質問主意書

第166回国会(常会)

質問主意書


質問第七三号

「国有財産の有効活用に関する報告書」にかかわるつくばの公務員宿舎の廃止・売却計画に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年七月四日

紙 智子   


       参議院議長 扇 千景 殿



   「国有財産の有効活用に関する報告書」にかかわるつくばの公務員宿舎の廃止・売却計画に関する質問主意書

 筑波研究学園都市は、研究施設の設置と「住宅施設を一体的に整備する」(筑波研究学園都市建設法)とともに、「均衡のとれた田園都市として整備」(同)することを趣旨として建設された。食料、エネルギー、環境など地球的規模の課題や国民的要求の実現への期待が広がるもとで、筑波研究学園都市は、基礎研究や基盤的研究を支える研究所群が集積するセンター的役割を果たしてきた。また、それらに関連する国際的責務と国際交流にも重要な役割を担ってきた。しかし、さきに発表された、つくばの公務員宿舎の廃止・売却計画は、かつてない大規模なもので、これまでの廃止とあわせ、研究学園都市の基本理念を根底から崩しかねないものとなっている。
 そこで、以下質問する。

一 今回有識者会議が行った報告の大規模な廃止・売却案は、つくばの現在の公務員宿舎四、七五八戸の約三五%に当たる一、六六二戸を廃止するものであり、これまでの廃止分一、二〇〇戸をあわせると、元々の総戸数の半分近くが廃止されることになる。さらに、今後の整備計画はなんら示されず、廃止計画のみが存在している。もし今回の計画が実行に移されるならば、研究学園都市の空洞化を招き、その役割の発揮に重大な支障が生じると考えるが、政府の見解を示されたい。

二 「国有財産の有効活用」を検討する際には、つくばの公務員宿舎の場合、最大限、研究学園都市で働く研究者のためにどのように役立てるかが基本になるべきである。ところが報告書にはその角度からの検討がされた痕跡はまったく見られない。それは、その検討を進める関東財務局の地方有識者会議のメンバーに研究所関係者が入っておらず、ヒアリングの対象にすらなっていないことからも裏付けられる。この間のポスドク研究者へのアンケートでも公務員宿舎の需要が広く存在していることが明らかになっており、現在の空き家数を前提にした廃止計画はこの事情を無視するものである。今回の検討に当たって、有識者会議の報告は、廃止計画の設定では「各地域の事情を勘案」したとしているが、どのようにつくばの事情が考慮されたのか、また、今後考慮しようとしているのか、政府の見解を明らかにされたい。

三 廃止計画の作成作業の上での大きな問題は、東京二三区以外の廃止基準として「法定容積率の利用率が五割未満」と一律的に定め、つくばの公務員宿舎がその基準の未達成の最たるものとして位置付けられていることである。緑豊かな田園都市、良好な研究生活環境の保障の観点から、職住近接の実現とともに、公務員団地が中央遊歩道や緑の計画的な配置など比較的余裕のある構造となっていることは研究学園都市建設の経緯からいって当然のことである。つくばの宿舎に機械的に容積率の基準を当てはめることは全く非現実的であり、研究学園都市という特性を無視するもので適用すべきではない。その基準は見直すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

四 この間の宿舎入居希望アンケートで、産業技術総合研究所では回答者の七割以上のポスドク研究者が入居を希望した。これは、不安定雇用の研究者にとっての宿舎問題の切実さを示しているが、いま急がれるのは、一刻も早くポスドクなど非常勤職員の公務員宿舎への入居を文字どおり実現することである。さらに、今回入居アンケートの対象となっていない膨大な人数の非常勤研究者の要求にも耳を傾けていくことが求められている。「科学技術基本計画」にもあるように、「国際的人材争奪競争も現実」となる中で、海外への優秀な人材の流出を招かないためにも解決は急がれている。国は、各省や各独立行政法人任せにせず、入居実現に向けてイニシアチブを発揮するとともに、老朽化対策や研究学園都市の総合的整備を前向きに進めるべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。