質問主意書

第166回国会(常会)

答弁書


答弁書第三三号

内閣参質一六六第三三号
  平成十九年五月十八日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員福島みずほ君提出最低賃金及びパート労働者に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出最低賃金及びパート労働者に関する質問に対する答弁書

一について

 いわゆる「ワーキングプア」については、その概念に関して様々な議論があるところであり、政府又は政府関係機関が調査を実施したことはない。

二について

 我が国の最低賃金の水準については、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)に基づく地域別最低賃金の平成十八年度の全国加重平均額が六百七十三円である。一方、米国、フランス、英国の最低賃金の二千六年の水準については、経済協力開発機構が公表した二千六年の購買力平価により日本円に換算した最低賃金額としては、米国については、連邦法に基づく最低賃金額が六百三十九円、フランスについては、全国一律の最低賃金額が千百四十八円、英国については、全国一律の最低賃金額が千七十三円である。なお、ドイツについては、最低賃金が法定されていないところである。

三について

 お尋ねについては、全国の労働基準監督署が事業場に対し監督指導を行った際に認められた最低賃金法第五条の違反件数としては、平成十三年が二千八百五十一件、平成十四年が二千七百六十九件、平成十五年が二千二百六十六件、平成十六年が千九百四十七件、平成十七年が二千百五十五件である。

四について

 お尋ねの主体は、厚生労働大臣及び都道府県労働局長並びに中央最低賃金審議会及び地方最低賃金審議会(以下「最低賃金審議会」という。)であり、地域別最低賃金については、最低賃金審議会における生活保護に関する十分な資料を基にした生活保護に係る施策との整合性に配慮した審議を経て、厚生労働大臣又は都道府県労働局長により、決定されることとなるものである。

五について

 最低賃金については、最低賃金審議会において、今回の最低賃金法の改正の趣旨に沿った審議が行われるものと考えており、その結果に沿って、現下の雇用経済状況を踏まえた適切な引上げ等の措置を講じてまいりたい。

六について

 政府としては、今後、「成長力底上げ戦略推進円卓会議」において、中小企業における生産性の向上と最低賃金の引上げの基本方針について検討を進める際に目標設定等の是非を含め議論がなされるものと承知しており、その中で、当該基本方針の具体的内容について、政労使の合意形成が図られるものと考えている。

七について

 お尋ねについては、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「独占禁止法」という。)及び下請代金支払遅延等防止法(昭和三十一年法律第百二十号。以下「下請法」という。)が、公正かつ自由な競争を促進すること等を目的として、事業者の取引方法について規制しているところであるが、例えば、大企業が、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、中小・零細企業である取引の相手方に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える行為は、独占禁止法の規定に基づき指定された不公正な取引方法として禁止されており、こうした行為があるときは、公正取引委員会は、独占禁止法の規定に基づき、当該事業者に対し、当該行為を排除するために必要な措置を命ずることができることとされている。
 また、大企業である親事業者が、中小・零細企業である下請事業者に対し製造委託等をした場合に、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに下請代金の額を減ずる行為や、下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めるといった行為は、下請法の規定により禁止されており、公正取引委員会は、親事業者がこれらの行為をしたと認めるときは、下請法の規定に基づき、当該親事業者に対し、速やかにその減じた額を支払うべきこと等を勧告するものとすることとされている。

八の1について

 御指摘の答弁は、平成十三年に財団法人二十一世紀職業財団が実施した「多様な就業形態のあり方に関する調査」によるものであり、当該調査によれば、仕事、責任の重さ、残業・休日出勤並びに配転・転勤の有無及び頻度が正社員と同じパート労働者の割合は四から五パーセントであった。

八の2について

 御指摘の数値に係るパート労働者については、八の1についてで述べたとおり、配転・転勤の有無及び頻度が正社員と同じという回答が得られていることを踏まえると、その大多数は長期にわたって雇用される予定の者であり、期間の定めのない労働契約(反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視すべきことが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約を含む。)を締結している差別的取扱い禁止の対象者であると考えられることから、御指摘は当たらないものと考える。