質問主意書

第164回国会(常会)

答弁書


答弁書第六二号

内閣参質一六四第六二号
  平成十八年六月九日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員富岡由紀夫君提出世界遺産条約に基づく世界遺産の登録に係る国内手続等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員富岡由紀夫君提出世界遺産条約に基づく世界遺産の登録に係る国内手続等に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の世界遺産暫定リスト(以下「暫定一覧表」という。)については、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(平成四年条約第七号)第十一条1において、締約国は、文化遺産又は自然遺産の一部を構成する物件(以下「資産」という。)で、自国の領域内に存在し、世界遺産一覧表に記載されることが適当であるものの目録を国際連合教育科学文化機関の顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産の保護のための政府間委員会(以下「世界遺産委員会」という。)に提出することとされている。具体的には、世界遺産委員会が作成した「世界遺産条約履行のための作業指針」において、締約国は、資産の名称、地理的な位置、資産の簡単な説明及び顕著な普遍的価値の根拠を記載した暫定一覧表を作成し、世界遺産委員会の事務局に提出することとされている。

二について

 平成十二年に暫定一覧表への資産の追加の検討を行った際は、①文化的景観や産業遺産などを選考対象とすること、②(1)世界文化の見地から高い価値を有している国宝建造物、特別史跡、特別名勝を中心とする一群の文化財であること、及び(2)特に世界的意義が認められるもの、日本の遺産を代表するもの又は同種の資産の国内外における比較において代表的なものであることを考慮して選定する資産を厳選すること、並びに③保護の体制が整備され、環境保全が十分図られていることを選定の基準とした。今後、暫定一覧表への資産の追加を行う際は、どのような選定の基準が適当か、改めて検討する必要があると考えている。

三について

 これまでの暫定一覧表への資産の追加に際しては、御指摘の1、2のうちの「カテゴリー間のバランス」、3及び4のうちの「保存に対する地域の取組状況」について考慮している。

四について

 暫定一覧表は、締約国が、自国の領域内に存在する資産で、世界遺産一覧表に記載されることが適当であると考えるものの目録であり、政府としては、「確実に世界遺産になれる」ことを要件と考えているものではない。

五について

 暫定一覧表に記載した資産については、確実な保護措置をとるなど条件の整ったものから世界遺産委員会に順次推薦しており、現時点で推薦作業が終わっていない資産もあることから、現在、暫定一覧表への資産の追加について、委員会又は調査研究協力者会議等(以下「委員会等」という。)を開催しての検討は行っていない。

六について

 五についてで述べた理由から、平成十二年に暫定一覧表への資産の追加の検討を行った後、委員会等を開催しての検討は行っていない。委員会等を開催する際の要件及び具体的な手続については、文化審議会文化財分科会の議論を踏まえつつ、検討してまいりたい。

七について

 委員会等の開催及び開催時期等については、文化審議会文化財分科会の議論を踏まえつつ、検討してまいりたい。

八について

 現在暫定一覧表に記載している資産のほか、我が国において世界遺産一覧表に記載されることが適当であると考える資産がどの程度あるかについては、暫定一覧表への資産の追加について委員会等を開催しての検討を行っておらず、現時点でその数をお答えすることは困難である。

九について

 今後、暫定一覧表への資産の追加について委員会等を開催しての検討を行うに際しては、文化審議会文化財分科会の議論を踏まえつつ、公正性及び透明性の確保に努めてまいりたい。

十の1について

 暫定一覧表への資産の追加について委員会等を開催しての検討は必要であると考えているが、委員会等を常設化する必要はないと考えている。

十の2から6まで及び8について

 お尋ねについては、公正性及び透明性の確保の観点から、適切に対応してまいりたい。

十の7について

 お尋ねについては、文化審議会文化財分科会の議論を踏まえつつ、検討してまいりたい。

十の9について

 暫定一覧表への資産の追加及び世界遺産一覧表への記載の推薦の決定については、文化審議会等や世界遺産条約関係省庁連絡会議を開催しているところであり、国会の同意が必要であるとは考えていない。

十一について

 世界遺産への登録を目指して、地方公共団体において文化財保護のための取組が一層推進されることは意義のあることと考えており、これまでも文化庁文化財部記念物課を窓口として、地方公共団体等への指導及び助言等を行っているところであり、今後ともその充実に努めてまいりたい。