質問主意書

第165回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一三号

内閣参質一六五第一三号
  平成十八年十一月七日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員紙智子君提出矢臼別演習場内風蓮川水系のイトウ保全対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出矢臼別演習場内風蓮川水系のイトウ保全対策に関する質問に対する答弁書

一の1から3までについて

 札幌防衛施設局においては、別海矢臼別大演習場(以下「本演習場」という。)における自衛隊及び我が国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の訓練の実施によって本演習場内の土地の形質が変化する等により、降雨又は融雪に伴い風蓮川支流に土砂が流出しやすくなることから、当該土砂の流出により生ずる障害を防止し、又は軽減するため、北海道別海町からの要望を踏まえ、風蓮川支流でダムの建設の事業(以下「本件事業」という。)を実施しているところであり、現時点で本件事業を中止する考えはない。
 本件事業の工事計画の策定に当たっては、本件事業が環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)及び北海道環境影響評価条例(平成十年北海道条例第四十二号)に定める環境影響評価の対象事業に該当しないため、これらに基づく環境影響評価を行っていない。しかしながら、別海町の意見を踏まえ、平成十年度に、本件事業における魚道設置に関する判断の資料を得るため、魚介類の調査を行い、平成十年度以降に設計を行ったダムについては、当該調査の結果を反映させているところである。
 札幌防衛施設局としては、先般、本演習場内の風蓮川水系においてイトウを発見したとの報道があったことは承知しており、イトウが遡上する時期等に、有識者等の意見を踏まえ、イトウを発見したとされる場所の調査を行い、確認をしたいと考えている。
 いずれにせよ、風蓮川水系における魚介類の保護については、札幌防衛施設局としては、矢臼別演習場・別寒辺牛川水系土砂流出対策等検討委員会での検討結果をも踏まえ、適切に対応してまいりたいと考えている。

二の1について

 平成十八年度予算においては、別寒辺牛川水系土砂流出対策として、約千六百万円を計上し、トライベツ川支流における土砂の発生源対策の事業計画を策定するための沈砂池等の実施設計を行っている。
 また、札幌防衛施設局においては、平成十八年度から、別寒辺牛川、トライベツ川、フッポウシ川及び西フッポウシ川の四河川を対象に、土砂流出による流域への影響について、モニタリング調査を実施している。

二の2について

 札幌防衛施設局としては、風蓮川水系における土砂流出対策については、矢臼別演習場・別寒辺牛川水系土砂流出対策等検討委員会での検討結果をも踏まえつつ、別海町と調整の上、適切に行ってまいりたいと考えている。

三の1について

 本件事業の実施に当たっては、事前に本演習場内の風蓮川支流の各流域における土砂の流出状況の調査を実施しており、本演習場から流出する土砂の主要な発生源は、重車両の走行訓練及び実弾射撃訓練によってできた荒廃地であり、計画降雨時の表面浸食により発生した土砂約三十二万立方メートルが、洪水時の流水によって流送され、河川に流出するとの調査結果が得られた。

三の2について

 本件事業については、本演習場から風蓮川支流に流出する土砂により生ずる障害を防止し、又は軽減することを目的として実施しているところ、流出する土砂の発生場所である弾着区域等にダムを建設することは困難であることから、本演習場内の風蓮川支流の下流部にダムを設置している。

三の3について

 札幌防衛施設局において、平成十六年度に実施した堆砂量の調査の対象は、比較的年数を経過したダムの堆砂状況を把握するため、設置後十年以上経過しているダムの中から選定した。

三の4について

 堆砂量は、風蓮川残流域第三号ダムが約七百立方メートル、風蓮川残流域第六号ダムが約五百立方メートル、白鳥川第四号ダムが約一万三千立方メートルであり、札幌防衛施設局としては、これらは、本演習場からの土砂の流出の防止に寄与しているものと考えている。

三の5について

 札幌防衛施設局としては、他のダムの堆砂状況に関する調査については、ダムの設置からの経過年数等を踏まえ、適切に判断してまいりたいと考えている。

四の1及び2について

 現時点において、新たなダムを直ちに建設する具体的な計画は有していない。
 札幌防衛施設局としては、本件事業については、土砂の流出の状況、魚介類の生息状況等を踏まえ、適切に実施してまいりたいと考えている。
 なお、本件事業は、風蓮川支流に流出する土砂により生ずる障害を防止し、又は軽減することを目的とし、また、風蓮湖の漁業資源の確保にも資するものとして、別海町からの要望をも踏まえ実施しているものであり、札幌防衛施設局としては、既に完成しているダムの堤体を撤去する考えはない。

五について

 札幌防衛施設局としては、風蓮川水系における土砂流出等については、矢臼別演習場・別寒辺牛川水系土砂流出対策等検討委員会での検討結果をも踏まえ、適切に対応してまいりたいと考えており、現時点において、御指摘のような第三者機関を設置することは考えていない。