質問主意書

第164回国会(常会)

質問主意書


質問第一八号

沖縄返還協定に関わる日米政府間の密約の存在等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年二月十五日

喜納 昌吉   


       参議院議長 扇 千景 殿



   沖縄返還協定に関わる日米政府間の密約の存在等に関する質問主意書

 一九七二年の沖縄返還に際し米国が負担すべき土地の原状回復補償費四〇〇万ドルを日本が肩代わりした密約の存在を、当時、外務省アメリカ局長として返還交渉に当たっていた吉野文六氏が、今月八日付「北海道新聞」で明らかにした。
 この密約の存在を明記した米国側文書は二〇〇〇年五月と二〇〇二年六月に米国立公文書館で見つかっているが、日本政府は一貫して密約の存在を否定してきた。今回の吉野氏の同紙向け証言で、密約の存在が改めて確認されたが、安倍晋三内閣官房長官や麻生太郎外務大臣ら政府高官は、密約の存在を依然否定している。
 そこで、以下質問する。

一 安倍内閣官房長官は、今月一〇日付「毎日新聞」において、「全くそうした密約はなかったと報告を受けている」と語ったとされている。また、麻生外務大臣は、今月一〇日付「毎日新聞」夕刊において、「河野外相のときに吉野局長に聞いて、当時は『ない』と答えたということで、この話は終わっている」と語ったとされている。しかし、吉野氏が密約の存在を今回初めて認めた以上、状況は一変したわけである。また、「北海道新聞」に続く「共同通信」や全国紙などの報道で、密約の存在は改めて脚光を浴び、世論の関心は高まっている。そこで、安倍内閣官房長官及び麻生外務大臣は、密約の存在について再調査を行い、真実を公表する必要があると考えるが、その意思があるかどうか明らかにされたい。もし再調査の必要がないと考える場合は、その理由を示されたい。

二 吉野氏の証言と米国側公開文書の内容が一致した以上、政府が密約の存在を否定し続けても説得力はなく、日本政府の「嘘」が内外で一層印象付けられることになり、外交への信頼性が傷つくばかりで国益にも反すると考える。政府は、態度を改めて事実を究明し直し密約の存在を潔く認める意思はあるか明らかにされたい。その意思がない場合は、否定し続けることで、どのような政策上の利益があるのかを説明されたい。

三 沖縄返還時に日本側が負担することになった三億二〇〇〇万ドルに「核問題などに考慮した費用七〇〇〇万ドル」が含まれていたことについて、吉野氏は前記「北海道新聞」で、「核の撤去費用などはもともと積算根拠がない、いわばつかみ金。あんなに金がかかるわけがない。」と語っている。この吉野氏の発言内容について、政府の見解を示されたい。

四 米国政府は今月一一日の在日米軍再編に関する日米審議官級協議で、「在沖米海兵隊のグアム島移転の費用は約九〇〇〇億円」と提示したとされている。交渉が秘密裏でなく公開されたのは好ましいが、「つかみ金」ではなく、この費用の内訳を詳細に究明すべく米国側に強く働きかけていく意思が政府にあるか明らかにされたい。

五 グアム島への海兵隊移転は米軍戦略の一環であって、本来、移転費用などは米国側が負担すべきものと考えられるが、なぜ、日本側が費用の大きな部分を負担しなければならないのか、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。