質問主意書

第164回国会(常会)

答弁書


答弁書第七九号

内閣参質一六四第七九号
  平成十八年六月二十二日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員谷博之君提出独立行政法人産業技術総合研究所等における動物実験施設に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員谷博之君提出独立行政法人産業技術総合研究所等における動物実験施設に関する質問に対する答弁書

一について

 国及び独立行政法人の保有する施設における「動物実験等」の実施状況を把握するためには、各府省及び各独立行政法人において、本年六月に日本学術会議が取りまとめた「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)の定義に該当する「動物実験等」を行っているかについて調査する必要があるが、そのためには膨大な作業を必要とすることから、お答えすることは困難である。

二について

 御指摘の「日本学術会議参加の学会」が何を指すのか明らかではないが、協力学術研究団体(日本学術会議の活動に協力することを申し出、日本学術会議の承認を受けた団体をいう。以下同じ。)については、日本学術会議においてその活動内容を詳細に承知する立場になく、お尋ねについてお答えすることは困難である。

三について

 御指摘の四省においては、それぞれの省が定めた基本指針等を、それぞれの省のホームページに掲載するとともに、関係機関へ通知する等、周知徹底を図っているところである。
 また、日本学術会議においては、ガイドラインを公表し、ホームページに掲載するとともに、協力学術研究団体に対して電子メールを配信し、周知徹底を図った。
 御指摘の四省においても、関係機関に対しガイドラインを送付し、周知徹底を図っているところである。

四について

 平成十八年六月に日本学術会議において策定されたガイドラインでは、適正な動物実験の実施に向けて、独立行政法人、企業等を含む各機関等の自主的な取組が求められていることから、経済産業省としては、現時点では、御指摘のような指針を策定する予定はない。

五について

 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成十五年法律第九十七号。以下「カルタヘナ法」という。)第十三条第一項の規定に基づく主務大臣の確認を受けた拡散防止措置が執られている施設の名称及び所在地並びに確認申請者の人数及び所属先については、調査に膨大な作業を必要とすることから、お答えすることは困難である。

六について

 国及び独立行政法人の保有する施設で遺伝子組換え生物等(カルタヘナ法第二条第二項に規定する遺伝子組換え生物等をいう。以下同じ。)の第二種使用等を行っている施設の名称及び所在地並びにこれらのうちカルタヘナ法第十二条の規定に基づき主務省令に定められている拡散防止措置を執っている施設については、調査に膨大な作業を必要とすることから、お答えすることは困難である。

七について

 主務官庁において把握し、厳重注意を行った遺伝子組換え生物等の第二種使用等に係る違反事例は、カルタヘナ法第十二条について一件、カルタヘナ法第十三条第一項について九件、カルタヘナ法第十五条第一項について一件及びカルタヘナ法第二十六条第一項について四十五件である。

八の1について

 御指摘の調査は、財団法人実験動物中央研究所(以下「実中研」という。)に対する現地調査、実中研に対して遺伝子組換え生物等の譲渡等を行った機関への電話等による照会により行った。
 文部科学省としては、御指摘の四十四機関に対し、定期的な現地調査を行うことは考えていない。

八の2について

 御指摘の説明会の開催に当たっては、報道発表、文部科学省のホームページへの開催案内の掲載及び関係機関への開催通知により、周知したところである。
 お尋ねの「両説明会に参加した大学・研究機関・事業者の名称及びその中に経済産業省所管の機関は含まれていたか否か」については、調査に膨大な作業を必要とすることから、お答えすることは困難である。

八の3について

 独立行政法人産業技術総合研究所(以下「産総研」という。)によれば、平成十七年八月三十日及び同年九月九日に開催された説明会に参加したとのことである。産総研によれば、法令遵守を徹底するため、研修会等により関係者に対しカルタヘナ法及び当該説明会の内容を周知するとともに、外部有識者による動物飼育施設に対する実地調査を実施する等の取組を行っているとのことである。

