質問主意書

第164回国会(常会)

質問主意書


質問第八号

違法伐採対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年一月二十七日

小川 勝也   


       参議院議長 扇 千景 殿



   違法伐採対策に関する質問主意書

 一九九八年のバーミンガムサミットで、G8首脳が「森林に関する行動プログラム」を採択し、木材や木製品の違法な製造・貿易に対処する必要性を示して以来、違法伐採に関しては、数多くの閣僚宣言、決議、合意が出されてきた。日本政府も加わった国際合意は、昨年二月までに二四回も形成されている。その経緯及び内容は、二〇〇五年二月に外務省が「違法伐採問題」としてウェブサイトでまとめている。
 例えば、二〇〇二年四月にオランダで開催された生物多様性条約第六回締約国会議では、違法伐採に関する対策などを含む森林の生物多様性に関する新たな作業計画が明記された閣僚宣言が採択された。その作業計画が付属している「森林の生物多様性に関する決議」では、「森林法及び関連法規の実効性の担保とその的確な施行及び施策の実施とこれらに関連する貿易の問題について対策がなされていない場合には、生物多様性に悪影響を及ぼすことを認識し、喫緊の課題として取り組むことを締約国その他の政府に促す」と明記された。
 また、二〇〇二年六月、カナダで開催されたG8外務大臣会合で提出された「G8森林行動プログラム最終報告書」では、需要面でG8加盟各国が措置を進めるものとして、「公的な調達方針の見直し」、「違法な生産元からの輸入品が国内市場に入らないようにするための摘発方法の改善」、「木材追跡を通じた合法性の特定・検証を行うための市場ベースの手段・方法の開発」、「林産物の産地に係るラベリング・認証の推進」が挙げられた。
 こうした中、日本政府は、外務省のウェブサイトにおいて、ロシアについて「環境NGOグリーンピースは、ロシアから生産される木材の二〇%が違法伐採木材であり、許可証なしの伐採、許可証の偽造等の行為が横行していると指摘。一方、本問題に関係する沿海地方政府機関は、違法伐採木材は、許可を得て伐採された量の一%未満であると発表。」、インドネシアについて「インドネシア政府は、違法伐採が森林に関する最大の問題であるとして、各国に対して支援を要請。英国とインドネシアの合同調査では、インドネシアで生産される木材の五〇%以上が違法伐採木材であると報告。」などと示しているように、問題の所在を認識している。
 日本は消費する木材・木製品の約八割を輸入に依存しているが、地球環境の見地から、森林の違法伐採材を排除することは極めて重要である。
 そこで、以下質問する。

一 政府の具体的な対策について

 政府は、一九九八年以降のそれぞれの閣僚宣言、決議、合意などを受け、違法伐採について具体的にどのような対策を行ってきたのか。また、その効果をどのように把握しているのか明らかにされたい。

