質問主意書

第164回国会(常会)

答弁書


答弁書第二九号

内閣参質一六四第二九号
  平成十八年三月三日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員藤末健三君提出総合科学技術会議の科学技術基本政策答申に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤末健三君提出総合科学技術会議の科学技術基本政策答申に関する質問に対する答弁書

一について

 「諮問第五号『科学技術に関する基本政策について』に対する答申」(平成十七年十二月二十七日総合科学技術会議決定。以下「基本政策答申」という。)においては、科学技術が何を目指すのかという政策目標を設定している。基本政策答申を受け、総合科学技術会議は、平成十八年三月末までに、関係府省の協力を得て、研究開発の分野ごとに分野別推進戦略を策定することとしており、その作業の中で、同政策目標と関連付けながら、政府の行う研究開発について、研究開発目標の設定のみならず、国民や経済社会に対して最終的にどのような成果を還元しようとしているのかという観点から、不確実性の高い科学技術の特質にも配慮しつつ、できる限り具体的かつ定量的な成果目標の設定を行うことを目指しているところである。

二について

 人材育成の重視に関しては、博士号取得者は、高度な知識基盤社会を先導し、活躍すべき存在であることから、大学院教育の改革や人材育成面での産学連携を推進することにより、社会の多様な場で活躍し得る博士号取得者の育成を更に強化するとともに、若手研究者に自立性と活躍の機会を与える仕組みの導入の奨励、大学の研究職以外の進路も含めた職業選択を支援するための取組の促進を図ってまいりたい。また、技術士は、その知識及び技能の水準を向上させるなど、常にその資質の向上を図らなければならないことが求められている。このような責務を持った技術士の制度の普及拡大のため、国際的な技術者資格制度における活用等の取組の促進を図ってまいりたい。
 競争的環境の重視に関しては、研究者の属する大学等の組織間の競争を促す効果を持つ競争的資金の充実を図るとともに、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(平成十七年三月二十九日内閣総理大臣決定)に沿って、大学等において、研究者の業績の評価結果をその処遇等に反映させる必要があると考えている。

三について

 基礎研究は、新しい現象の発見及び解明並びに独創的な新技術の創出等をもたらすものであるが、その成果の見通しを当初から立てることが難しく、地道で真摯な真理探究と試行錯誤により成果が生み出され、それにより飛躍的な知識や技術の発展にもつながる等の性質を有している。また、広範な分野における均衡のとれた研究開発能力の涵養への配慮の観点も踏まえ、科学研究費補助金で行われるような研究者の自由な発想に基づく研究について、研究内容の多様性の確保に配慮して、政策課題対応型研究開発とは独立して推進することを基本政策答申において明確化したところである。
 このような方針については、これまでも、全国各地で行った科学技術政策シンポジウムや科学技術タウンミーティング等を通じて国民に対する説明に努めてきたところであり、今後とも、基本政策答申に基づいた各般の施策の推進や情報発信を通じて国民の理解の増進に努めてまいりたい。

四について

 御指摘の「競争的な制度」がいかなるものを指すのか明らかではないが、競争的資金は、資金配分主体が広く研究開発課題等を募り、提案された課題の中から、専門家を含む複数の者による科学的・技術的な観点を中心とした評価に基づいて実施すべき課題を採択し、研究者等に配分する研究開発資金であり、一方、基盤的資金は、人材の確保、教育研究環境の整備等の教育研究の基盤となる組織の存立を支えるものであり、両者は異なるものである。基本政策答申に示すように、競争的資金と基盤的資金にはそれぞれ固有の機能があり、それぞれ重要な役割を果たしていると認識しており、その認識の下、大学における競争的環境の醸成を図っていくことが必要であると考えている。
 なお、基本政策答申に示すように、国立大学法人運営費交付金は、各大学の自主的・自律的な学内配分を尊重しつつ、学長裁量配分等も含め、競争的環境の醸成等の観点に立って、競争的資金や外部資金とあいまって最も効果的・効率的に活用されることが重要であり、国はこのような取組を促進することとしている。

五について

 基本政策答申においては、「調査分析機能や府省間の調整機能の強化を図る」との方針が示されているが、現時点までに、総合科学技術会議は、調査分析機能強化のため、科学技術振興調整費に係る「重要政策課題への機動的対応の推進」という新たなプログラムを平成十八年度から実施することとしている。府省間の調整機能についても、科学技術連携施策群の推進に当たって、平成十八年度からワーキンググループ等による調整活動を本格的に実施し、その充実を図ることとしているところである。今後とも、総合科学技術会議の機能の強化を推進してまいりたい。
 科学技術に関する基本的な政策に関する基礎的な事項を調査・研究するために設置されている科学技術政策研究所は、科学技術の振興に関する総合調整を担う内閣府に置かれている総合科学技術会議の下ではなく、科学技術に関する基本的な政策の企画・立案及び推進を担う文部科学省に設置することが適当であると考えている。