質問主意書

第164回国会(常会)

質問主意書


質問第六九号

鳥獣保護行政に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年六月九日

谷 博之   


       参議院議長 扇 千景 殿



   鳥獣保護行政に関する質問主意書

 鳥獣保護行政のうち、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(以下「鳥獣保護法」という。)の保護の対象等及び他の法令との関係等について明らかでない部分があるので、以下質問する。

一 鳥獣保護法第八十条は、「環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣」又は「他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣」であって「環境省令で定めるもの」について、鳥獣保護法の規定の適用除外を定めている。これは、「環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣」及び「他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣」の中から、環境省自らの判断で選択するものという理解でよいか。

二 鳥獣保護法第八十条に基づく適用除外についての環境省の判断基準は、ある鳥獣が「他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている」かどうかという点は含まれず、条文では明記されていない別の観点・基準があるという理解でよいか。そうであれば、その判断基準を具体的に明らかにされたい。

三 「他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣」について、文化財保護法で適切な保護管理がなされているジュゴンとスナメリのうち、ジュゴンだけが鳥獣保護法の対象になっている。スナメリを対象とせずに、ジュゴンだけを対象にすると環境省が判断した具体的な理由は何か。

四 「他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣」について、水産資源保護法で適切な保護管理がなされているジュゴンとトドのうち、ジュゴンだけが鳥獣保護法の対象になっている。トドを対象とせずに、ジュゴンだけを対象にすると環境省が判断した具体的な理由は何か。

五 三と四に対する答弁が、これまでの私の照会に対して回答したように、それぞれ環境省自身の調査と水産庁との情報交換・調整を踏まえて判断したという趣旨となるのであれば、理由の説明としては不十分である。環境省自身の調査結果として、スナメリやトドと比べてジュゴンはどのように違っているから対象にすべきものと判断したのか、具体的に示されたい。

六 環境省は、これまでの私の照会に対し、ジュゴンの取扱いについては水産庁との調整の結果を、また、トドの取扱いについては水産庁との情報交換の結果をそれぞれ踏まえたと回答している。ここでいう「調整」と「情報交換」はどのように違うのか。それぞれどのような調整又は情報交換が行われたのか、内容を具体的に時系列で明らかにされたい。

七 鳥獣保護法第八十条を受けた鳥獣保護法施行規則第七十八条の表現は、環境省令で定める判断基準には結局のところ「環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣」と「他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣」の二つしかないことを示しているのではないか。そうであれば、一で私が示した鳥獣保護法第八十条の解釈と矛盾するのではないか。

八 環境省が二〇〇一年より実施している「ジュゴンと藻場の広域的調査」は、これまでどのような成果が上がり、今年度はどのような取組を行う予定か。

九 我が国は、一九九三年に生物多様性条約を批准しているが、この条約の履行を担保するための国内法は、どの法令に当たるか。条約批准時の関連法令及び現在の関連法令の名称を示されたい。

十 九に対する答弁で示された法令の趣旨や目的は、いずれもこの条約の理念に適合していると考えているのか。また現在ある国内法令だけで、この条約履行には必要十分と考えているのか。

十一 両生類、爬虫類、魚類及び昆虫類の希少種ではないいわゆる普通種について、種及び生息地を保全する法令や制度は我が国に存在するか。存在するのであれば、法令や制度の具体的な名称を挙げられたい。

  右質問する。