質問主意書

第164回国会(常会)

質問主意書


質問第三九号

生態系保全と両立した国有林野事業の確立に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年三月十五日

紙 智子   


       参議院議長 扇 千景 殿



   生態系保全と両立した国有林野事業の確立に関する質問主意書

 国有林野事業は、国土の保全、水資源の涵養、生物多様性の保全など公益的機能の維持増進の役割を果たしていくことが重要である。
 第五十六次平成十六年国有林野事業統計書(平成十五年度)によれば、ブナ林等天然林の伐採が継続しているが、公益的機能を極めて高度に発揮している天然林の伐採については、そこに生息する稀少野生動植物の把握、影響調査の実施等、生態系保全のための細心の注意が求められる。
 政府は、国土の面積の二割、森林面積の三割を占める国有林野の管理経営にあたり、国民の財産である貴重な森林生態系を保全するという観点を両立することが不可欠である。
 以上の立場から、以下質問する。

一 政府は、国有林内に生息・生育している、絶滅のおそれのある野生動植物種(国際自然保護連合版レッドデータリスト、環境省版レッドデータリスト、国有林所在の都道府県版レッドデータリストのいずれかに掲載されているものをいう。)をどのように把握しているのか。国有林を管理する森林管理署・支署・森林管理事務所(以下「森林管理署等」という。)ごとに、種名を詳細に示されたい。

二 第五十六次平成十六年国有林野事業統計書(平成十五年度)では、平成十五年度の国有林伐採について、伐採方法別の伐採面積及び針葉樹・広葉樹それぞれの伐採材積が明らかにされている。平成十六年度及び平成十七年度の国有林伐採について、伐採方法別の伐採面積及び針葉樹・広葉樹それぞれの伐採材積を森林管理署等ごとに明らかにされたい。また、これらの伐採は生態系保全と両立したものであるのか、政府の見解を併せて明らかにされたい。なお、平成十七年度については現時点で把握できる範囲で示されたい。

三 平成十八年度の国有林伐採予定は現時点でどのようになっているのか、伐採樹種、伐採量、伐採面積、伐採方法等について、森林管理署等ごとに明らかにされたい。また、その伐採予定が生態系保全と両立するものとして計画されたものであるのかも併せて示されたい。

四 政府は「新・生物多様性国家戦略」の「具体的施策の展開」の中で、国有林について「地域特有の景観や豊富な生態系を有する森林も多くあり・・・、このような変化に富んだ森林は、多種多様な生物の生息・生育地となっており、その適切な管理経営を通じて、生物多様性の保全に大きな役割を果たしています」と位置付けている。
 一例として、中部森林管理局では、長野県の国有林内を対象にした「稀少野生植物ハンドブック」(平成十六年三月)を出版し、伐採予定箇所等を職員が調査する際に携行させて、該当種の生育が確認されれば、その情報を施業に反映させていると聞いている。
 各森林管理局や森林管理署等は、国有林内で樹木を伐採する際に、生物多様性を保全するためにどのような措置を講じているのか、詳細に明らかにされたい。

  右質問する。