質問主意書

第165回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一号

安倍内閣総理大臣の歴史認識に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年九月二十七日

喜納 昌吉   


       参議院議長 扇 千景 殿



   安倍内閣総理大臣の歴史認識に関する質問主意書

 安倍晋三内閣総理大臣は、さきに政策方針とも受け取れる著書「美しい国へ」を出版したが、その中では祖父・岸信介元内閣総理大臣と太平洋戦争の重要な関係が触れられていない。安倍内閣総理大臣は、さきの戦争を侵略戦争として認めることに対し極めて曖昧な姿勢であり、外国のメディアからは「歴史修正主義者」と批判されるなど、歴史観をめぐる疑問点が少なくなく、それらは依然として払拭されていない。
 そこで、以下質問する。

一 九月二十五日付の朝日新聞記事「風考計」も指摘するように、岸元内閣総理大臣は戦後、A級戦犯容疑で逮捕され、巣鴨プリズンで三年の収監生活を送ったが、東西冷戦初期の米国の反共戦略強化の過程で戦犯容疑を解かれた。安倍内閣総理大臣は祖父・岸元内閣総理大臣の「政治的DNAを受け継いでいる」と明言しているが、岸元内閣総理大臣が戦犯容疑者だった事実及び太平洋戦争開戦の詔勅に署名した事実についての認識を示されたい。

二 安倍内閣総理大臣は、さきの戦争が侵略戦争であるという認識を明確に示さず、むしろ、それを認めたがらないかのように受け止められる。これは、さきの戦争を正当化し、旧日本軍の名誉回復を望んでいるからではないかという疑問を抱かざるを得ないが、この点につき認識を明確に示されたい。

三 太平洋戦争及びそれ以前の日本軍のアジアにおける行為は、侵略として内外で広く認められてきた。つまり、歴史的事実として解釈が定着しているといえる。しかし、安倍内閣総理大臣は、太平洋戦争など日本の近現代史部分について、「歴史認識は歴史家に任せるべきだ」と繰り返すものの、ドイツのナチスが始めた戦争については「侵略」と明言している。他国の侵略行為は認め、自国の侵略行為をめぐる判断は「歴史家に委ねよう」と主張する理由を明らかにするとともに、侵略行為と認めるか否かの判断基準を示されたい。

四 太平洋戦争に対する認識が曖昧では、小泉前内閣総理大臣が破綻させた対アジア外交の修復も危ぶまれ、戦後の国際秩序に立つ対米関係さえ根底から揺るがしかねず、内閣総理大臣の職は務まらないと考える。安倍内閣総理大臣は、猛省し、歴史に学び真摯に向き合うべきと考えるが、この点につき所見を明らかにされたい。

五 安倍内閣総理大臣は憲法の見直しを重要政策として掲げている。戦争放棄をうたう憲法九条があるからこそ日本は美しいとの意見もあるが、政府の所見を示されたい。

  右質問する。