九の1について

 産総研によれば、産総研つくばセンターの動物飼育施設の実地調査は、平成十七年四月に策定された産総研の動物実験取扱要領に基づき、動物飼育管理の適正化の観点から、動物飼育施設を指導及び監督する目的で平成十八年三月二十七日に行われたとのことである。
 産総研によれば、この実地調査により、一部の動物飼育施設において、カルタヘナ法に基づく表示義務違反の事実が判明したが、カルタヘナ法においては表示義務違反があった場合の報告を義務付けられておらず、また、速やかに是正措置を講じたことから、文部科学省への報告を行わなかったとのことである。
 文部科学省に対しては、平成十八年六月二日に、表示義務違反があった旨の報告が産総研から行われている。

九の2について

 産総研によれば、産総研つくばセンター以外の産総研の施設に対する実地調査としては、平成十八年二月七日及び同月八日に産総研関西センターの動物飼育施設について、同年三月二十八日に産総研北海道センターの動物飼育施設について、それぞれ行われ、これらの動物飼育施設においては、遺伝子組換え動物は適正に管理されており、カルタヘナ法に違反する事実は確認されなかったとのことである。
 また、産総研によれば、カルタヘナ法施行後の違反状況については、産総研つくばセンター内の中央二の十二棟において平成十七年七月以降、六の八棟において平成十六年二月以降、六の十二棟において平成十六年二月以降、遺伝子組換え動物を飼育していたにもかかわらずカルタヘナ法に基づく表示がなされていなかった事実があったことが、平成十八年三月に行われた実地調査で判明したが、その後速やかに是正措置が講じられたとのことである。

九の3について

 産総研によれば、御指摘の第六事業所においてカルタヘナ法に基づく表示義務違反があったことについては、平成十八年三月二十七日の外部有識者による実地調査により判明したとのことである。なお、産総研によれば、御指摘の第六事業所においては、表示義務違反以外のカルタヘナ法に違反する事例は、確認されていないとのことである。

十及び十一について

 文部科学省としては、カルタヘナ法の周知を図るべく、カルタヘナ法の施行に関する通知の発出、説明会の開催、ホームページへの関係情報の掲載等を行ってきたところである。
 また、昨年、一部の機関において必ずしも周知が十分に図られているとはいえない事態が明らかになったことから、再度、関係機関等への通知を発出し、周知徹底を行ったところである。
 文部科学省としては、引き続きこうした取組を通じ、関係省庁との連携の下に、カルタヘナ法の周知徹底を図ってまいりたい。

十二の1について

 産総研つくばセンター六の十三棟(以下「六の十三棟」という。)は、建設計画の当初から、新規な遺伝子機能の解析を行い、その成果を医療等に実用化するための研究を実施することを主たる目的として整備されたものであり、産総研によれば、現在もその目的のために使用されているとのことである。

十二の2について

 六の十三棟の利用に先立ち、特定病原体を持っていない動物の専門の飼育施設(以下「SPF飼育室」という。)の薫蒸前テストを行ったところ、SPF飼育室について施工上の不具合があることが分かったことから、その改善を図るために施設使用を一時休止したものであるが、その後、外部有識者からの汚染に対する備えを強化したより高度な施設とするべきであるとの指摘を踏まえ、施設の高度化に向けた工事を併せて進めているところである。

十二の3について

 六の十三棟の建設及び設計に要した費用からSPF飼育室にかかった費用を抜き出してお示しすることは、困難である。
 六の十三棟については、施工上の不具合の改善を図るために施設使用を一時休止し、その後、外部有識者の指摘を踏まえ、施設の高度化に向けた工事を併せて進めているところである。

十三について

 SPF飼育室を持つ国及び独立行政法人の実験動物飼育施設又は国及び独立行政法人以外の実験動物飼育施設の数については、調査に膨大な作業を必要とすることから、お答えすることは困難である。
 また、SPF飼育室の比較に当たっては様々な観点からこれを行うことが可能であることから、一概に「画期的な点があるのか」についてお答えすることは困難である。

