質問主意書

第165回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第四九号

内閣参質一六五第四九号
  平成十八年十二月二十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員前川清成君提出保険金の未払い問題と政府の対応に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員前川清成君提出保険金の未払い問題と政府の対応に関する質問に対する答弁書

一について

 金融庁は、把握している保険会社の保険金及び給付金(以下「保険金等」という。)の支払に関する不適切な取扱いについて、次のように分類している。
1 保険事故が発生し、主たる保険金の支払は行われているにもかかわらず、保険会社が、臨時費用保険金等の付随的な保険金(見舞金・香典・代車費用等)について、保険契約者等から請求がなかったため、支払っていなかったこと(以下「付随的な保険金の支払漏れ」という。)。
2 保険契約者等から保険金等の請求を受けた保険会社が、不適切な判断により保険金等を支払っていなかったこと(以下「保険金等の不適切な不払」という。)。
3 がん保険等における保険金等の支払に関し、被保険者にがんの告知が行われていない等の理由から、保険会社が、保険金等の支払を留保したものについて、留保の理由が消滅した後も支払っていなかったこと(以下「保険金等の不適切な未払」という。)。

二について

 金融庁は、事実関係の把握に努めた上で、行政処分をするに足りる事実関係が認められると判断した場合には、保険業法(平成七年法律第百五号)に照らし、行政処分を行い、原則として、その原因となる事実等を公表している。平成十三年度以降、金融庁が、保険会社の付随的な保険金の支払漏れ、保険金等の不適切な不払又は保険金等の不適切な未払に関し、公表を行った事案の概要については、次のとおりである。
1 生命保険会社
 (一) 明治安田生命保険相互会社の保険金等の不適切な不払(平成十七年二月二十五日公表)。
 (二) 明治安田生命保険相互会社の保険金等の不適切な不払千五十三件及び保険金等の不適切な未払千四百五十件(平成十七年十月二十八日公表)。
 (三) 明治安田生命保険相互会社以外の生命保険会社三十一社の保険金等の不適切な不払四百三十五件(平成十七年十月二十八日公表)。
2 損害保険会社
 (一) 自動車保険、火災保険、新種保険、傷害保険等に関し、東京海上日動火災保険株式会社、三井住友海上火災保険株式会社、株式会社損害保険ジャパン、日本興亜損害保険株式会社、あいおい損害保険株式会社、ニッセイ同和損害保険株式会社、富士火災海上保険株式会社、共栄火災海上保険株式会社、日新火災海上保険株式会社、朝日火災海上保険株式会社、セコム損害保険株式会社、明治安田損害保険株式会社、スミセイ損害保険株式会社、大同火災海上保険株式会社、ソニー損害保険株式会社、セゾン自動車火災保険株式会社、三井ダイレクト損害保険株式会社、そんぽ24損害保険株式会社、エース損害保険株式会社、アクサ損害保険株式会社、ジェイアイ傷害火災保険株式会社、アメリカン・ホーム・アシュアランス・カンパニー、エイアイユーインシュアランスカンパニー、チューリッヒ・インシュアランス・カンパニー、アシキュラチオニ・ゼネラリ・エス・ピー・エイ及びザ・ニュー・インディア・アシュアランス・カンパニー・リミテッドの付随的な保険金の支払漏れ約三十二万件、支払漏れの金額約百八十八億円(平成十七年十一月二十五日及び平成十八年十一月十七日公表)。
 (二) 株式会社損害保険ジャパンの付随的な保険金の支払漏れ二万八千六百七件、支払漏れの金額約十億五千五百十万円(平成十八年五月二十五日公表)。
 (三) 三井住友海上火災保険株式会社の保険金等の不適切な不払九百二十七件、不払の金額約一億六千六百万円及び付随的な保険金の支払漏れ四万四千四百六十九件、支払漏れの金額約二十六億六千五十万円(平成十八年六月二十一日公表)。

三について

 金融庁は、一般に、保険業法に基づく立入検査、報告徴求等により事実関係の把握に努めた上で、行政処分をするに足りる事実関係が認められると判断した場合には、保険業法に照らし、行政処分を行っており、生命保険会社に関しては、保険金等の不適切な不払等の問題が認められた明治安田生命保険相互会社に対し、平成十七年二月二十五日及び同年十月二十八日に、保険業法第百三十二条第一項及び第百三十三条の規定に基づき、業務改善命令及び業務停止命令を発出した。また、損害保険会社に関しては、付随的な保険金の支払漏れ等の問題が認められた二十六社に対し、平成十七年十一月二十五日に、保険業法第百三十二条第一項等の規定に基づき業務改善命令を、付随的な保険金の支払漏れ等の問題が認められた株式会社損害保険ジャパンに対し、平成十八年五月二十五日に、同項及び同法第百三十三条の規定に基づき業務改善命令及び業務停止命令を、付随的な保険金の支払漏れ等の問題が認められた三井住友海上火災保険株式会社に対し、同年六月二十一日に、同項及び同条の規定に基づき業務改善命令及び業務停止命令を、それぞれ発出した。
 また、金融庁は、生命保険会社における保険金等の不適切な不払、保険金等の不適切な未払及び損害保険会社における付随的な保険金の支払漏れの問題を踏まえ、平成十八年六月二日に「保険会社向けの総合的な監督指針」の改正を行い、「保険会社における保険金等支払管理態勢の改善・整備にあたっての着眼点の明確化」を図り、保険会社における迅速かつ適切な保険金等支払管理態勢の構築を求めたところである。

四について

 金融庁は、すべての生命保険会社に対し、平成十七年七月二十六日に、保険業法第百二十八条第一項等に基づき、平成十二年度から平成十六年度までの間の保険金等のすべての不払の事案について、保険約款及び事業方法書等に照らして、保険金等の不適切な不払がなかったかどうかの検証結果の報告を求めた。
 また、損害保険会社に対し、次のように報告を求めた。
1 すべての損害保険会社に対し、平成十七年九月三十日に、保険業法第百二十八条第一項等に基づき、平成十四年四月一日から平成十七年六月三十日までの間に保険金支払事由が発生した事案について、付随的な保険金の支払漏れがなかったかどうかの調査結果の報告を求めた。
2 すべての損害保険会社に対し、平成十八年七月十四日に、保険業法第百二十八条第一項等に基づき、平成十三年七月一日から平成十八年六月三十日までの間の第三分野商品に係る疾病又は介護を支払事由とする保険金のすべての不払の事案について、保険金等の不適切な不払がなかったかどうかの検証結果の報告を求めた。
3 付随的な保険金の支払漏れが判明した損害保険会社二十六社に対し、保険業法第百二十八条第一項等に基づき、平成十八年十一月十七日に、付随的な保険金の支払漏れに係る調査が最終的に完了する時期等についての報告を求めた。

五について

 適切な保険金等の支払は保険会社の基本的かつ最も重要な責務の一つであり、金融庁は各保険会社に対し、適切な保険金等支払管理態勢の構築を求めているところである。
 各保険会社においては、過去の保険金等の支払が適切であったかどうかについて、自主的に、又は金融庁からの命令に基づき調査を行っているものと承知しているが、調査の進捗等に応じて、付随的な保険金の支払漏れや、保険金等の不適切な不払、保険金等の不適切な未払が新たに認識されているものと承知している。
 一般論としては、付随的な保険金の支払漏れ、保険金等の不適切な不払及び保険金等の不適切な未払については、利用者保護の観点から重大な問題が発生していないか、故意性・悪意性が認められるか、組織的な関与がなされていないか等の諸要素について検討し、これらに関し問題が認められる場合には、監督上の措置を検討することとなる。