質問主意書

第165回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三八号

内閣参質一六五第三八号
  平成十八年十二月二十日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員山下八洲夫君提出外国人技能実習生に係る厚生年金保険制度に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山下八洲夫君提出外国人技能実習生に係る厚生年金保険制度に関する再質問に対する答弁書

一について

 先の答弁書(平成十八年十一月十日内閣参質一六五第一五号。以下「前回答弁書」という。)の二の1についてで述べたとおり、厚生年金保険制度は、事業主との間に一定の使用関係が認められれば、被用者の日本国籍の有無にかかわらず強制的に適用されるものであり、外国人技能実習生についても、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)に定める被保険者の要件に該当する場合には、厚生年金保険の被保険者となるものである。同法第九条はこの趣旨を規定しているものであり、当該規定に基づいて、事業主との間に一定の使用関係が認められた外国人技能実習生についても厚生年金保険の被保険者となるものである。

二について

 前回答弁書においては、我が国における滞在期間の短い外国人労働者に係る年金については外国人技能実習制度の導入前から議論があり、外国人技能実習制度の導入が脱退一時金制度創設の一つの契機となったものの、外国人技能実習生に係る年金に論点を絞っての議論は行っていないことを述べたものである。

三の1について

 お尋ねの「これまでの政府の見解」の内容が必ずしも明らかではなく、お答えすることは困難であるが、前回答弁書においては、厚生年金保険制度の基本的な考え方に関する政府の見解を述べたものである。

三の2について

 厚生年金保険制度は、老齢、障害又は死亡という保険事故を区別することなく保険料を徴収し、これらの保険事故に対応して個人の所得保障を目的とした給付を行う制度であり、老齢という保険事故のみを対象とした制度ではない。
 また、前回答弁書の五の1についてで述べたとおり、厚生年金保険制度は、社会連帯と相互扶助の理念に基づき、被保険者の要件に該当する限り個人の事情にかかわらず被保険者とするものであり、外国人技能実習生であることをもって厚生年金保険料を要求しないことは適当でないと考える。

四の1及び2について

 お尋ねの遺族厚生年金、障害厚生年金及び障害手当金の保険給付に関する事項の記録については、基礎年金番号ごとに管理しており、共通項目として氏名、生年月日、給付の種類等のほか、遺族厚生年金については死亡者との続柄、受給権者の人数、寡婦加算の有無等を、障害厚生年金については障害等級、初診年月日、障害認定年月日等を、障害手当金については被保険者種別等をそれぞれ管理しているが、外国人であるか日本国民であるか及び外国人技能実習生であるか否かを区別して管理はしていない。
 また、前回答弁書五の1について及び三の2についてで述べたとおり、厚生年金保険制度は、社会連帯と相互扶助の理念に基づき、老齢、障害又は死亡という保険事故に対応して個人に対する所得保障を行うために強制適用としているものであり、外国人技能実習生であるか否かは給付や負担に直接関係するものではないことから、御指摘のデータの作成及び検証を行うことは、厚生年金保険制度に関する政策の評価、議論を行う上で必ずしも必要なことと考えていない。

五の1について

 前回答弁書の五の3についてで述べたとおり、厚生年金保険制度における脱退一時金については、滞在期間の短い外国人労働者について保険料を負担したにもかかわらず老齢給付に結びつかないという問題について対応するための特例的な措置として、当該外国人労働者本人の立場に配慮して例外的に支給するものであり、これらの事情を踏まえ、政府部内における検討を経て、その支給額の算定に当たっては被用者の保険料負担相当分についてのみを勘案することとしたものである。

五の2について

 厚生年金保険制度全般の議論を行う審議会としては社会保障審議会年金部会があるが、平成十六年年金制度改正の際に同部会において中小企業の経営者を含む各界有識者を対象とした調査の結果を踏まえた審議を行うなど、これまでも国民各層の幅広い意見等を踏まえた制度改正を行ってきているところであり、今後における制度改正等の議論においても、国民各層の幅広い意見が反映されるように努めてまいりたい。