質問主意書

第164回国会(常会)

質問主意書


質問第三七号

全国瞬時警報システムの実証実験及び事態想定等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年三月十四日

大田 昌秀   


       参議院議長 扇 千景 殿



   全国瞬時警報システムの実証実験及び事態想定等に関する質問主意書

 総務省消防庁では、都道府県及び市町村の協力を得て、今年一月実施の東京都豊島区を皮切りに、三月実施の千葉県富浦町を含めて全国十六か所で、全国瞬時警報システム(以下「J-ALERT」という。)の実証実験を実施している。一月五日付け消防庁報道資料によると、J-ALERTは、津波警報、緊急地震速報、緊急火山情報、弾道ミサイル発射情報等といった緊急情報を住民へ伝達するシステムとされている。
 ところが、三月六日及び七日に千葉県富浦町で行われたJ-ALERTの実証実験では、千葉県は千葉県国民保護計画に基づいて、「テロリスト数人が東京湾岸の某基地を攻撃したあと特殊潜行艇で逃亡している途中、富浦町の大房岬付近で座礁し、同町の海岸付近から上陸した」(千葉県総務部消防地震防災課の説明)という事態想定のもとで、町立富浦小学校の児童百二十人を含む百六十人の住民の参加のもとに避難訓練を実施した。
 すなわち、千葉県では、J-ALERTの実証実験と国民保護法に基づいて作成した千葉県国民保護計画による避難訓練をリンクして実施したのであるが、そもそも消防庁としては、J-ALERTと都道府県及び市町村の国民保護計画による避難訓練等と抱き合わせる形で実施する方法を是認しているのかどうか、また、J-ALERTの事態想定に挙げている「弾道ミサイル等」の「等」には「テロリストの上陸」という事態も含まれているのか、疑問なしとしない。
 そこで、以下質問する。

一 J-ALERTが対処する事態の中の「弾道ミサイル等」とは、武力攻撃事態を意味するのか。そのように認識しているとすれば、「弾道ミサイル等」の「等」とは、具体的には弾道ミサイルによる攻撃のほかにどのような事態を想定しているのかを明らかにされたい。

二 千葉県においては、J-ALERTの実証実験が国民保護計画の避難訓練と結合して実施されたが、消防庁としてはこのような実施方法を当初から想定し是認していたのか、所見を示されたい。

三 千葉県で実施された実証実験における事態想定で示すところの「テロリスト」とは、基地を攻撃し特殊潜行艇で逃亡するという設定などから、特殊部隊と解せられる。そうであれば、軍事常識的に考えれば、近くの海域には、その母艦及び支援部隊が待機して、上陸した「テロリスト」すなわち特殊部隊を救出する行動を展開することになる。さらには、引き続き別部隊の投入など新たな軍事攻撃の展開といった軍事行動の拡大が想定されることになる。
 今回、千葉県が想定した「テロリスト」とはどのような組織あるいは集団を指しているのか、かつ新たな軍事行動の拡大を念頭に置いて設定されたものであるのか、政府が承知するところを明らかにされたい。

四 千葉県で実施された実証実験は、基地攻撃後のテロリストの上陸であり、戦時を想定した避難訓練と思われる。そうであれば、戦時訓練に小学生を参加させるのは、現行憲法下で教育上の配慮に欠けていると言わざるを得ない。今回の訓練における千葉県の事態想定の妥当性について、政府の見解を示されたい。

五 J-ALERTの実証実験及び運用等、今後の実施計画について具体的に明らかにされたい。

  右質問する。