している。
 (一) 保険金等の不適切な不払
 (二) 保険金等の支払漏れ
 (三) がん保険等における保険金等の支払に関し、被保険者にがんの告知が行われていない等の理由から、保険会社が、保険金等の支払を留保したものについて、留保の理由が消滅した後も支払っていなかったもの。
 なお、一の2及び3についてで述べた三井住友海上火災保険株式会社に対する行政処分において、保険会社の不適切な説明により、顧客が付随的な保険金の受取を辞退し請求放棄となっている事案については、保険金等の支払漏れとして分類している。また、一の1についてで述べた損害保険会社における第三分野商品に係る保険金等の不適切な不払に係る行政処分において、顧客が保険金の請求を放棄する旨意思表示をしたとして不払としている事案のうち、その経緯等の検証ができないものについては、保険金等の不適切な不払として分類している。

三の2について

 金融庁は、保険会社の業務の健全かつ適切な運営を確保し、保険契約者等の保護を図るため必要があると認められたときは、保険会社に報告を求めるほか、保険契約者等から相談・苦情等を通じ事実関係の把握に努め、保険契約者等の事情等を確認している場合もあり、保険会社の監督に活用しているところであるが、保険契約者等の事情等は様々なものであることから、御指摘の類型化は困難である。

三の3について

 保険の引受等に当たっては、顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえた説明が重要であると考えているが、お尋ねのケースが保険業法施行規則(平成八年大蔵省令第五号)第五十三条の七に違反するかについては、個々の事案ごとに判断されるべきものと考える。

四の1について

 保険業法第一条の目的規定は、保険業を行う者の業務の健全かつ適切な運営及び保険募集の公正を確保することにより、保険契約者等の保護を図ること等を目的としているため、保険会社の健全性が保険契約者の保護より優先するとの御指摘は当たらないと考えている。また、御指摘の「国民が簡易に利用できる保険商品」については、各社の経営判断によって提供されているものと承知している。

四の2について

 金融庁は、平成十八年二月二十八日に「保険会社向けの総合的な監督指針」(以下「監督指針」という。)を改正し、保険業法施行規則第五十三条の七に規定する措置として、保険契約の重要な事項について理解しやすい説明等を行うため、契約概要等を記載した書面を保険契約者等に交付するための体制を整備していること等を、保険会社を監督するに当たっての留意点として明確化したところである。
 また、平成十九年二月二十二日に監督指針を改正し、同規則第五十三条の七に規定する措置として、顧客のニーズに関して情報を収集し、保険商品が顧客のニーズに合致することを確認する意向確認書面を作成するための体制を整備していること等を、保険会社を監督するに当たっての留意点として明確化したところである。
 さらに、金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)の施行に伴い、販売・勧誘ルールとしての適合性の原則等が一部の保険商品にも適用されることから、現時点において、新たな規制を導入する必要はないと考える。

四の3について

 金融教育の中で保険の役割を国民に適切に伝えることは重要であると考えており、金融庁としても保険の種類や役割等について記載したパンフレットを作成し、配布するなど、金融教育に取り組んでいる。
 また、保険広告については、保険業法施行規則において、保険契約等に関する事項であってその判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、誤解させるおそれのあることを告げ、又は表示する行為を禁止している。
 保険募集人の教育についても、監督指針において、多様化した保険商品に関する十分な知識の付与及び適切な募集活動のための十分な教育の実施を、保険会社を監督するに当たっての留意点として明確化しているところである。