質問主意書

第165回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二一号

維持期リハビリテーションの日数制限に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年十一月十三日

辻 泰弘   


       参議院議長 扇 千景 殿



   維持期リハビリテーションの日数制限に関する質問主意書

 厚生労働省は、二〇〇六年四月の診療報酬の改定で、長期間にわたって効果が明らかでないリハビリテーションが行われているとして、医療保険で受けられるリハビリテーション料の算定日数に上限を設けた。これにより、例えば脳卒中後のリハビリテーションは百八十日で打ち切られ、それ以降も続けるかどうかは医療機関の判断にゆだねられることになったほか、リハビリテーションを施行する医療機関は、ハードルの高い施設基準を満たすことが必要となった。このため、理学療法士等の絶対的不足により施設基準を満たすことができず、さらに人件費等の負担増による経営難によってリハビリテーションから撤退する医療機関も生まれている。このように今回の診療報酬の改定により、必要なリハビリテーションの継続ができない、極めて深刻な事態が進行している。こうした改定に対し、多田富雄東京大学名誉教授らの呼びかけによって一か月余りで約四十四万筆もの「リハビリテーション打ち切り反対署名」が集まったことなどは、この問題で行き場を失う患者と家族の切実な立場を物語っている。
 さらに、今回の改定で最も深刻なことは、維持期のリハビリテーションが続けられないことである。リハビリテーションは、回復を目的としたものばかりではなく、目立った回復が望めない維持期にもリハビリテーションを継続することで、それ以上の身体機能の低下を起こさないことも目的としている。医療保険から給付する日数に上限を設けることは、この維持期のリハビリテーションの医学的必要性を否定するものであり、続けていれば身体機能が維持できる人を、廃用や寝たきりの状態に追い込むものと言わざるを得ず、極めて重大な問題である。
 このような観点から、以下質問する。

一 政府は、医療保険で受けられるリハビリの日数制限が過ぎた場合には、介護保険の通所リハビリテーション等で対応できると判断している。しかし、多くの介護施設は、集団療法が中心であり、医療機関で行われる理学療法士等による医学的専門性に基づくリハビリテーションとは異質なものであることから、個々の疾患と回復状況に応じた個別性の高いメニューを提供することは、介護報酬上無理がある。また、介護保険の対象についても、六十五歳以上の高齢者、四十歳から六十四歳では末期ガン等の特定疾病に該当する患者のみであり、若年者はその対象から除外されている。このような問題点があるにもかかわらず、政府が、介護保険の通所リハビリテーション等で対応できると判断している理由を明らかにされたい。

二 現在、特定の疾患に該当し、主治医が「状態の改善が期待できる」と判断した場合には、日数にかかわらずリハビリテーションが継続できるとされている。しかし、厚生労働省の担当者が、新聞報道において「改善か維持か判断する医師に根拠をきちんと示してもらう。適切でない場合は医療費の請求は認めない」旨の考えを示したため、医療機関からは「診療報酬が出るのか出ないのかわからない状態では、リハビリテーションを続けることができない」との声が出ている。このような診療報酬の改定は、医療費抑制のためだけに、維持期リハビリテーションを一方的に切り捨てて、患者や医療人を途方に暮れさせるものである。上限日数を超えた患者が機能低下で手遅れにならないよう、早急に現状を把握し、一刻も早く維持期リハビリテーションの日数制限を廃止することが必要であると考えるが、政府の見解と今後の対応方針を示されたい。

  右質問する。