質問主意書

第164回国会(常会)

質問主意書


質問第六二号

世界遺産条約に基づく世界遺産の登録に係る国内手続等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年六月一日

富岡 由紀夫   


       参議院議長 扇 千景 殿



   世界遺産条約に基づく世界遺産の登録に係る国内手続等に関する質問主意書

 現在、全国各地に所在する文化遺産について、地方自治体やNPO等を主体として、ユネスコによる世界遺産の登録を目指す運動が活発化している。しかし、国内における世界遺産登録に向けた手続は不透明な部分が多く、中でも、政府がユネスコ世界遺産委員会への推薦に先立って、五~十年以内の世界遺産登録を目指す物件の目録として提出する世界遺産暫定リストは、その作成過程及び物件の掲載基準が明確にされていないため、手続の透明化が強く望まれるところである。
 世界遺産へ登録するにふさわしい文化遺産が、万全の保護措置を受け、世界遺産暫定リストへ円滑に掲載されるためには、手続の透明性を高めることが不可欠である。手続の透明化によって、文化遺産に関係する地方自治体や関係者が無用な不安を抱いたり混乱を招いたりすることなく、世界遺産登録に向けた適切な活動を行うことが可能になると同時に、国民全体の世界遺産への関心・理解を高めるための一助となることが期待される。
 そこで、以下質問する。

一 政府が、世界遺産暫定リストを作成する際の具体的な手続等について、法令上の根拠を示すとともに、その内容を具体的かつ網羅的に明らかにされたい。

二 政府は、平成十二年に、文化財保護審議会世界遺産条約特別委員会において世界遺産暫定リストの見直しを行ったが、その際の世界遺産暫定リストへ掲載する文化遺産の基準を明らかにされたい。併せて、その基準が現在においても有効であるか否かを明らかにされたい。

三 二の世界遺産暫定リストへの物件の掲載あるいは掲載済物件の削除の考え方として、以下の事項について考慮しているのか否かを明らかにされたい。

1 文化財保護法に基づく文化財の指定、特に国宝又は特別史跡名勝天然記念物の指定の有無
2 世界遺産一覧表及び暫定リスト掲載物件のカテゴリー(歴史的建造物、産業遺産、文化的景観等)間のバランスあるいは地域間バランスの不均衡の是正
3 同種の物件が国内外において世界遺産に登録されていないこと
4 世界遺産登録に関する周辺地域住民等の署名、関係機関等による意見書等の提出あるいは陳情、保存に対する地域の取組状況及び今後の見込みなど、各地域における活動の状況

四 平成十六年十二月四日付朝日新聞記事「知名度アップ、世界遺産に立候補続々(beReport)」によると、世界遺産暫定リストへの物件掲載について、文化庁記念物課のコメントとして、「確実に世界遺産になれるものでないと載せられない」との記述がある。政府は、「確実に世界遺産になれる」ことを世界遺産暫定リストへの掲載の要件と考えているのか、認識を示されたい。併せて、「確実に世界遺産になれる」ことの判断基準を明らかにされたい。

五 政府は、平成十二年以降、文化遺産については、世界遺産暫定リストの見直しを行っていないが、その理由を明らかにされたい。併せて、政府において、平成十二年以降、世界遺産暫定リストの掲載候補地の選定の準備作業を行っていたか否か、行っていたならばその実施状況及び結果について明らかにされたい。

六 政府は、平成十二年の世界遺産条約特別委員会の開催以降、現在に至るまで、文化遺産について、世界遺産暫定リストの見直しを行うための委員会又は調査研究協力者会議等(以下、「委員会等」という。)を設置していないが、その理由を明らかにされたい。併せて、政府が委員会等を設置する際の要件及び具体的な手続(委員会等の設置・開催の発議及び構成員の選任を誰が行うのか)を明らかにされたい。

七 政府は、六の委員会等を今後設置することを検討しているのか明らかにされたい。併せて、設置の予定があるならば、設置時期の目途及び暫定リストへの掲載候補として考えている物件を明らかにされたい。

八 我が国の世界遺産暫定リストの文化遺産の掲載物件は、過去数年間にわたり五件前後で推移している。欧米を始めとする諸外国は、より多くの物件を暫定リストに掲載し、世界遺産一覧表にも多くの文化遺産が掲載されている。政府は、我が国において、今後世界遺産へ登録するにふさわしい文化遺産はどの程度存在すると考えているのか明らかにされたい。

九 世界遺産暫定リストの見直しに当たっては、応募要件・公募期間等の応募要領を十分に周知した上で、世界遺産への登録を目指す地方自治体等から広く立候補を募る公募制を導入するとともに、委員会等におけるオープンな議論を経て、暫定リストへの掲載候補を選定し、応募物件に対する委員会等の講評を明らかにするといった、公正性、透明性の高い委員会等の運営の在り方を望むが、政府の認識を示されたい。

十 世界遺産暫定リストの作成手続において、透明性を確保するため、九に示した公募制の導入のほか、リストに掲載する文化遺産に関する適切な基準の設定や、積極的な情報開示等が不可欠と考えるが、以下の各項目について、政府の今後の対応方針を明らかにされたい。

1 委員会等の常設化
2 委員会等の構成員の選任理由の公表
3 委員会等の開催日時の公表
4 委員会等の議事の公開
5 世界遺産暫定リストへの掲載基準の公開
6 委員会等の配付資料、会議録等の情報についてホームページ等における公開
7 世界遺産暫定リストへの掲載を望む地方自治体や関係者等の委員会等への関与の在り方
8 世界遺産暫定リストの見直しに関するパブリックコメントの実施
9 世界遺産暫定リストの見直し及び世界遺産推薦の決定に関する国会の同意

十一 政府は、世界遺産への登録を目指す地方自治体や関係者等の相談等を積極的に受け付け、世界遺産にふさわしい万全の保護措置が適切にとられるよう、指導や助言等の措置を講ずるべきと考えるが、政府の認識を示されたい。また、このような相談を受け付ける窓口を設置する考えがあるか。もし既に設置しているならば、具体的状況を明らかにされたい。

  右質問する。