質問主意書

第166回国会(常会)

答弁書


答弁書第七号

内閣参質一六六第七号
  平成十九年二月二十七日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員紙智子君外二名提出夕張市の「財政再建計画」等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君外二名提出夕張市の「財政再建計画」等に関する質問に対する答弁書

一の1の(一)について

 総務省としては、北海道企画振興部が平成十八年六月二十九日及び九月十一日に公表した「夕張市の財政運営に関する調査」に示されたとおり、同市が多額の赤字を抱えるに至った要因は、総括的には、同市財政の許容範囲を超えた財政支出、収入の大幅な減少への対応の遅れもあるが、不適正な財務処理手法により赤字の実態を表面化させずに拡大させたことにあると考えている。お尋ねの「債務」の意味が明らかではないが、一時借入金等で対応することとなる実質赤字の額、地方債現在高の額及び債務負担行為を設定しているもののうち負担する債務の額が確定しているもの(以下「債務負担行為」という。)の額の合計額を指すとすれば、同調査で明らかにされている主な会計における過去五年間の各年度末の実質赤字の額、長期借入金(地方債等)残高(以下「地方債等残高」という。)の額及び債務負担行為の額とその要因については、次のとおりである。
 一般会計について、本来同会計に計上されるべきと整理された実質赤字の額は、平成十三年度約十五億千万円、平成十四年度約二十一億円、平成十五年度約三十二億円、平成十六年度約三十八億千万円及び平成十七年度約四十億六千万円であり、その要因としては、閉山後の社会基盤整備の実施により公債費が多額となっていること及び人口に比して職員数が多いことにより人件費が多額となっていることから、財政が硬直化していることにあると考えている。地方債等残高の額は平成十七年度末において、約百九億六千万円である。債務負担行為の額は平成十七年度末において、約十五億八千万円である。
 観光事業会計について、本来同会計に計上されるべきと整理された実質赤字の額は、平成十三年度約七十九億六千万円、平成十四年度約八十四億五千万円、平成十五年度約百億八千万円、平成十六年度約百二十三億千万円及び平成十七年度約百四十四億七千万円であり、その要因としては、観光事業の不振と改革の遅れ、使用料等により賄うべき経常経費及び施設の元利償還金に対して収入が大幅に不足していること、管理委託する第三セクターに多額な赤字補てん的支出を行っていること、不適正な債務負担行為による支出が増大していることなどにより、大幅な収支不足が生じていることにあると考えている。地方債等残高の額は平成十七年度末において、約六億二千万円である。債務負担行為の額は平成十七年度末において、約四十六億四千万円である。
 住宅管理会計について、実質赤字の額は、平成十三年度から平成十七年度において計上されていない。地方債等残高の額は平成十七年度末において、約三十七億七千万円である。債務負担行為の額は平成十七年度末において、約十五億七千万円である。
 お尋ねのうち、同調査で明らかにされていない情報等についてはこれを把握しておらず、また新たに調査を行おうとする場合、関係する資料が存在するかどうかを含め調査の実施及び結果の取りまとめに要する作業が膨大なものとなるため、お答えすることは困難である。
 観光事業会計における施設ごとの赤字については、施設ごとの支出を正確に把握できる決算書等の資料が存在しないため、お答えすることは困難である。

一の1の(二)について

 総務省としては、一の1の(一)において御指摘の債務に関する情報公開については、住民自治の観点から、地方財政再建促進特別措置法(昭和三十年法律第百九十五号)による財政再建の申出を行い、財政再建計画を策定しようとしている夕張市当局において、できる限りの取組を行うべきと考えているが、債務に関する情報を新たに調査し、これを公開することは困難であると考えている。

一の2について

 夕張市が抱える多額の赤字を解消するためには、標準税率を超える税率への引上げ、使用料及び手数料の金額の引上げなどその他必要な歳入の確保を図り、また、人口や産業構造が類似する団体における効率的な行財政運営等を参考にして歳出の削減を図りながら財政再建計画を策定すべきものと考えており、その旨助言をしているところである。同計画については、財政の再建を行おうとする団体の赤字の額、行財政規模のみならず、個別の団体ごとに御指摘のような事項を考慮しながら定められるべきものと考えている。また、総務省として、同計画を「全国最高の負担と最低のサービス」という基調で作成するように助言したことはないが、同市の赤字が多額に上ることから、同市が作成した同計画が住民にとって一定の負担の増加を伴うものとなることはやむを得ないと考えている。

