質問主意書

第166回国会(常会)

質問主意書


質問第一九号

「文化力親子タウンミーティング イン 京都」における不正抽選問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年三月二十三日

近藤 正道   


       参議院議長 扇 千景 殿



   「文化力親子タウンミーティング イン 京都」における不正抽選問題に関する質問主意書

 二〇〇五年十一月二十七日に開催された第百四十七回「文化力親子タウンミーティング イン 京都」(以下「本タウンミーティング」という。)において、一部の応募者を排除する目的で不正な抽選方法を用いたことが二〇〇六年十二月十三日の「タウンミーティング調査委員会調査報告書」(以下「本報告書」という。)で明らかにされた。この問題については、昨年十二月十四日の参議院教育基本法に関する特別委員会(以下「特別委員会」という。)でも取り上げたが、十分な説明もないまま審議が打ち切られ、政府・与党の教育基本法「改正」案の採決が強行されたことは、極めて遺憾である。その後、本年二月二十七日、内閣府は「追加調査報告」を発表し、本タウンミーティングに関する昨年の調査報告書の一部を訂正した。
 この問題につき、以下のとおり質問する。

一 京都市教育委員会(以下「市教委」という。)が二人の応募者の名前を内閣府に伝えたというが、内閣府から応募者リストを市教委に送付した経過を明らかにされたい。内閣府から応募者をチェックするよう市教委に要請したのか、あるいは市教委から応募者リスト送付の要請があったのか、明らかにされたい。

二 本報告書の五十一頁では、タウンミーティング室の担当者に対して、市教委の担当者から、「会場内でプラカードを掲げ、指名されなくても大声を発するなどしたことがある者及びその者と関係があると見られる者が応募している。」旨の連絡があったとされている。しかし、特別委員会において山本内閣府大臣官房長は、「会場内でプラカードを掲げ、指名されなくても大声を発するなどし、会場が騒然として混乱したため、警察まで動員して退場させた」という内容の連絡があったと説明しており、本報告書の内容とは異なった答弁をしている。本タウンミーティングの応募者の抽選に当たって、内閣府は市教委から二人の応募者に関してどのような内容の連絡を受けたのか、明らかにされたい。

三 私は、この排除された当事者から話を聞いたが、特別委員会における答弁のように「会場内でプラカードを掲げ」、「警察まで動員して退場させた」という事実は全くないとのことである。内閣府は、市教委からこれらの事実について具体的な説明を受けたのか明らかにするとともに、その際、市教委からの説明が事実か否かを確認しなかった理由を示されたい。

四 「その者と関係があるとみられる者」というだけの理由で、抽選から排除した理由を明らかにされたい。また、市教委からは、どのような関係があると説明されたのか明らかにされたい。

五 本報告書の資料集百三十五頁によれば、内閣府から市教委に対して「発言の依頼」をするよう要請を行い、市教委が五名に「発言の依頼」をし、そのうち四名が実際に発言したと記載されている。また、特別委員会において山本内閣府大臣官房長は、「この中には中学生や高校生もおりますし、保護者の方もおられる」と説明した。内閣府から、市教委にどのような要請をしたのか明らかにされたい。

六 本報告書の資料集百二十一頁では、「発言の依頼」はあったが、「発言内容の依頼は伴わない」とされている。しかし、そこでは、「発言者の発言内容が事前に把握されていた」ことを認めている。中学生や高校生に「発言依頼」をし、「発言内容を事前把握」していたというのは、市教委、若しくは学校の関係者が、子どもたちに発言の内容について何らかのアドバイス等をしたのではないか。また、「発言内容の依頼は伴わない」というのは、市教委からの報告にすぎないのではないかと考えるが、内閣府はそれが事実か否かを確認したのか明らかにされたい。

七 本タウンミーティングは、二〇〇五年度に開始された二十三回のタウンミーティングの中でも、三番目に高額な千四百十万円もの経費を要している。ほとんどのタウンミーティングは、ホテルや会館を使用したが、本タウンミーティングでは、市教委の施設を使って開催されたので会場費は無料であった。また、本タウンミーティングは、参加者がわずか百四十四名にすぎず、二〇〇五年度の二十三回のタウンミーティングの中では、下から二番目に小さい規模のものであった。七百二十五人もが参加した宇都宮のタウンミーティングの経費が千万円程度で済んでいるのと比較しても、あまりに高額すぎると考えるが、本タウンミーティングでこのような高額の経費を要した理由を明らかにされたい。

八 特別委員会において林副大臣は、「この抽せんで漏れた方がどういう方であったかということが分かる範囲で、ベストを尽くして、お分かりになった方に対してはきちっと責任者からおわびをさせたいと、こういうふうに思っておるところでございます。」と答弁した。内閣府として、被害を受けた人たちにどのように謝罪をしたのか明らかにされたい。

九 本年二月二十七日に公表された「追加調査報告」によれば、本タウンミーティングで抽選の対象となった応募者数は二百七十七名であったが、市教委の担当者から送り返されてきた応募者リストに、「当選」、「一応当選に」、「教委ダミー」との記載がされていたという。このうち、「当選」、「一応当選に」という記載がされていた七十八名には、応募受付番号の末尾の数字が落選予定数字に該当するか否かにかかわらず参加証を発送し、「教委ダミー」と記載がされていた四十六名については、参加証も落選通知も発送しなかったとのことであった。またその後、市教委からの要請に基づき参加者が数名追加され、当日に追加で参加を認められた一名を加えると、参加予定者リストに掲載された人数は二百九名であったという。

