質問主意書

第165回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一号

国営諫早湾干拓事業の費用対効果に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年十月二十三日

仁比 聡平   


       参議院議長 扇 千景 殿



   国営諫早湾干拓事業の費用対効果に関する質問主意書

 無駄で有害な公共事業の代表と言われる国営諫早湾干拓事業(以下「本事業」という。)について、九州農政局が事業再評価第三者委員会に先般提出した資料によると、現在の本事業の費用対効果は事業者自身の試算においても〇・八一とされ、土地改良法が求める事業要件である一・〇を下回っている。この事実は、財政再建が国政上の重要課題とされる今日、極めて憂慮すべき事態であり、公共事業の在り方について根本的な再検討が必要であることを示している。
 本事業の費用対効果については、既に二〇〇二年の第二回事業計画変更の時点において〇・八三と発表されたため、会計検査院においても二〇〇二年度の特定検査対象とし、「今後とも本件事業において適正かつ経済的・効率的・効果的な事業運営が実施されているか引き続き注視していくこととする。」と報告している。しかしこの報告は、農林水産省からの不十分な情報開示内容をもとにしているにすぎないため、指摘内容も不十分のそしりを免れず、事業の根本的な再検討を促すものとはなっていない。
 そこで、本事業の費用対効果の詳細を把握し、事業見直しの方途を検討するために、以下の項目について質問する。なお、答弁に際しては、「国営諫早湾干拓事業に関する質問主意書」(第一四七回国会質問第四二号)に対する二〇〇〇年八月八日付け答弁書を踏まえて、具体的かつ遺漏なきようされたい。

一 二〇〇二年の第二回事業計画変更時及び二〇〇六年の現行事業計画(以下「二〇〇二年及び二〇〇六年事業計画」という。)における災害防止効果算出に際して使用した、被害想定内容(堤防、住家、非住家、農地、農業用施設、農作物、道路・鉄道、その他)ごとの現況被害額(事業実施前の堤防の決壊による浸水等によって生ずる経済的に評価可能な損害額)、計画被害額(事業実施後の降雨による浸水等によって生ずる経済的に評価可能な損害額)及び被害想定地域を、高潮被害・洪水被害・背後地湛水被害別に区分してそれぞれ示されたい。また、現況被害額及び計画被害額の積算プロセスについても併せて明らかにされたい。

二 本事業に洪水防止機能はあるのか。また、これを肯定するのであれば、その防災上のメカニズムと効果額の詳細について併せて説明されたい。

三 背後地湛水防災効果については、NGOから「調整池のマイナス一メートル管理で背後地湛水防災効果があるのは雨量の少ない時に限られる。諫早大水害時と同等の降雨量の場合でも外潮位が二・五メートルや三・五メートルの時に、またそれを上回るような集中豪雨時には外潮位とは無関係に、調整池と潮受け堤防の存在は却って背後地湛水被害を助長させる」旨の指摘がなされている。この点につき、諫早大水害やそれを上回るような集中豪雨時における背後地湛水防災効果の有無について、その根拠を明確に数値で示した上で、政府の見解を明らかにされたい。

四 二〇〇二年及び二〇〇六年事業計画における作物生産効果、維持管理費節減効果、一般交通費等経費節減効果及び国土造成効果の算出に際して使用した基礎データ及び積算プロセスを、二〇〇〇年八月八日付け答弁書の形式にのっとり示されたい。

五 二〇〇二年及び二〇〇六年事業計画の妥当投資額算定に際して使用した、それぞれの割引率、還元率及び総合耐用年数を示されたい。また割引率、還元率及び総合耐用年数のそれぞれの算出方法を明らかにし、二〇〇二年及び二〇〇六年の数値変更の理由を具体的に示されたい。

六 五における二〇〇二年及び二〇〇六年の数値変更について、事業費から換算総事業費を算出する方法を具体的な数値と算定プロセスに基づいて示されたい。

七 事業費が当初計画の千三百五十億円から現在の二千五百三十三億円へと増加した一因として、NGOからは、談合の疑いや落札後の契約金額の増加といった、不透明な工事入札・契約実態があると指摘されている。潮受け堤防関連工事八十二件の平均落札率が九九・三パーセントという異常な高さは、官製談合の存在を強く疑わせるものであり、徹底的な調査を行うべきではないかと考えるが、事業費増加の原因についての政府の見解を示されたい。また落札後に結ばれた最終的な契約金額が落札額よりさらに大幅に増額されている実態も指摘されており、これは競争入札制度の形骸化をもたらすと考えられるが、政府の見解を示されたい。

八 本事業の費用対効果が一・〇を割り込むという異常事態に陥った背景には、他の公共事業においても、その費用対効果が一・〇をごくわずかに上回るに過ぎないという実態があるのではないか。農林水産省が最近十年間に直轄で実施している全公共事業の費用対効果を明らかにされたい。また費用対効果が一・〇を割り込むという事例が他省庁にも存在するのであれば、最近十年間における全ての事例を、農林水産省を含む関係各省庁別に明らかにされたい。

  右質問する。