質問主意書

第165回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第八号

内閣参質一六五第八号
  平成十八年十月二十日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員白眞勲君提出政府開発援助の適切な使用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員白眞勲君提出政府開発援助の適切な使用に関する質問に対する答弁書

一の1について

 平成十六年十二月二十六日に発生したスマトラ沖大地震及びインド洋津波被害対処努力に寄与するためにインドネシア共和国、スリランカ民主社会主義共和国及びモルディブ共和国に対して行った二百四十六億円のノン・プロジェクト無償資金協力(以下「本無償資金協力」という。)に関し、本年十月十三日時点において、被災各国政府の調達代理機関である財団法人日本国際協力システム(以下「JICS」という。)と業者との契約締結額は百九十五億七千二百七十八万九千六百四十一円、資金供与額に対する支払率は約四十八パーセント、調達口座の残高は百二十七億九千四百八十九万六千二百十四円である。

一の2について

 JICSは、インドネシア共和国政府が実施する復興事業に必要となる資金を確実に管理することが求められていることから、供与された資金を銀行の決済用口座(全額保護される無利息預金口座)に保管しているものと承知しており、政府として問題があるとは考えていない。

一の3について

 インドネシア共和国政府との調達代理契約に基づくJICSの調達代理手数料は、インドネシア共和国に対する本無償資金協力に係る業者との契約金額に二パーセントを乗じて得た金額に、管理費二千万円及び事務所維持費五百万円を合計した金額であると承知している。なお、この場合の業者との契約金額は、御指摘の業者に対する支払額とは異なるものである。

一の4について

 我が国は、インドネシア共和国に対する本無償資金協力に先立ち緊急無償資金協力を実施したほか、緊急開発調査を行うなど、それぞれのスキームの目的や特性に応じた支援を行っている。緊急無償資金協力は、主に大規模な自然災害等による被災者が発生した場合に、これらの人々を救済するために災害直後の緊急対応のために行う資金協力であり、緊急開発調査は、大規模な自然災害等により被害を受けた国に対する復興支援のため、緊急復興計画の策定を主たる目的として実施するものである。これらの支援に加えて実施したノン・プロジェクト無償資金協力は、あらかじめ資金の具体的な使途を確定させることなく被援助国に資金を速やかに供与した上で、被援助国政府と協議の上、柔軟かつ適切な案件の選定と形成を行うことを可能とするスキームである。被災各国において膨大な支援の需要が生じている中、現地で必要とされている物資や施設の改修等のための役務の調達を現地の状況の変化を踏まえつつ行う必要があった今次支援においては、このようなノン・プロジェクト無償資金協力が最も適当なスキームであると考える。

二の1及び2について

 御指摘の放送局用家具の調達に際する業者の選定については、中立・公正な調達代理機関であるJICSが独自の市場調査に基づき対象となる業者のリストの原案を作成した上で、インドネシア共和国政府と協議を行い、この結果を踏まえ、対象業者を確定したものであり、御指摘のように、インドネシア側からの情報のみに依拠して調達が行われたわけではなく、参議院外交防衛委員会における御指摘の答弁もこの趣旨に沿ったものと考える。
 JICSでは、インドネシア共和国情報省の担当者の氏名について、個人に関する情報であることから、お答えを差し控えているものと承知している。

二の3について

 ノン・プロジェクト無償資金協力における調達においては、JICS等の被援助国政府の調達代理機関は「ノン・プロジェクト無償資金協力に係る調達手続実施要領」に定められた手続にのっとり、調達を行うことが求められている。同要領においては、指名競争を含む調達方法が定められている。

二の4について

 例えば、平成十七年度に我が国がエクアドル共和国及びモロッコ王国に対して実施したノン・プロジェクト無償資金協力において、指名競争による調達が行われた。

二の5及び7について

 JICS等の調達代理機関が指名競争による調達を行う場合には、一般に、被援助国政府がその公共調達に係る法令との整合性も踏まえてその都度入札の実施方法について承認を与えていることから、日本の国内制度と一概に比較することは困難である。
 今回のような指名競争による調達はインドネシア共和国の関係法令に照らして合法的に行われたものと認識している。

二の6について

 法令上、国が指名競争を行う場合には、各省各庁の長は、契約の種類ごとに、その金額等に応じ、工事の実績、従業員の数、資本の額等について、競争に参加する者に必要な資格を定めなければならないとされている。また、資格を定めた場合には、競争に参加しようとする者の申請をまって、その者が当該資格を有するかどうかについて審査しなければならないとされているため、これらに反する手続により指名競争を行うことはできない。

二の8について

 一般的には、国が行う指名競争において、入札した業者が一者だけの場合は、新たに別の業者を指名するなどして、改めて競争を行う必要がある。