十四について

 御指摘のIVCを設置している国及び独立行政法人の実験動物飼育施設又は国及び独立行政法人以外の実験動物飼育施設の数については、調査に膨大な作業を必要とすることから、お答えすることは困難である。
 また、IVCの比較に当たっては様々な観点からこれを行うことが可能であることから、一概に「どこが画期的であるのか」についてお答えすることは困難である。

十五の1について

 SPF飼育室の設計を行うに当たっては、SPF飼育室に関する知見を有する研究者以外に、御指摘のマイクロベントシステムの設置業者、実験設備メーカーや設計業者からも意見を聴いたことからSPF飼育室における環境を適切に確保できると判断したものである。

十五の2について

 御指摘の設計については、公募型プロポーザル方式により株式会社伊藤喜三郎建築研究所を選定し、随意契約を締結したものであり、当該選定手続の過程において、病院施設における動物実験施設及び実験動物飼育施設に係る同研究所の設計実績を把握した。

十六について

 産総研によれば、平成十五年七月二十五日に、六の十三棟のSPF飼育室の施工の不具合に関する「六の十三棟動物飼育施設施工に関する中間報告書」が産総研の研究環境整備部門に提出され、同部門がこれを保管しているとのことである。

十七について

 お尋ねの「6―13棟施設調査検討委員会」は、産総研・国交省合同調査委員会のことを指しているものと考えるが、産総研によれば、産総研・国交省合同調査委員会の設置趣旨は、SPF機能調査小委員会への諮問事項の決定及び同調査小委員会の答申を踏まえ六の十三棟の今後の整備方針の決定を行うことであり、委員の当時の役職及び氏名は、国土交通省筑波研究学園都市施設管理センター長の太田正男、国土交通省筑波研究学園都市施設管理センター課長補佐の城戸久義、国土交通省筑波研究学園都市施設管理センター課長補佐の中田修、産総研企画本部総括企画主幹の松岡隆、産総研理事・研究環境整備部門長の田中一宜、産総研研究環境整備部門次長の内田修及び産総研研究環境整備部門施設計画室長の中嶋廣義である。
 産総研によれば、SPF機能調査小委員会の設置趣旨は、六の十三棟のSPF飼育室の機能について産総研・国交省合同調査委員会から諮問された事項を調査し、その結果について産総研・国交省合同調査委員会に対し答申することとのことであるが、委員の役職及び氏名は本人の許可を得ていないので公表を控えているとのことである。
 産総研によれば、産総研・国交省合同調査委員会は、SPF機能調査小委員会の調査結果を踏まえて、施工不具合の改修に併せて高度化改修を行うことが妥当であると判断し、これを受けて産総研は、平成十七年五月からSPF飼育室の設計を開始し、平成十七年十二月に高度化工事の契約を締結したとのことである。
 産総研によれば、産総研・国交省合同調査委員会の下にはSPF機能調査小委員会以外に小委員会はないとのことである。

十八について

 産総研によれば、六の十三棟のSPF飼育室の施工不具合については、産総研が平成十五年五月に行った薫蒸前テストを契機として認識したとのことであり、その後の国土交通省と産総研との共同による検証において詳細が明らかになったものである。
 また、SPF飼育室に係る規模、機能等の主要な設計内容には、不具合は認められていないと認識している。

十九について

 六の十三棟の三階にあるSPF飼育室以外では、六の十三棟の二階にある研究室の実験台の天板のゆがみ等の施工上の不具合があったと認識している。また、規模、機能等の主要な設計内容に不具合が認められる事例はないと認識している。
 SPF機能調査小委員会における委員の意見は多岐にわたることから、お尋ねについて、一概にお答えすることは困難である。

二十について

 産総研によれば、御指摘の動物飼育の専門家の指摘は、「設計図面通りに施工したとしても、求められているSPF動物の飼育室としては条件が満たされていなかった」との趣旨の指摘ではなく、管理体制等の面から汚染防止能力を強化したより高度な施設とすべきであるという趣旨の指摘であったとのことである。

