質問主意書

第164回国会(常会)

答弁書


答弁書第八○号

内閣参質一六四第八○号
  平成十八年六月二十二日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員櫻井充君提出歯科医療に係る診療報酬点数等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出歯科医療に係る診療報酬点数等に関する質問に対する答弁書

一について

 平成十八年度の歯科診療報酬の改定においては、歯牙、歯髄又は歯質の保存のための歯科診療行為について、難易度、必要な時間等を総合的に勘案して評価の見直しを行ったところである。具体的には、歯周疾患指導管理料の引下げ、歯周外科手術の包括化等の措置を講ずる一方、根管処置及び歯冠形成に係る歯科診療報酬の引上げ、歯周疾患指導管理料に係る機械的歯面清掃加算の新設等の措置を講じたところであり、厚生労働省においては、御指摘の「歯や歯髄、歯質を保存すればするほど経営を圧迫するような改定」を行ったものではないと考えている。

二について

 平成十八年度の診療報酬の改定の実施の状況については、中央社会保険医療協議会(以下「中医協」という。)の公益を代表する委員が検証を行うこととしており、厚生労働省においては、現時点では、御指摘のような緊急措置を講ずることは考えていない。

三について

 平成十八年度の歯科診療報酬の改定においては、患者への情報提供を促進する観点から、病状、治療計画、指導内容等について、患者に説明を行うとともに、これを文書により患者に情報提供することについて、歯科診療報酬上評価を行ったところである。厚生労働省においては、この情報提供については、保険医療機関の負担も考慮しつつ、適切な算定要件を設定していると考えている。

四について

 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第七十条第一項において、保険医療機関は、厚生労働省令で定めるところにより、療養の給付を担当しなければならないこととされており、平成十八年度の診療報酬の改定に際し、この規定に基づき、保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十五号)第五条の二の二において、保険医療機関は、患者から費用の支払を受けるときは、正当な理由がない限り、個別の費用ごとに区分して記載した領収証を無償で交付しなければならない旨を規定したところである。

五について

 厚生労働省においては、御指摘の歯科における医療安全・感染防止対策に要する費用を含め、歯科医業経営に必要な費用については、医療経済実態調査の結果を踏まえた中医協における議論を経て、歯科診療報酬において総合的に評価しているところであり、今後とも、賃金及び物価の動向、歯科医療機関の経営状況、保険財政の状況等を踏まえつつ、適切に評価してまいりたい。

六及び七について

 御指摘の歯科疾患総合管理料とは、歯科疾患総合指導料のことを指すものと思われるが、平成十八年度の歯科診療報酬の改定においては、歯科疾患総合指導料を新設し、患者に総合的な指導を行うことについて、患者に対する十分な説明と患者の同意を確実に確認するために、患者の署名を得ることを算定要件としたところである。
 また、歯科疾患総合指導料は、総合的な治療計画の立案及び継続的な指導管理を評価したものであるが、特定の期間中に、患者の一連の治療について二以上の保険医療機関が重複して治療計画の立案及び継続的な指導管理を行うことは想定していないことから、歯科疾患総合指導料を算定しようとする保険医療機関において、患者等に対して照会を行うこと等により、他の保険医療機関において歯科疾患総合指導料を算定していないことを確認することを算定要件としたところである。

八について

 御指摘の歯科疾患総合継続指導料とは、歯科疾患継続指導料のことを指すものと思われるが、平成十八年度の歯科診療報酬の改定においては、当初の治療計画に基づく治療が終了した患者に対して、歯科医師が症状が安定期にあることを確認し、継続した治療の必要性を認めた場合における、継続治療計画に基づく総合的な継続指導を評価した歯科疾患継続指導料を新設したところである。
 歯科疾患継続指導料は、必要に応じて症状の維持安定のために歯周基本検査、スケーリング等を行った上で口腔内すべてに係る総合的な継続指導を行うことを評価しているものであることから、御指摘の歯冠修復脱離の場合を含めた特掲診療料に係る費用は、歯周基本検査、スケーリング等に係る費用を除き、これに含まれるものとしている。なお、継続治療計画に基づかない外傷等の突発的な疾患については、当該疾患に係る処置の費用について、併せて算定できる取扱いとしているところである。
 また、一般に、歯科診療報酬点数については、医療経済実態調査の結果を踏まえた中医協における議論を経て、総合的に評価しているところであり、今後とも、賃金及び物価の動向、歯科医療機関の経営状況、保険財政の状況等を踏まえつつ、適切に評価してまいりたい。

九について

 スケーリング及びルートプレーニングが、歯科衛生士法(昭和二十三年法律第二百四号)第二条第一項の歯牙及び口腔の疾患の予防処置又は同条第二項の歯科診療の補助に該当するか否かは、個々の行為の態様に応じ個別具体的に判断する必要があるものであり、歯科衛生士学校等においてスケーリング及びルートプレーニングに関する教育が行われることは必要であると考えている。
 御指摘の指導医療官ごとの解釈の実態については承知していないが、不適切な解釈を行っている事例があれば、地方社会保険事務局等に対し、適切な解釈を周知してまいりたい。

十について

 歯科衛生士は、歯科衛生士法第二条の規定により、歯牙及び口腔の疾患の予防処置、歯科診療の補助及び歯科保健指導を業とすることができるが、ある行為が歯科衛生士が行うことができるか否かについては、個々の行為の態様に応じ個別具体的に判断する必要があるため、個別に列挙してお示しすることは困難である。
 なお、御指摘の疑義照会に対する回答については、個別の照会に対して、当該照会内容から把握できる事実の範囲内でお答えしたものであり、歯科衛生士が行うことができる行為を個別に列挙したものではない。

十一について

 厚生労働省においては、歯科疾患を予防し、口腔衛生の向上を図る観点から、歯科衛生士の果たすべき役割は重要であり、引き続き、質の高い歯科衛生士を養成し、良質かつ適切な歯科医療を提供していく必要があると考えている。なお、「歯科衛生士の業務範囲を狭めようとしている」ということはない。
 また、御指摘の「時代に合わなくなっている歯科衛生士法」の意味が必ずしも明らかではないが、厚生労働省においては、現時点では、歯科衛生士法の抜本的改正が必要であるとは考えていない。

十二について

 国外で作成された補てつ物等については、使用されている歯科材料の性状等が必ずしも明確でなく、また、日本の歯科技工士免許を有する者が作成したものではないことが考えられることから、厚生労働省においては、「国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて」(平成十七年九月八日付け医政歯発第○九○八○○一号厚生労働省医政局歯科保健課長通知)により、各都道府県に対して、国外で作成された補てつ物等を病院又は診療所の歯科医師が輸入し、患者に供する場合の留意事項を示しているところである。
 なお、歯科技工士が「長時間・低賃金労働を強いられている」という実態については、承知していない。

十三について

 歯科診療に係る医療提供体制及び医療保険制度は国により異なっていることから、我が国の歯科診療報酬点数の水準を単純に他の国と比較することは困難であると考えている。
 また、厚生労働省としては、患者一人当たりの歯科医療に要する時間や歯科診療に係る費用等の科学的データを収集し、中医協の議論を経て、適切な歯科診療報酬を設定することにより、国民に対し、良質かつ適切な歯科医療を効率的に提供する体制の確保に努めているところである。