一の3について

 総務省としては、夕張市において第三セクターに関する損失補償契約の取扱いについて関係者と協議していると承知しており、平成十八年度末における解消すべき赤字額にリース契約に係る損失補償契約等に基づく金額を除いては損失補償金の額は含まれておらず、また、平成十九年度以降についての金融機関等に対する支払額について、現段階ではお答えすることはできない。

二の1の(一)について

 夕張市の財政再建計画の策定に向けた検討において、夕張市立総合病院については、規模を縮小し有床の診療所として存続する方針であり、同病院において実施していた人工透析については、採算の確保が難しく廃止する方針であるが、人工透析が必要な入院患者については既に転院を終え、通院患者については近隣の病院での受入れについて関係者が調整を行っていると承知しており、その調整状況等を踏まえ、国としても必要に応じて北海道に助言するなど適切に対応してまいりたい。

二の1の(二)について

 北海道において、夕張市周辺地域における救急医療体制の確保を図るための検討を行っていると承知しており、国としても必要に応じて助言するなど適切に対応してまいりたい。

二の2について

 お尋ねの点に関して、御指摘の素案の中では具体的な記述はないが、夕張市において、救急自動車の二台体制が確保できるよう消防職員として二名の採用等を検討しており、北海道においては、同市の要請を踏まえ、消防職員のあっせん等の支援策を行う意向であると承知している。

二の3の(一)について

 失業対策事業等失業者を吸収するために国が実施する特別の事業は、就労者の滞留等の問題が生ずるおそれがあることから、国の雇用対策として、これを実施することは適当でないと考えている。
 なお、雇用保険法施行規則(昭和五十年労働省令第三号)第百二条の三第一項第一号ハの規定に基づき、昨年十二月二十一日から本年十二月二十日までの一年間、夕張市等の夕張地域を雇用維持等地域に指定し、雇用調整助成金の支給に係る要件を緩和するなど、失業の予防、離職者の再就職の促進等に資する措置を講じているところである。

二の3の(二)について

 御指摘の事業はいずれも、地域から提案される雇用対策事業のうち、効果が高いと考えられるものを選定し、実施することを予定しているものであることから、夕張市を対象とした適用基準緩和等を行うつもりはない。なお、北海道又は同市から当該事業の活用について具体的な相談があれば、当該事業の趣旨に則して適切に対応することとしている。

二の4について

 夕張市において一定の行政サービスの維持、財政再建の早期かつ確実な推進が図られるようにするため、北海道が補完する事業の実施を検討しているところである。北海道が行うこれらの事業に対して、国としても必要に応じ、交付税措置など支援を検討してまいりたい。

三の1について

 昭和五十七年の北炭夕張新炭鉱の閉山に際しては、北炭夕張炭鉱株式会社(以下「北炭」という。)の職員への退職金等の支払のため、国及び新エネルギー総合開発機構(現在の独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が北炭に対し「石炭鉱山整理促進交付金」等(総額約三十六億七千万円)を交付したところである。一方、御指摘の各事業については、夕張市において同炭鉱の閉山対策のみではなく、一般的な地域振興策として実施されたものであり、同炭鉱の閉山に伴う事業として各事業の内容を区分しているものではない。お尋ねのすべての事項について調査を行うことは、膨大な作業を要することから、お答えすることは困難である。

三の2について

 平成十一年八月の産炭地域振興審議会の答申「産炭地域振興の円滑な完了に向けての進め方について」(以下「答申」という。)において、夕張市及び他の空知の自治体を含む旧産炭市町については、「炭鉱の閉山対策やその後処理等に必要な資金に充てるため、多額の地方債を発行等した結果、財政面において厳しい状況にある。」との認識が示され、この課題への対応として、国としては、答申を踏まえ、平成十七年度までを激変緩和措置の期間と設定して、所要の支援措置を講じた。

三の3及び4について

 産炭地域の振興については、答申において、石炭鉱業の構造調整という特殊な要因による影響の是正という産炭地域振興対策の目標をおおむね達成しつつあるものと認められたため、産炭地域振興臨時措置法(昭和三十六年法律第二百十九号)が時限を迎えるに際し、一般的な地域振興対策に移行させることとしたところである。また、政府として、産炭地域の現状把握及び情報提供を図るとともに、一般的な地域振興対策への移行を確実にする観点から、平成十八年十一月に、「産炭地域活性化基金」の取崩しを認める措置を講じたところである。