質問主意書

第164回国会(常会)

答弁書


答弁書第五五号

内閣参質一六四第五五号
  平成十八年五月十九日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員喜納昌吉君提出ネパールへの政府援助に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員喜納昌吉君提出ネパールへの政府援助に関する質問に対する答弁書

一について

 ネパールは、インドと中国の間に位置する地政学的に重要な国であり、ネパールの安定は、アジア地域の安定に大きな影響を及ぼすと考える。したがって、我が国としては、ネパールとの二国間関係の発展に努め、ネパールにおける貧困及び社会的不平等の問題の軽減並びに民主化の推進のため、必要な支援を実施していくこととしている。

二について

 我が国は、政府開発援助大綱(平成十五年八月二十九日閣議決定。以下「ODA大綱」という。)に基づき、政府開発援助を実施しており、ODA大綱の「援助実施の原則」において、「開発途上国における民主化の促進、市場経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払う。」とあることを踏まえ、援助受入国において、民主主義の後退等好ましくない動きが見られた場合には、まずは外交努力による説得を通じ、事態の改善に向け相手国に粘り強く働きかけを行うこととしている。ネパール政府に対しても、平成十七年二月のネパール国王による内閣の解散及びネパール政府による人権制限措置の実施を受け、これまで累次にわたり、政党関係者等の拘束及び自宅軟禁並びに報道機関の検閲の中止等、憲法で保障された自由の早急な回復について働きかけを行ってきた。
 また、ODA大綱の「援助実施の原則」において、「上記の理念にのっとり、国際連合憲章の諸原則(特に、主権、平等及び内政不干渉)及び以下の諸点を踏まえ、開発途上国の援助需要、経済社会状況、二国間関係などを総合的に判断の上、ODAを実施するものとする。」とあるとおり、政府としては、諸般の状況を総合的に判断の上、政府開発援助を実施することを基本的考え方としている。この基本的考え方に基づき、平成十七年二月のネパール国王による内閣の解散及びネパール政府による人権制限措置の実施以降のネパールに対する経済協力については、ネパールの基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払い、人権状況のほか、民主主義の回復に係る情勢を含む事態の推移を一層注意深く見守りつつ、個別案件ごとに従来以上に慎重に実施の可否を検討することとしている。
 平成十七年二月以降、我が国は、ネパールに対し、食糧援助、食糧増産援助、教育支援等の実施を新たに決定したが、これは、依然として不安定な国内情勢や人権状況の見通しに懸念を有しつつも、ネパールにおいて援助を受け取る一般国民、特に貧困層への人道的配慮を払い、貧困及び社会的不平等の問題の軽減に資する援助の実施の意義をより重視したためである。
 なお、ネパールに対する我が国以外の主要援助国や国際機関は、継続の援助案件については、平成十七年二月以降も実施しており、新規の援助案件についても、国等によって対応を異にしているものの、実施を当面見合わせる等の措置をとった国等は、一部に限られている。

三について

 二についてで述べたとおり、ODA大綱の「援助実施の原則」に係る基本的考え方に基づき、平成十七年二月以降のネパールに対する経済協力については、ネパールの基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払い、人権状況のほか、民主主義の回復に係る情勢を含む事態の推移を一層注意深く見守りつつ、個別案件ごとに従来以上に慎重に実施の可否を検討することとしており、今後ともこのような方針に従い、個別案件ごとに判断していく考えである。

四について

 ギャネンドラ国王が即位した平成十三年六月四日から平成十八年五月十五日までの間に我が国がネパールに対して実施を決定した無償資金協力の供与限度の総額は、約二百三十七億二百万円である。また、平成十三年度から直近の統計がある平成十六年度までの間に実施した技術協力の総額は、国際協力機構の経費の実績ベースで約六十八億九千九百万円である。
 同国王即位から現在までに実施を決定した主要な案件は、首都カトマンズ近郊とテライ平原を結ぶシンズリ道路建設、小学校教室建設に必要な資機材の調達、食糧援助及び食糧増産援助等の無償資金協力並びに正規教育が受けられない児童を対象とする教育の強化等の技術協力である。