質問主意書

第164回国会(常会)

質問主意書


質問第三八号

電気用品安全法の経過措置終了に伴う対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年三月十四日

近藤 正道   


       参議院議長 扇 千景 殿



   電気用品安全法の経過措置終了に伴う対応に関する質問主意書

 電気用品安全法(以下「本法」という。)は、一九九九年に電気用品取締法(以下「旧法」という。)を改正して生まれた法律であり、二〇〇一年四月一日から施行されている。
 本法の規制対象製品には、旧法の表示とは異なる新たなPSEマークを表示することが義務付けられているが、経過措置として、既に旧法に基づく表示を付して市場に流通している規制対象製品については、期間を限って販売又は販売目的で陳列することが認められている。
 特定電気用品のうち電気温水器、電気便座などの製品及び特定電気用品以外の電気用品のうち電気冷蔵庫、電気洗濯機、テレビジョン受信機、電子楽器、音響機器、ゲーム機器などの製品については、この経過措置に基づく販売猶予期間が二〇〇六年三月三一日で終了する。二〇〇六年四月一日以降は、故障等もなく引き続き使用できる製品であったとしても、PSEマークが表示されていない対象製品を販売又は販売目的で陳列することはできなくなってしまう。
 リサイクル業者や中古家電販売業者等(以下「販売業者等」という。)にとって、このような本法の規制は死活問題とも言える。四月以降、販売業者等の大量廃業や、中古販売のできない製品の不法投棄も懸念される。特に、中古楽器店のように希少価値の高い年代物の機器を専門に扱う販売業者等は、その販売製品のほとんどが本法の対象となってしまい、深刻な状況に置かれる。
 報道においても、本法の経過措置の国民への周知の不備が指摘されており、経済産業省もそれを認めているとされる。中には「つい最近知った」という中古家電販売業者等もいるという。
 PSE問題を考える会(東京都中央区)が実施したアンケート調査(リサイクル業者三九社が回答)によれば、回答した業者の取扱商品に占める電気製品の割合は四九%であり、そのうちPSEマークがない電気製品が五六%を占めること、PSEマークがない電気製品を販売できなくなることを知った時期はどの業者も今年一月以降であったこと、八六%の業者が今年四月以降の利用客数の減少を予想していること、四二%の業者がPSEマークのない電気製品の在庫を四月以降処分する方針であることなど、業者がいかに深刻に受け止めているか明らかである。
 利用者の生命に関わる電気製品の安全性の確保自体は、極めて重要である。しかし、安全に問題がなく、かつ引き続き利用可能な中古製品の販売と流通が、本法により疎外されることには疑義がある。
 そこで、以下質問する。

一 本法の制度、特に具体的な規制と経過措置について、いつ、どこで、どのような方法を用いて国民に周知を図ったのか、詳細に示されたい。

二 本法により大きな影響を受ける販売業者等に対する周知の度合いについて、調査を行ったことはあるか。調査を行ったのであれば、本法の周知の度合いに応じ、さらなる周知の手だてを図ったのかも明らかにされたい。

三 本年三月の経過措置終了時点において、販売業者等が抱えるPSEマークのない中古製品の在庫がどの程度存在することになると把握しているのか。また、この点に関して調査を行ったことはあるか。

四 本年三月の経過措置終了時点において、本法の規制の影響を受ける販売業者等の数をどのように把握しているのか。

五 既に、多くの業者がPSEマークのない製品の買い取りを中止している状況にある。販売する製品がなくなり、経営に困難を来して廃業を余儀なくされる販売業者等には、どのような対策を講ずるのか。また、販売できずに廃棄物となるものも増えることから不法投棄も懸念されるが、不法投棄防止のための監視体制をどのように講じているのか。

六 本法施行前に製造された電化製品でも、安全性に大差がないと指摘する意見もあると聞く。経年劣化により危険度が増す電気製品の種別及び事故発生の状況をどのように把握しているのか、詳細に示されたい。

七 販売業者等の中には、本法に基づく製造事業者として経済産業省に事業の届出を行い、自主的にPSEマークを付けた上で販売を継続する動きもある。しかし、PSEマークを付するには、製品に電気的な加工を行い、通電検査など定められたチェックの上その記録を三年間保存しなければならず、加えて一部製品は第三者機関のチェックを受ける必要があるなど、販売業者等にとっては煩雑な手続になっている。本法に従うために中古製品に手を加えるという、いわば「再製造」を行ってPSEマークを添付する専門業者の発生も予想される。これらの販売業者等や専門業者に対し、安全性の確保等必要な指導を行うことは考えているのか。

八 旧法と異なり、本法ではメーカーが自社でチェックしてPSEマークを添付できるようになっている。民間の自由度を高めているが、このような民間の検査によって安全性はいかに担保されると認識しているか。

九 本法に従うための再度の検査を余儀なくされることにより、結果としてそのコストが価格に転嫁され不利益を被るのは一般消費者である。PSEマークがない製品でも、旧法に適合してさえいれば、安全性は国によって担保されていると考えるが、安全性に問題のない製品を疎外してまで、PSEマーク付与を義務付けることによる国民の利益とは何か。

十 今後、国民の要望に応え、製造から長期間が経過しても特定の需要があり、かつ電力消費量も低く一律の安全基準に含める必要がないと思われる楽器等の製品を、本法の対象から除外する等の措置を講ずる考えはあるか。

  右質問する。