質問主意書

第165回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三一号

内閣参質一六五第三一号
  平成十八年十二月十九日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員櫻井充君提出歯科疾患総合指導料における文書による情報提供の「義務化」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出歯科疾患総合指導料における文書による情報提供の「義務化」に関する質問に対する答弁書

一について

 平成十八年度の歯科診療報酬改定(以下「十八年度改定」という。)においては、かかりつけ歯科医初診料を廃止し、その算定対象としていた歯科診療行為について、歯科初診料と歯科疾患総合指導料に区分して評価することとしたところであるが、歯科疾患総合指導料は、患者への情報提供を推進する観点から、病名、症状、治療内容及び治療期間等に関する一連の治療計画に基づき患者に対し総合的な指導を行った上で、当該指導内容に係る情報を文書により患者に提供することについて、歯科診療報酬上の評価を行うものである。歯科疾患総合指導料の算定については、患者自身による療養管理が不可欠であるという歯科疾患の特性を踏まえると、患者に対する情報提供は、患者自身が療養管理を行うために分かりやすいことが重要であることから、歯科医師の口頭による説明のみでは不十分であると考え、患者に対する指導内容に係る情報の文書による提供(以下「文書提供」という。)をその要件としたものである。なお従前のかかりつけ歯科医初診料においても、既に文書提供はその算定要件となっていたところであり、また、日本歯科医学会が平成十七年二月に行った「歯科診療における患者満足度調査」(以下「患者満足度調査」という。)においては、指導内容の情報提供が「非常に分かりやすかった」と答えた患者の割合が、指導内容が書かれた用紙を受領した場合においては四十四・五パーセントである一方で当該用紙を受領しなかった場合においては二十六・四パーセントであった。

二について

 歯科疾患総合指導料の算定要件とされている文書提供は、患者自身による効果的な療養管理及び歯科診療の内容に対する患者の理解の促進、歯科診療に係る患者の選択等に資するという長所があると考えている。

三について

 十八年度改定の議論においては、文書提供を伴う歯科診療行為のプロセス全体に要する時間について、日本歯科医学会が平成十六年十一月に行った「歯科診療行為(外来)のタイムスタディー調査」の結果を基に、患者一人当たりおおむね四分から十分程度と想定していたところである。
 また、一についてで述べたとおり、従来のかかりつけ歯科医初診料においても、既に文書提供をその算定要件としており、文書提供を伴う歯科診療行為のプロセス全体に要する時間には変化がないと考えられたため、平成十八年度改定の議論においては、お尋ねの患者数の変化について想定しなかったところである。

四について

 歯科医師が文書提供を必要であると判断した場合であって患者が文書に署名することを拒否した場合については、歯科疾患総合指導料の算定要件である患者の同意を得ていないと考えられるため、歯科疾患総合指導料は算定できない。また、歯科医師が文書提供は必要ないと判断した場合であって患者が文書提供を要求した場合についても、そもそも歯科医師が文書提供は必要ないと判断した時点で、当該患者に対する文書提供に係る保険診療は不必要であると判断したと考えられるため、歯科疾患総合指導料は算定できない。一方、歯科疾患総合指導料以外の歯科診療報酬については、それぞれの算定要件を満たしていれば算定できる。

五及び七について

 歯科診療報酬改定については、個々の改定項目が個々の歯科医師の診療行為に対して与える影響は様々であることから、これらの影響により全体としての歯科医師の収入がどのように変化するかを推計することは困難であり、お尋ねの点についてお答えすることはできない。

六について

 十八年度改定の議論においては、お尋ねの歯科医師の割合ではなく、調査対象の約九割の医療機関が文書提供を行っていたという患者満足度調査の結果を基に、約九割の医療機関が文書提供を行うと想定していたところである。