質問主意書

第164回国会(常会)

答弁書


答弁書第二八号

内閣参質一六四第二八号
  平成十八年三月三日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員緒方靖夫君提出在日米軍横田基地の軍民共用化等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員緒方靖夫君提出在日米軍横田基地の軍民共用化等に関する質問に対する答弁書

一について

 我が国に駐留するアメリカ合衆国(以下「合衆国」という。)軍隊の兵力態勢の再編に関する合衆国との協議の具体的な内容については、これを公にすると合衆国政府との信頼関係が損なわれるおそれがあること等から答弁を差し控えたいが、横田飛行場は、我が国に駐留する合衆国軍隊の総司令部及び第五空軍司令部の所在地であるとともに、輸送部隊である第三七四空輸航空団が配置され、輸送中継の拠点ともなっており、合衆国軍隊の中枢の施設・区域として、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)の目的を達成するため、重要な役割を果たしていると考えていることから、政府としては、合衆国政府に横田飛行場の返還を求める考えはない。

二の1について

 平成十七年十月二十九日に開催された日米安全保障協議委員会で発表された文書(以下「発表文書」という。)において示された我が国に駐留する合衆国軍隊の兵力態勢の再編の一環としての諸施策のうち、航空自衛隊航空総隊司令部及び関連部隊の横田飛行場における合衆国第五空軍司令部との併置の施策の実施については、新たな航空機部隊の常駐はないと見込まれること等から、現時点において、これによって同飛行場周辺における航空機騒音が増大することはほとんどないと考えている。他方、発表文書において示された同飛行場のあり得べき軍民共同使用については、今後その具体的条件及び態様につき検討していくものであることから、これに伴う同飛行場周辺における航空機騒音の変化について申し上げる段階にない。
 また、右に述べた諸施策の実施後、防衛施設庁においては、同飛行場に関して防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和四十九年法律第百一号)第四条の規定に基づき指定した第一種区域(以下「第一種区域」という。)について、必要に応じ、航空機騒音の状況を把握するための調査を実施した上で、同条の規定に基づき適切に措置していく考えである。

二の2について

 第一種区域の指定基準値については、防衛施設周辺地域において住宅防音工事を行うことにより「航空機騒音に係る環境基準について」(昭和四十八年環境庁告示第百五十四号)に定める環境基準が達成された場合と同等の屋内環境が保持されるようにするとの観点から、防音工事を行っていない住宅が通常保持していると考えられる防音上の有効性等を勘案して、七十五WECPNL(加重等価継続感覚騒音レベル)としているところ、現時点においてこれを改める考えはない。

二の3について

 発表文書において示された横田飛行場の軍民共同使用の具体的な内容については、今後、同飛行場周辺における航空機騒音にも留意しつつ、合衆国政府との間で検討していく考えである。

二の4及び5について

 横田飛行場の軍民共用化については、平成十五年十二月から内閣官房、防衛庁、防衛施設庁、外務省及び国土交通省と東京都との間で実務的な協議を行うことを目的とした連絡会を開催してきている。同連絡会でのこれまでの議論の結果を取りまとめ、日本側の考え方を合衆国側に提示し、これに対する合衆国側からの反応も得られているが、それらの内容を含め、合衆国政府との協議の具体的な内容については、これを公にすると合衆国政府との信頼関係が損なわれるおそれがあること等から答弁を差し控えたい。
 また、日米両政府は、発表文書において、横田飛行場の「あり得べき軍民共同使用のための具体的な条件や態様が、共同使用が横田飛行場の運用上の能力を損なってはならないことに留意しつつ、検討される。」と表明したことを受け、更に具体的な検討を進めているところである。

三の1から4まで、6及び7について

 合衆国軍隊の航空機騒音に係る訴訟に関する損害賠償金等に係る日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号。以下「日米地位協定」という。)に基づく分担の在り方については、我が国の立場と合衆国の立場が異なっていることから、合衆国政府との間で協議を行ってきたところである。合衆国政府との協議はなお妥結を見ておらず、現時点において合衆国政府から何らかの支払がされたとの事実はない。
 合衆国政府との具体的な協議の内容については、これを公にすると合衆国政府との信頼関係が損なわれるおそれがあること等から答弁を差し控えたい。

三の5について

 お尋ねの「現在までに実際に支払った賠償金総額」とは、いわゆる「横田基地夜間飛行差止等請求事件」の判決に基づき、国が原告らに対して支払った損害賠償金の総額を指すものと解されるところ、その額は、平成十八年一月三十一日現在、九億六千二百三十五万六千二百四十三円である。

四について

 政府としては、御指摘の横田空域における進入管制業務の合衆国軍隊から日本国政府への移管(以下「横田空域の返還」という。)については、日米地位協定第二十五条1の規定に基づいて設置された日米合同委員会の下に設置されている民間航空分科委員会において、昭和五十八年十二月以降、これまで七回にわたり合衆国側に要請するなど、その実現に向けてこれまでも鋭意努力してきているが、合衆国側からは、合衆国軍隊の運用上の理由から横田空域の返還は困難であるとの回答を得ているところである。政府としては、引き続き、安全保障上の必要性を踏まえつつ、横田空域の返還に向けた努力を続けていく考えである。