二 「G8森林行動プログラム最終報告書」で挙げられた措置について

1 パプアニューギニア(以下「PNG」という。)では、厳しい林業規定によって、伐採事業者が持続可能な森林経営を考慮し、地元の土地所有者の「インフォームド・コンセント(充分な情報に基づく合意)」を得て事業を行うことが義務付けられている。世界銀行とオーストラリア国際開発局が資金提供をした「PNG林業査定チーム」が行った調査の報告書(以下「本報告書」という。)によれば、申請された伐採権を査定した結果、申請の三分の一が違法であるという。
 本報告書に基づいて追跡調査を行った国際環境NGOが、昨年一二月八日、香川県の詫間港で、違法伐採材と思われる木材を確認し、林野庁及び坂出税関支署詫間出張所に原産地の確認や輸入規制などを訴えた。「違法な生産元からの輸入品が国内市場に入らないようにするための摘発方法の改善」はG8加盟国に求められている課題である。この具体的な摘発に対し、政府は確認を行うなどの何らかの具体的な措置を採っているのか、詳細に明らかにされたい。また、採っていないのであればその理由は何か。
2 本報告書により、PNGのワオイ・グアビ地域で行われた伐採で、林業規定の一八項目の基準に対する二六一件の違反があり、土壌侵食や有害化学物質や廃油の水質汚染が引き起こされ、一方で、伐採企業が警察機動隊を動員して調査活動の妨害を行った例があるとされている。また、バニモ地域では、森林法に準じた伐採が行われず、地域の伐採企業が警官に金を払って企業のために働かせ、住民の人権侵害や国外追放などを行っていることが指摘された。こうした「PNG林業査定チーム」の報告を、日本政府としても「違法な生産元からの輸入品が国内市場に入らないようにするための摘発」に利用すべきと考えるが、いかがか。
3 輸入国側として違法伐採材を排除する上で、国際環境NGOの情報やネットワークの協力は不可欠であると考える。二〇〇二年四月には、英国政府は内閣の建物にアフリカの原生林破壊をした木材を使っているのをNGOに指摘されて認め、オーストラリアの森林保全大臣は同年一一月、PNGからの違法伐採材輸入を阻止する行動が港で起きたのを契機に、違法伐採輸入の取締りを明言した例がある。日本でも今後、違法伐採材がNGOに発見された場合、摘発方法の一つとして採用し、違法伐採材が排除されるよう努めるべきであると考えるが、政府はどのように考えるか。
4 政府は、「G8森林行動プログラム最終報告書」に挙げられている「違法な生産元からの輸入品が国内市場に入らないようにするための摘発方法の改善」として、どのような具体的な対策を採るつもりか。
5 政府は、違法伐採された木材を輸入側として排除するために、今後4で取り上げた摘発以外にどのような手段を採る考えか、具体的に示されたい。

三 違法伐採材輸入の実態把握について

1 政府は、違法伐採材の国内への流入の実態について、どのような方法により、どのような状況にあると把握しているのか。また、今後はどのような方法で把握するつもりか。
2 政府は、英国政府がインドネシア政府とともに行った調査と同様の調査を、違法伐採の存在が疑われる各国とともに行っているのか。実態を詳細に明らかにされたい。
3 政府は、違法伐採について、木材産出国との間でどのような情報共有を行っているのか。
4 インドネシア、ロシア及びPNGは、日本と同様、生物多様性条約の加盟国である。二〇〇二年に行った「森林の生物多様性に関する決議」にのっとって、こうした国に働きかけて、合同調査を行うべきであると考えるがどうか。

四 「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」について

1 林野庁が本年一月に公表した「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」においては、合法性の証明方法として「森林・林業・木材産業関係団体の認定を得て事業者が行う証明方法」や「個別企業等の独自の取組による証明方法」が挙げられている。しかし、その中では、伐採現場での作業実態や製造方法などの情報が証明書に記載されることにはなっていない。伐採作業の実態や製造方法などの情報も証明書の記載事項に加え、透明性を確保して、第三者による検証を可能にすべきであると考えるがどうか。
2 このガイドラインは、「森林・林業・木材産業関係団体、学識経験者、環境NGO等で構成される協議会を設け、環境物品等の調達の推進に関する基本方針に基づく国等の調達に対応した木材・木材製品分野における関係者の取組状況を検証し、必要に応じて適切な見直しを行う」とされている。ガイドラインの実効性の検証を開始するため、この協議会を早急に設置する必要があると考えるが、いつまでにどのような形で設置をするか明らかにされたい。
3 このガイドラインによって、どの程度の違法伐採材の輸入を減らせると見込んでいるのか明らかにされたい。

五 輸入貿易管理令の改正について

 外国為替及び外国貿易法に基づく輸入貿易管理令では、原産地や船積地域によって輸入規制をかけることが可能である。例えば、中国、北朝鮮、台湾のさけ・ますなどは、自国の川で獲ったことを証明させる方法により、他国の川で不法に獲ったものを規制している。違法伐採についても、生物多様性条約第六回締約国会議で、「森林法及び関連法規の実効性の担保とその的確な施行及び施策の実施とこれらに関連する貿易の問題について対策がなされていない場合には、生物多様性に悪影響を及ぼすことを認識し、喫緊の課題として取り組むことを締約国その他の政府に促す」と決議されていることから、これを根拠に、少なくとも加盟国に対して、伐採地の明記と、その伐採から製品生産までが合法で生態系に配慮していることの証明を求め、それ以外は輸入を規制するべきであると考える。この点から、早急に輸入貿易管理令の改正を行うべきであると考えるが、政府はどのように考えるか。

  右質問する。