質問主意書

第163回国会(特別会)

質問主意書


質問第二四号

関西電力美浜発電所三号機事故における保安規定遵守義務違反に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十七年十月三十一日

近藤 正道   


       参議院議長 扇 千景 殿



   関西電力美浜発電所三号機事故における保安規定遵守義務違反に関する質問主意書

 私は、去る八月八日に「関西電力美浜発電所三号機事故における保安規定遵守義務違反に関する質問主意書」を提出し、それに対する政府の答弁書を八月十二日に受領した。その答弁書によれば、「美浜発電所三号機の事故は、外注管理及び配管の減肉管理が適切に行われていなかったことによるものであるが、当該事故は、平成十六年五月十三日に保安規定の変更の認可を受ける以前に実施された保安活動によるものであり、また、関西電力は、品質保証計画を当該認可による変更後の保安規定に規定し、これに基づき保安活動の計画、実施、評価及び改善を行うこととしていた。したがって、関西電力が保安規定を遵守していなかったとは認められず、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第三十七条第四項には違反していないと判断したものである。」となっている。
 しかし、最近判明した関西電力本社による調査結果によって、事故直前に破損配管の点検漏れを発見していた事実が明らかとなったことから、改めて以下質問する。

一 関西電力では、大飯発電所一号機で平成十六年七月初めの点検により主要点検部位以外の配管で予想外の減肉を発見し、同年七月五日にプレス発表した。原因究明作業に取りかかると同時に、同様の事象が他のプラントで発生していないかどうかを水平展開することとし、同年七月十六日には原因と対策をプレス発表した。水平展開に際しては、温度が高い箇所を点検対象に入れるなど点検対象部位を広げて未点検部位の調査を行った。同年七月三十日には正式に指示文書を出し、未点検部位の有無を全発電所で調査した。
 関西電力による社内聞き取り調査の結果、記録には残されていないが、遅くとも七月末から八月初めには美浜発電所三号機の配管の点検漏れを発見し、八月十四日から始まる予定の定期検査で点検することになっていることを確認した。そうであれば、八月九日の事故直前、遅くとも事故の一週間前には点検漏れを発見していたと推定される。
 配管の点検漏れを発見した際の対応については、二次系配管の肉厚管理に関するPWR管理指針(以下「管理指針」という。)に明確な記載はない。しかし、管理指針には余寿命評価に関し「計算上必要な肉厚になるまでの余寿命を各系統の部位毎に算出し、余寿命が二年以下になるまでに点検を行う。点検結果を評価し、再度余寿命を評価して、余寿命が二年以下になるまでに再点検を行う。以下これを繰り返す。」「点検結果より、余寿命を算出し、余寿命が二年以下の場合は取替計画を立案し、耐食性材料(SUS304等)と取り替えるものとする。」と規定されている。また、未点検のときには、計算式により余寿命を求めることも規定されている。
 したがって、関西電力が当該配管の点検漏れを発見してすぐに、管理指針に従って余寿命評価を行っておれば、余寿命が十年以上のマイナスであり、破断の危険が迫っていることを容易に推定できたはずである。それにもかかわらず、二週間程度先の定期検査まで放置したために事故を防止できなかった責任は重いと言わざるを得ない。これは平成十六年五月十三日に保安規定変更の認可を受けた後の保安活動であり、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)第三十七条第四項に違反していると考えられるがいかがか。

二 美浜発電所三号機については、事故配管を含めて二次系配管の取替をすでに完了し、肉厚測定を行った後に経済産業省の検査を受け、技術基準に適合していれば運転停止命令が解除される手続となっている。この運転停止命令は電気事業法に基づく技術基準不適合に対する処分であり、保安規定違反に基づく処分ではない。
 関西電力による事故直前の保安活動が保安規定に違反していることが明らかとなった以上、原子炉等規制法第三十七条第四項の規定に基づいて、原子炉設置者である関西電力に対し、原子炉の設置及び運転の許可を取り消すなどの処分を行うのが相当であると考えるがどうか。

  右質問する。