質問主意書

第166回国会(常会)

質問主意書


質問第七四号

ミートホープ社による食肉偽装問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年七月四日

紙 智子   


       参議院議長 扇 千景 殿



   ミートホープ社による食肉偽装問題に関する質問主意書

 ミートホープ社による食肉偽装事件は、国民にショックを与え、食の安全・安心に対する国民の信頼を大きく揺るがした。特に食品表示の信頼性を大きく損なった点で、問題は重大である。二〇〇一年の日本でのBSE発生をきっかけに、日本の農林水産行政は、その軸足を農業者・事業者中心の行政から消費者を重視した行政に移したはずであった。しかし今回、一年以上前に農政事務所に内部告発があったにもかかわらず、それを適切に調査せず、事態を放置してきたことは、依然として、農林水産行政が、旧態依然としたものであったことを端無くも明らかにしたといえる。この問題を徹底的に解明することは、消費者本位の農林水産行政を実現するためにも極めて重要である。また、保健所の対応も重大な問題を含んでいる。苫小牧保健所は、ミートホープ社に対する二〇〇二年からの度重なる告発を受けて、五回にわたる立入調査を行いながらも、ミートホープ社の実態を明らかにすることができなかった。これは保健所の立入調査の在り方を抜本的に改めるべきであることを明らかにしている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 二〇〇六年二月に苫小牧農政事務所に内部告発があった際、農林水産省はミートホープ社が東京支店を持っているとは認識せず、道内企業だとして、北海道庁に情報提供をしてすませた。しかし、その後二〇〇六年九月に同社のホームページに東京支店があることが掲載されたことを知り、告発内容が農林水産省の所管になることを認識したが、調査活動は、ミートホープ社の子会社にしか行われなかった。ミートホープ社本社の立入調査を行わなかった理由を明らかにされたい。

二 二〇〇六年二月の内部告発では、ミートホープ社の取引先の名刺も農林水産省に渡されており、取引先の特定はできたはずである。そして、取引先の製品のDNA鑑定を行えば、告発内容の裏付けができたはずである。告発を受けて、DNA鑑定を実施しなかった理由を明らかにされたい。

三 本来、このような事案は、内部告発がなくとも、系統的な食肉加工品のDNA鑑定調査を実施していれば、明らかになっていたはずである。食肉として牛肉のみが表示されているコロッケ、ハンバーグ、メンチカツ、ミートボール等の調査をこれまで実施してこなかった理由を明らかにされたい。

四 JAS法の表示の適正を確保するための機関として、独立行政法人農林水産消費安全技術センターがある。しかし、この機関は、独立行政法人化されたため、運営費交付金のうち、業務経費が毎年一パーセント削減され、一般管理費は三パーセント削減されている。このため、いくら国民の要望があったとしても、監視業務を抜本的に拡大することができない。日本から偽装表示を一掃するためにも農林水産消費安全技術センターを独立行政法人から外し、国の機関として、予算面でも抜本的に強化し、調査活動を飛躍的に高めるべきではないか。独立行政法人から外さないのであれば、その理由を明らかにされたい。

五 現在、牛ひき肉加工品の緊急調査及び類似事案の有無についての調査が行われているが、いずれも、結果公表は、七月三十一日以降というものである。これは、明らかに、参議院選挙に影響を与えないことを前提に考えられていると言わざるを得ない。本来、国民の最も関心が高いこのような事案についての調査は、中間報告を行うべきであるが、そうする考えはないか明らかにされたい。

六 ミートホープ社のような食肉製造卸売業者は、現在、JAS法の対象外であるが、ミートホープ社で現に悪質な偽装が行われており、かつそれが氷山の一角であったとすれば、JAS表示の根幹を揺るがすと言える。ただちに食肉製造卸売業者も対象にするようなJAS法改正を行うべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

七 ミートホープ社に対しては、苫小牧保健所に二〇〇二年三月に情報提供があり、さらに二〇〇六年八月にも情報提供があった。また、二〇〇六年十二月には二度にわたって、情報提供があった。そして、苫小牧保健所は、その情報提供を受けて、二〇〇二年三月、二〇〇六年十二月に二回と、三回にわたって、立入調査を行ったが、ミートホープ社の実態を掌握することができなかった。このことは、保健所の立入調査の在り方について抜本的な検討が求められていると言える。このような情報提供があった場合の調査は、抜き打ち調査をするべきと思うが、どのように考えているか、政府の見解を明らかにされたい。

八 二〇〇六年二月の苫小牧保健所のミートホープ社に対する定期立入調査の際に、ひき肉に心臓を混入していることを確認しているが、その事実について、農林水産省に連絡をしたのか。していなかったとすれば、その理由を明らかにされたい。

九 苫小牧保健所に対する二〇〇二年三月から二〇〇六年十二月までの四回にわたるミートホープ社に関する情報提供について、その内容等について農林水産省に連絡をしたのか。していなかったとすれば、その理由を明らかにされたい。

十 このような苫小牧保健所に対する情報提供が適切に農林水産省や北海道庁などへ伝わっていたならば、もう少し早く食肉偽装が解明されていたと言える。この点について、今後、他省庁との連携性が一層求められると思うが、その点改善する考えはないか明らかにされたい。

  右質問する。