質問主意書

第166回国会(常会)

質問主意書


質問第二四号

スマートインターチェンジの許可基準及び整備手順の明確化等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年四月十一日

荒井 広幸   


       参議院議長 扇 千景 殿



   スマートインターチェンジの許可基準及び整備手順の明確化等に関する質問主意書

 私は新党日本の議員であるが、参議院で一人であるので無所属扱いとなっている。このため、国政一般について幅広く質疑を行うことができる予算委員会、決算委員会には割当がないことから、質問主意書という手法で政府の姿勢を問うものである。
 スマートインターチェンジ(高速道路の本線やサービスエリア・パーキングエリア(以下「SA・PA」という。)、バスストップから乗り降りができるように設置され、通行可能な車両(料金の支払方法)を、ETCを搭載した車両に限定しているインターチェンジ、以下「スマートIC」という。)は、平成十六年度より社会実験が開始され、現在全国で十八箇所の本格導入が行われ、国土交通省は、今後も引き続きスマートICの整備を促進するとしている。スマートICの整備に当たり、平成十八年七月に国土交通省は「スマートインターチェンジ[SA・PA接続型]制度実施要綱」(以下「実施要綱」という。)を策定しているが、整備基準が十分に明確化されていない。
 実施要綱では、スマートICは、地方公共団体が主体となって発意するとされているにもかかわらず、整備基準が十分に明確化されていないことから、国土交通省への要望や陳情を行わざるを得ない状況となっている。私は、要望や陳情の実績によって公共事業の採択が左右されるとすると、実施要綱の制定の意義は失われ、行政上の不透明さを招くほか、政府がそれを既得権益とするようなこととなれば、公共事業の有用性を醜くゆがめ、公共事業執行に対する国民の疑念を払拭することはできないと考える。
 そこで、以下質問する。

一 スマートICの設置について、地方公共団体が行っている要望や陳情が必要であり、またその実績が実際に事業の採択を左右することがあるのか、政府の見解を示されたい。

二 スマートICの設置要件や設置までの進め方等については、誰でも分かるもの、誰が行っても結果が同じであることが重要である。しかし、実施要綱には大きな枠組みだけ書かれており、個別具体の事業に対処するにしては不十分である。こうした部分が緻密に制度化されていないと、最終的には、国に意見を一つ一つ求めていくこととなり、それが過度の行政裁量とそれに伴う数多くの要望・陳情活動を生み出す。当然に、より具体的なガイドラインの作成・公表が必要ではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 これまで実施したスマートICの社会実験において、それぞれの整備効果について公表はされているが、時間短縮効果、地域施設の利活用、医療施設へのアクセス改善等、それぞれ有効と思われた個別事例が羅列されているだけにすぎず、そもそも最低限満たすべき十分な社会的便益の水準が明らかではない。十分な社会的便益の水準について、統一した数値的判断基準を有しているのか、その有無とともに判断基準の内容も明らかにされたい。

四 スマートICについては、社会実験の後に、本格導入されることとなっているが、本格導入のための最低限の厳密な数値的判断基準を有しているのか、その有無とともに判断基準の内容も明らかにされたい。

五 スマートICについて、現在社会実験を行っているものは、本格導入までの進ちょく状況、手続の段階等を公表し、整備段階の透明性・客観性を確保すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

六 これまでの社会実験の成果をいかし、スマートICの整備基準を体系的にまとめ、実施要綱よりも更に精緻な数値的基準を公表し、これに基づきスマートICを整備していくべきである。特に、課題が存在する場合等は、論理の飛躍がないように全体の論理構成を強化しつつ、いかなる施策が必要なのかが分かりやすく、そして可能なものについては代替案を示すなどチェックの充実が必要である。併せて、個別事業ごとのチェックとともに、全体を通しての評価も参考とできるよう、チェックとその再利用という観点も含めて、事業推進上のコミュニケーションツールとして活用することも重要と思われる。さらに付言すれば、そうした普遍的な最低限の客観的な判断基準さえ整えることができれば、スマートICの社会実験結果についてのある程度の見通しが可能となると考えるが、政府の見解を示されたい。

七 実施要綱で定められているスマートICの実施要件に欠かせない地区協議会について、具体的な開催の手続、開催のために満たすべき最低限の条件について明らかにされたい。

八 実施要綱では、地区協議会で検討・調整する主な事項として、「①当該ICの社会便益、②当該IC及び周辺道路の安全性、③当該ICの採算性、④当該ICの整備方法、⑤当該ICの管理・運営方法、⑥その他当該ICの設置・管理・運営する上で必要な事項」が掲げられている。しかし、地方公共団体が発意する場合、これらの検討・調整する事項について、どの程度まで主体的に予め調査をしておけばよいのかが明らかでない。地区協議会を開催するに当たって、地方公共団体はこれらの検討・調整する事項についてどの程度まで最低限調査する必要があるのか明らかにされたい。

九 実施要綱では、国土交通省の地方整備局若しくは北海道開発局又は沖縄総合事務局は、地区協議会における検討・調整が進むよう議事の進行に努めなければならないと規定しているが、実際には具体的にどのようなことを行っているのか明らかにされたい。

十 実施要綱では、SA・PAに接続するスマートICの整備は、地区協議会において、国土交通省の地方整備局若しくは北海道開発局又は沖縄総合事務局、地方公共団体、各高速道路株式会社(以下「会社」という。)、その他の関係機関との間で検討・調整されることとなっており、それに基づいてスマートIC実施計画書が作成され、国土交通大臣の連結許可を受けなければならないとされている。スマートIC実施計画書の策定から、国土交通大臣の連結許可までどのような審査が存在しているのか、それぞれの審査に要する日数はどのように決められているのか明らかにされたい。

十一 そもそも、SA・PAは会社が保有し、自主的に経営されるものである。それゆえ、スマートICの設置は、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構と会社との間で締結される協定の中に含め、その変更を許可するだけで十分ではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

十二 スマートICが高速自動車国道法に定められた施設であるとしても、何故、個別のスマートICごとに国土交通大臣の連結許可を受ける必要があるのか、その個別具体的な整備について許可を与えるのは、SA・PAを保有・管理する会社の自主性を尊重する民営化の意図に反しないか、政府の見解を示されたい。

十三 スマートICのアクセス道路について、道路管理者が国であるもの、地方公共団体であるものの内訳をそれぞれ示されたい。

十四 道路管理者が地方公共団体である場合、国が関与する地区協議会で定められたスマートIC実施計画書が作成され、国土交通大臣の連結許可が存在するのであれば、道路整備の補助金は自動的に付与されるべきであり、改めてその審査は必要ないのではないか。もし改めて審査する場合、どのような必要性から審査するのか、政府の見解を示されたい。また審査内容と事業の優先順位、採択基準など具体的に公表すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

十五 今こそ政府は、企画立案過程における論理的分析手法の下に、要望や陳情を行う必要のない透明性の確保された制度を一つでも多く導入する必要があると思われる。即ち、第一に、目標と現状との因果関係を分かりやすく明示し、第二に、目標達成のための事業見通しを示すとともに、当該事業目標の実施のための具体的手法・手段を提示する等、真に必要な公共事業であるか否かを判断するものが求められている。こうした考えに基づいて真に必要な公共事業を推進するためには、スマートICに関する問題で指摘した考えに立って手続と採択基準の透明性・合理性を確保すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。