質問主意書

第164回国会(常会)

答弁書


答弁書第五二号

内閣参質一六四第五二号
  平成十八年五月十二日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員櫻井充君提出イレッサの副作用被害問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出イレッサの副作用被害問題に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの平成十八年三月末日時点のゲフィチニブの累積使用患者数については、把握していない。

二について

 厚生労働省に報告されているゲフィチニブ使用後の間質性肺炎等による死亡例が六百例以上となっていることについての原因は明らかではない。

三について

 厚生労働省がこれまでに講じてきたゲフィチニブに係る主な安全対策は、次のとおりである。
 平成十四年十月、本剤の使用により間質性肺炎等が発現することがあるので、胸部X線検査を行うこと等を添付文書の警告欄に記載すること、緊急安全性情報を配布すること等をアストラゼネカ株式会社に指示した。
 同年十二月、少なくとも使用開始後四週間は入院又はそれに準ずる管理下で、間質性肺炎等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うこと等を添付文書の警告欄に記載すること等を同社に指示した。
 平成十五年四月、本剤による治療を開始するに当たり、特発性肺線維症等の合併の有無を確認し、これらの合併症を有する患者に使用する場合には特に注意すること等を添付文書の警告欄に記載すること等を同社に指示した。
 平成十六年九月、特に全身状態の悪い患者ほど、間質性肺炎等の発現率及び死亡率が上昇する傾向があること等を添付文書の警告欄に記載すること等を同社に指示した。
 平成十七年三月、本剤を使用する際は、日本肺癌学会のゲフィチニブ使用に関するガイドライン等の最新の情報を参考にすることを添付文書の重要な基本的注意欄に記載すること、間質性肺炎等の発症原因の解明や回避方法の策定等に向けて努力し、その進捗について定期的に厚生労働省に報告すること等を同社に指示した。
 厚生労働省としては、今後とも、アストラゼネカ株式会社からの報告やゲフィチニブに関して得られた知見について、薬事・食品衛生審議会に報告するとともに、同審議会における議論等を踏まえ、必要な安全対策を講じてまいりたい。

四について

 ゲフィチニブの使用については、平成十七年三月、医学、薬学等の専門家等からなるゲフィチニブ検討会において、ゲフィチニブの使用の継続を前提に、国及び企業は、ゲフィチニブに関する従来の安全対策を引き続き実施するとともに、その適正使用の推進等の措置を講じることが適当であるとされたところであり、厚生労働省としては、当該検討会における検討の結果やアストラゼネカ株式会社からの報告等についての薬事・食品衛生審議会における議論等を踏まえ、必要な安全対策を講じてきているところである。

五について

 一般に、抗がん剤の有効性については、腫瘍縮小効果、延命効果等を指標として、また、抗がん剤の安全性については、国際的に認知されている基準に沿って判断される有害事象の内容及び重症度を基に、それぞれ、がんの発生部位、その種類、その進行度等様々な要素を考慮した上で、個別具体の事例に即し専門的かつ総合的に判断している。したがって、使用患者総数に対して一定の著効例が一定程度の割合認められた場合に有効性があると判断しておらず、また、一定程度の割合の死亡例が報告された場合に安全性が欠如すると判断していない。

六について

 厚生労働省においては、抗がん剤の有効性及び安全性については、一般に、がんの発生部位、その種類、その進行度等様々な要素を考慮して、個別具体の事例に即し専門的かつ総合的に判断しており、あらかじめ一定の種類の副作用が一定の割合で生じた場合にその承認を取り消したり販売等の一時停止を命じたりすることを定めているものではない。

七について

 平成十七年五月十五日、厚生労働省においては、御指摘の研究発表がなされた米国がん治療学会に出席した我が国の肺がん治療の専門家から、当該研究発表の内容を聴取するとともに、同学会のホームページに掲載された当該研究発表の資料を入手し、所要の対応を行ったところである。

八について

 薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第八十条の二第六項及び薬事法施行規則(昭和三十六年厚生省令第一号)第二百七十三条の規定により、治験の依頼をした者等は、重大な疾病が発生するおそれがあること等を示す海外での研究報告等を知ったときは、その旨を厚生労働大臣に報告しなければならないこととされている。
 また、同法第七十七条の四の二第一項及び同規則第二百五十三条第一項の規定により、医薬品の製造販売業者等は、重大な疾病が発生するおそれがあること等を示す海外での研究報告等を知ったときは、その旨を厚生労働大臣に報告しなければならないこととされている。
 さらに、厚生労働省においては、独立行政法人医薬品医療機器総合機構と連携し、一定の学術雑誌等を対象に、海外での臨床試験結果等を含む必要な安全性等に関する情報について収集する等、必要な安全性等に関する情報を収集する体制を整備しているところである。