質問主意書

第162回国会(常会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質一六二第一号
  平成十七年二月一日
内閣総理大臣 小泉 純一郎   


       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員円より子君提出助産師に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員円より子君提出助産師に関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号。以下「法」という。)第二十条第一号の学校及び同条第二号の助産師養成所(以下「助産師学校養成所」という。)の指定基準における分べんの介助回数については、「十回以上」と規定してきたところであるが、医療関係者審議会保健婦助産婦看護婦部会の下に設置した「看護職員の養成に関するカリキュラム等改善検討会」の平成八年の中間報告書において「分娩取扱件数の実態を踏まえ少子社会の中で可能であり、かつ、助産婦としての基礎的知識技術を身につける最低の線」として「十例程度を目安とする」こととされたことを踏まえ、平成八年の保健師助産師看護師学校養成所指定規則(昭和二十六年文部省・厚生省令第一号。以下「指定規則」という。)の一部改正により「十回程度」に改めたところである。文部科学大臣又は厚生労働大臣は、助産師学校養成所の指定に当たっては、学生一人につき十回以上の分べん介助が可能であるか否かにより「十回程度」を満たすか否かの判断を行っており、また、指定後の指導に当たっては、医療機関における正常分べんの数は一定ではなく分べん介助の回数が当初の予定より下回ることがあるため、九回を下回った場合に、「十回程度」に満たないと判断している。

一の3について

 指定規則別表二備考三に規定する「複数の教育内容を併せて教授することが教育上適切と認められる場合」の判断については、「看護師等養成所の運営に関する指導要領について」(平成十三年一月五日付け健政発第五号厚生省健康政策局長通知。以下「指導要領」という。)別表2「助産師教育の基本的考え方、留意点等」を踏まえて、文部科学大臣又は厚生労働大臣が行っている。

一の4について

 助産学実習における分べんの介助回数については、指定規則の内容を具体化するものとして、指導要領において「学生一人につき正常産を十回程度直接取り扱うこと」を規定しており、一件の分べんを二人の学生が介助した場合や後産の介助のみを行った場合を含むものではないと考えており、別途指定規則等に規定することは考えていない。

一の5について

 臨地実習における、妊娠、分べん、産じょく各期を通した継続ケアについては、各助産師学校養成所の教育目標に照らして各助産師学校養成所が自主的な判断により教育するものであるが、平成十七年度に開催予定の看護基礎教育のカリキュラム等の改正に係る検討会(以下「改正検討会」という。)においては、望ましい臨地実習の在り方も含めて検討することを予定している。

一の6及び7について

 文部科学省及び厚生労働省においては、一部の助産師学校養成所が、分べんの介助回数が結果的に「十回程度」を満たしたとは言い難い学生の助産学実習の単位を認定した場合があったことを把握している。このようなことは法第二十条の趣旨に反するものであると考えており、当該学生が在籍した助産師学校養成所に対しては、口頭又は文書にて指導し、改善を求めているところである。また、指定を取り消すか否かについては、現在のところ取り消した事例はないが、個別具体的状況に即して総合的に判断することとしている。

一の8について

 助産師学校養成所における学生等の学習の状況を記録した書類については、学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)第十五条、第七十七条の十一及び第七十八条において、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校、同法第八十二条の二に規定する専修学校及び同法第八十三条第一項に規定する各種学校に対し、保存を義務付けているところであるが、分べんの介助回数を証明する書類の保存については、具体的には義務付けていない。

二の1について

 助産師養成所及び短期大学助産学専攻科(以下「専攻科等」という。)が廃止され、専攻科等がなくなった都道府県は、平成十六年十二月末日現在、八県である。

二の2について

 専攻科等については、平成十六年十二月末日現在、三十七都道府県に設置されており、看護師国家試験に合格した者はこれらの都道府県の専攻科等に入学することもできるため、必ずしも助産師になる道が閉ざされてはいないと考えている。

二の3及び4について

 助産師を含む看護職員の人材養成については、看護師等の人材確保の促進に関する法律(平成四年法律第八十六号)に基づく「看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」(平成四年文部省・厚生省・労働省告示第一号)により、教育内容の充実や教員等指導者の育成を図る観点から、看護系大学・大学院の整備充実を一層推進していくこととしており、専攻科等から四年制大学への移行については、助産師学校養成所の設置者において同指針を踏まえて進められているものと考えている。
 四年制大学における助産師教育については意義があるものと考えており、助産師学校として指定されている大学については、その実態を把握しつつ、分べんの介助実習を始め、助産師教育がより一層充実されるよう促してまいりたい。また、改正検討会においても、助産師教育の内容の充実について検討することを予定している。

三の1及び2について

 旧厚生省健康政策局長の私的検討会として設置された「看護職員の需給に関する検討会」が平成十二年に取りまとめた「看護職員の需給に関する検討会報告書」においては、病院その他の施設ごとの動向を踏まえ、各都道府県において助産師を含む看護職員の必要数を推計し、これらを積算して全国における看護職員の必要数の推計としている。したがって、助産師の必要数は、地域における各医療機関において提供する出産ケアの内容等を考慮して推計されているものと考えている。

三の3について

 厚生労働省医政局長の私的検討会である「第六次看護職員需給見通しに関する検討会」(以下「第六次検討会」という。)のメンバーに、助産師は含まれていないが、助産師業務に関し知見を有する者は含まれている。

三の4及び5について

 助産師については、医療機関における偏在があるとの指摘もあり、一概にその数が足りているということはできないが、出生数が減少している中で、過去五年間の養成数は、毎年およそ千六百人であり、また、就業者数は平成十一年の二万四千六百五十四人から平成十五年の二万五千七百二十四人と微増し、安定して推移していると考えている。なお、平成十八年以降の助産師を含めた看護職員の需給見通しについては、第六次検討会において検討を行っているところである。