質問主意書

第166回国会(常会)

質問主意書


質問第六一号

遺産の分割相続における郵便局・金融機関への一部払戻請求に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年七月三日

近藤 正道   


       参議院議長 扇 千景 殿



   遺産の分割相続における郵便局・金融機関への一部払戻請求に関する質問主意書

 相続人が金融機関に、被相続人の預貯金の一部払戻しを請求した場合、郵便局・金融機関は、相続人間の紛争に巻き込まれるのを嫌って、相続人全員が署名・捺印した払戻請求書と全員の印鑑証明の提出を求めるのが通例となっていた。
 ところが、昭和五十三年二月二十七日の名古屋高裁判決では、「遺産分割協議前の預金債権は、相続が開始されると同時に法律上当然に相続分に応じて分割承継される」から「相続人間で争いがあり、払戻請求を共同相続人全員ですることが事実上困難である場合に、あくまでも共同相続人の署名押印を求めることは、相続により取得した債権の行使が不当に妨げられる」し、「銀行実務上事実たる慣習として行われていると見て妨げないが、被相続人(預貯金者)は、この慣習による意思を有していたとは認められない」として、各相続人は、これに拘束されることなく単独で、自己の取得した部分の払戻請求ができるとした。これは、相続人全員の署名・押印を求めることは、相続人に困難を強い、事実上相続した預貯金の払戻請求を制限する結果となる場合が少なくないことを考慮したものと思われる。
 しかし、この判決以後も、郵便局や金融機関は、従来のように相続人全員の払戻請求書を求めており、トラブルが後を絶たない。そこで、以下質問する。

一 郵便局や金融機関は、何故この名古屋高裁の判例に従わないのか。監督官庁である総務省及び金融庁は、郵便局や金融機関に対し、判例に沿った対応をするよう指導すべきではないか。政府の見解を示されたい。

二 このような郵便局・金融機関の対応のために、払戻しを受けられない預貯金の口座総数及び預貯金総額を明らかにされたい。

  右質問する。