質問主意書

第162回国会(常会)

答弁書


答弁書第二九号

内閣参質一六二第二九号
  平成十七年六月二十一日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 細田 博之   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員谷博之君提出生活保護受給者に対する公的保険制度適用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員谷博之君提出生活保護受給者に対する公的保険制度適用に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)に基づく保護は、本来、同法第六条第一項に規定する被保護者(以下「被保護者」という。)が資力を有しない場合に行われるものであるが、急迫の場合等において保護が行われた際の同法第六十三条に基づく保護に要した費用の返還については、被保護者の資力を返還額の限度としており、一括支給された年金が資力として認定された場合、その額を上回る額の返還を請求されることはない。なお、年金等の収入があったことを契機として被保護者が保護を要しなくなる場合には、保護の実施機関は、被保護者の世帯の自立更生に必要な額等を勘案しつつ返還額を決定しているところである。

三について

 介護保険制度は、被保険者が保険料を負担し、被保険者自らが要介護状態又は要支援状態(以下「要介護状態等」という。)になった場合に必要な介護サービスを受けるものであるが、四十歳以上六十五歳未満の被保険者(以下「第二号被保険者」という。)の負担する保険料は、高齢者の介護を社会全体で支援するという性格も有しているものである。また、六十五歳以上の者と比較した場合、就労や稼得の形態が多様である四十歳以上六十五歳未満の者については、地域で一元的に保険料を徴収するよりも、就労や稼得の形態に合わせて職域と地域に分けて保険料を徴収した方が効率的である。これらのことから、第二号被保険者については、その保険料を全国を単位として一定のルールで算定し、医療保険者が医療保険の保険料として徴収することとし、四十歳以上六十五歳未満の医療保険加入者を第二号被保険者としているものである。

四について

 介護保険制度は、要介護状態等にある被保険者に対して必要な介護サービスに係る給付を行うものであるが、三についてで述べたように、第二号被保険者については、その保険料が高齢者の介護を社会全体で支援するという性格も有していること等から、四十歳以上六十五歳未満の医療保険加入者を介護保険制度の第二号被保険者としており、介護保険の被保険者とならない四十歳以上六十五歳未満で要介護状態等にある被保護者については、生活保護制度において介護扶助が行われることにより、必要な介護サービスを受けることができるので、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第九条第二号の規定は、法の下の平等に反するものではなく、また、人間の尊厳を侵すものでもないと考えている。

五について

 国民健康保険制度においては、健康保険法(大正十一年法律第七十号)の被保険者等についての適用を除外しており、被保護者についても、保険料の負担能力がないことや、その多くが医療扶助を受けており、他の被保険者の保険料負担や保険財政に与える影響も大きいこと等から、従来から被保険者から除外しているものである。
 一方、介護保険制度においては、介護ニーズの高い高齢者を等しく被保険者とすることにより、普遍的に介護費用の保障を行うという観点から、六十五歳以上の被保護者も被保険者としているものであり、両制度の被保険者の範囲について異なることは、必ずしも整合性を欠くものではないと考えている。