二十一の1について

 産総研によれば、高度化改修工事は、設計上の不具合を改修する工事ではなく、SPF機能調査小委員会による、管理体制等の面から汚染防止能力を強化したより高度な施設とすべきとの指摘に基づき、施設内部の機能を強化するために行われた工事であるとのことである。

二十一の2について

 産総研によれば、高度化改修工事の内訳ごとの契約を締結した事業者名、随意契約、一般競争入札等の契約の区別並びにそのうちのSPF飼育室部分の工事及び再設計の金額については、建築工事にあっては、大日本土木株式会社、随意契約、六千四百五十万円であり、電気工事にあっては、北陸電気工事株式会社、随意契約、四千七百五十六万五千円であり、空調工事にあっては、株式会社大気社、随意契約、一億四千百七十五万円であり、衛生工事にあっては、日管工業株式会社、随意契約、三千四百六十五万円であり、設計にあっては、千代田テクノエース株式会社、随意契約、九百十三万五千円であるとのことである。

二十一の3について

 御指摘の施工上の不具合の補修については、大日本土木株式会社他三社により無償により実施させている。

二十一の4について

 産総研によれば、御指摘の施工不具合の補修と高度化改修工事は、同一の施設を対象としたものであり、同一の事業者がこれらを併せて実施することにより、施工が経済的に実施されるとともに、完成後の施工に対する責任の所在が明らかになることから、高度化改修工事についても、施工不具合の補修を行った事業者と契約したとのことである。

二十一の5について

 産総研によれば、産総研による六の十三棟の高度化改修工事は、設計上の不具合を改修する工事ではなく、管理体制等の面から汚染防止能力を強化したより高度な施設にするために行っているものであるとのことである。

二十二について

 産総研によれば、産総研の年齢軸生命工学研究センターは、六の十三棟が完成してから現在までの間、財団法人動物繁殖研究所二階にあるSPF飼育室を借用しているとのことである。
 産総研によれば、これまで産総研が財団法人動物繁殖研究所に対して支払った借用料は、平成十六年一月二十日から平成十八年七月三十一日までの間の総額で一億三千九百九万六千三百九十四円であるとのことである。

二十三について

 産総研によれば、御指摘の平成十五年夏ごろ、当時の産総研第六事業所動物実験委員会委員長が、ある研究者が産総研つくばセンターを辞める際に放置していったサルの引き取り先を探していた事実はなかったとのことである。

二十四について

 産総研によれば、過去五年間における各年度ごとの産総研で飼育してきた施設別のサル類の種類及び頭数については、平成十三年度における二の一棟にあっては、アカゲザル三頭、ニホンザル十三頭、六の十二棟にあっては、アカゲザル二頭、ニホンザル五頭、北センターにあっては、アカゲザル二頭、ニホンザル十二頭であり、平成十四年度における二の一棟にあっては、アカゲザル四頭、ニホンザル八頭、六の十二棟にあっては、アカゲザル四頭、ニホンザル十頭、北センターにあっては、アカゲザル二頭、ニホンザル十五頭であり、平成十五年度における二の一棟にあっては、アカゲザル七頭、ニホンザル十五頭、六の十二棟にあっては、アカゲザル二頭、ニホンザル五頭、北センターにあっては、アカゲザル二頭、ニホンザル十九頭であり、平成十六年度における二の一棟にあっては、アカゲザル七頭、ニホンザル十四頭、六の十二棟にあっては、アカゲザル二頭、ニホンザル一頭、北センターにあっては、ニホンザル二十六頭であり、平成十七年度における二の一棟にあっては、アカゲザル八頭、ニホンザル十四頭、六の十二棟にあっては、アカゲザル四頭、ニホンザル三頭、北センターにあっては、ニホンザル二十二頭であるとのことである。
 産総研によれば、お尋ねのサル類の入手先、主な実験目的及び実験殺等の個体管理記録については、産総研における動物実験計画書を調査し、集計する必要があり、そのためには膨大な作業を必要とするとのことであり、お答えすることは困難である。
 産総研によれば、産総研の施設において飼育されるサル類に関して、関係法令又は条例に違反する事実は、確認されていないとのことである。