 1 「当選」と「一応当選に」の違いについて、市教委がどのように説明していたのかを含めて、明らかにするとともに、市教委が「当選」「一応当選に」と記載した七十八名に、無条件で参加証を発送した理由を明らかにされたい。また、この七十八名は、「イベントなどの関係者」とされているが、市教委が太鼓などのイベントで動員した子どもの数は約六十名と言われている。イベントの関係者以外の者も多いと思われるが、どのような人たちが「当選」「一応当選に」とされたのか明らかにされたい。
 2 「教委ダミー」の意味を明らかにされたい。二月二十八日付朝日新聞京都版によれば、この「教委ダミー」について、市教委は「応募者が少ない場合は空席を作らないため市教委関係者を当選させるよう内閣府に要請した」と説明している。しかし、この「教委ダミー」四十六名のうち三十二名は、応募要項に記載されていた十一月二十一日午後五時必着の締切日を過ぎた翌二十二日に、市教委から内閣府に名前を送ったものである。「応募者が少ない場合」に備えたとしては、申込日が遅く、市教委の説明は納得できない。また、タウンミーティングは親子がペアで申し込むものであったから、「教委ダミー」四十六名の約半数は子どもたちであった。子どもたちをこのような「ダミー」として使ったのは決して許せないが、「ダミー」として子どもたちの名前を使う際に、子どもたちの了解を取っていなかった可能性が強い。これらの点について、政府の見解を明らかにされたい。
 3 「追加調査報告」の五頁では、「その後、タウンミーティング室の担当者は、京都市教育委員会の担当者からの要請等に基づき、参加者を数名追加した」と記載されている。しかし、応募者リストに名前がなかったにもかかわらず、市教委の担当者からの要請で参加を認めた者は、実際には「数名」どころではなく、「追加調査報告」の記載は誤っている。市教委の担当者は、応募者リストに「当選」「教委ダミー」等の記載をして内閣府に送り返した際、「(応募者リストとは)別枠で確保いただきますようお願いいたします」として、四十一名を入れるよう要請した。また、既に参加証の発送を終えた十一月二十四日になって、事前に「発言依頼」をしていた者や、その「友人」更に「お茶関係者の友人」「太鼓奏者」ら十五人を別枠で入れるよう要請している。応募者リストに「当選」「一応当選に」と記載した七十八名以外に、応募者リストとは別枠で五十六名の参加を要請し、内閣府はこれを認めたのである。結局、市教委が抽選を経ずに参加させた者は、百三十四名にもなっていた。応募者リストに入っていなかったにもかかわらず、このように多数の追加の参加を認めた理由を明らかにされたい。また、このような、募集要項を大きく逸脱した、市教委による恣意的な参加者決定について、政府の見解を明らかにされたい。
 4 「当選」「一応当選に」「教委ダミー」の百二十四名は、個別にタウンミーティング参加係に応募してきたのか、あるいは市教委から一括して名簿が送られてきたものか明らかにされたい。
 5 当日の「タウンミーティング運営マニュアル」の「ホール内座席レイアウト図」によれば、総座席数は二百二十席であったが、「関係者席」が百三十七席も用意されており、「一般席」は八十三席しかなかった。さらに、この「一般席」の中にも、事前に「発言依頼」をした者や「友人」等の席が九席もあったので、結局、一般参加者の席はわずか七十四席であった。応募要項では、「募集人員二百名」とされていたはずだが、一般参加者の席が七十四席しかなかったことについて、政府の見解を示されたい。
 6 本報告書の資料集百三十三頁によると、当日の参加者は百四十四名であったという。前記のように一般参加者の席は七十四席しかなかったが、そのうちどれだけの空席があったのか、明らかにされたい。
 7 「追加調査報告」では、本タウンミーティングにおいて、「新聞広告作成」及び「原稿の製版」の費用が過払いであったとして、関係事業者から返納措置が講じられたとされている。本報告書の資料集百七十八頁では、本タウンミーティングでハイヤーや伴走車の使用において精算台数が実台数よりも水増し請求されていたことが明らかになっているが、このハイヤー代等の水増し請求については返納を求めていないのか明らかにされたい。また、このハイヤー代等の水増し請求以外には、不正な経費支出の事実はなかったのか明らかにされたい。
 8 「追加調査報告」四頁には、「京都市教育委員会の担当者からタウンミーティング室の担当者あてに同日午後六時四十八分頃に送付されたメール」と記載されている。しかし、市教委からメールが返信されたのはもっと遅い時刻ではなかったかと考えるが、事実関係を明らかにされたい。
 9 市教委は、二人の個人情報を無断で提供して、それが不正抽選という結果になったにもかかわらず、「市教委は事実を伝えただけ。抽選での排除は内閣府が行ったもので、市教委には責任はない。」と、政府に責任を転嫁し、被害者らに対しても一切謝罪しようとはしていない。個人情報を無断で提供した市教委の行為には問題はなかったのか政府の認識を示されたい。また、「追加調査報告」では、市教委自らが当選者の操作に加担し、更に「サクラ」工作を行っていた事実が明らかになったが、担当者は、「追加調査報告」の五頁によれば「それらの記載をした記憶がないと述べている」と開き直ったり、本年二月二十八日付朝日新聞によれば「メールは残っていない」など、事実の隠蔽工作を行っている。市教委のこうした行為に対する政府の認識を示されたい。
 10 市教委の教育長・門川大作氏は、教育再生会議委員に就任している。しかし、京都市民の間では、このような不正を行った門川教育長には規範意識が特に必要とされる「教育」を語る資格がないということで、教育再生会議委員を辞任せよという声も上がっているという。こうした声に対する政府の見解を示されたい。

  右質問する。