質問主意書

第162回国会(常会)

質問主意書


質問第四一号

違法年金担保に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十七年七月二十七日

前川 清成   


       参議院議長 扇 千景 殿



   違法年金担保に関する質問主意書

 先の国会において貸金業の規制等に関する法律の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)が成立し、広告・勧誘に当たって禁止される行為の追加や公的給付に係る預金通帳等の引渡し等の制限、罰則について規定された。
 しかし、その後も年金を担保とする融資を誘引する広告が新聞や、職業別電話帳等に散見されるなど、なおも巧妙な手段により法の趣旨を逸脱している事例も見受け、改正法が十分に機能しているのか、疑問がある。
 違法年金担保は、被害者が一旦融資を受けたならば、当該被害者が死ぬまで搾取が続く点において、被害が根深い。違法年金担保は、正に生活の基盤そのものを奪う、重大な犯罪行為である。
 高利貸し優先の社会を変革し、生活者、消費者の利益を守る法秩序を構築するためにも、違法年金担保被害の根絶は喫緊の課題である。
 そこで、以下質問する。

一 改正法施行後、違法年金担保の被害実態に関して政府は調査したのか。また、各都道府県に対して、被害実態の調査をさせているか。
 既に調査済みの場合は、その結果を示されたい。
 万一、調査未了の場合には、法律を誠実に執行することこそ内閣の責務である以上、その前提として、常に改正法の執行状況と、その効果を見極める必要があると考えるが、未了の理由は何か。

二 今も違法年金担保の誘引と思われる広告が散見されるが、広告の調査、取締りに関して、どのような体制を整備したか。
 とりわけ、実際に取締りを担う各都道府県の貸金業担当課に対して、政府はどのような指導、監督、情報提供を行い、また各都道府県の貸金業担当課から、政府はどのように報告を受ける体制を整備したかも示されたい。

三 政府は改正法の施行に当たり、いかなる方法にて取締りの徹底を図っているか、具体的方法を回答されたい。
 とりわけ、警察庁にあっては、改正法に基づくこれまでの検挙件数及び今後の取組方針を、金融庁にあっては、改正法に基づくこれまでの行政処分数(都道府県による処分数も含む。)及び今後の取組方針を示されたい。

四 近時、政府の広報手段としてホームページが利用されることが多いが、国民は常時政府のホームページを閲覧しているわけではない。加えて、違法年金担保の被害者となる高齢者は、パソコンを利用しない者が多いと思われる。したがって、ホームページによる広報は、とりわけ違法年金担保について効果が乏しいため、高齢者向けの広報を工夫する必要があるはずである。
 例えば、年金受給者に対して、「貸金を年金から返済する契約は法律で禁止されており、無効です。」と記載した案内文を送付する(振込通知書に並記する)ことは極めて簡易であり、かつ何よりも有効な周知手段であると考える。
 そこで、違法年金担保の被害を未然に防止するべく、政府は国民に対してどのような方法で改正法の趣旨や違法年金担保被害の実態を広報しているか。政府の具体的な手段を明らかにされたい。

五 違法年金担保業者の一部は、改正法を潜脱するために、預金通帳等の引渡しを受けずに、年金等公的給付の受給口座に貸金業者への自動引落しを設定するなどの実態がみられる。
 しかし、この自動引落しは、年金受給者の行為を介することなく、直接貸金業者が利払いを受け、貸金を回収する点において、預金通帳等の引渡しを受ける行為と経済的には同一である。よって、かかる脱法行為を厳格に取り締まる必要がある。
 同時に、金融機関が、故意あるいは過失で、違法年金担保業者による脱法行為を見逃している場合は、当該金融機関は「共犯」というべきであり、金融機関の責任も厳しく問う必要がある。
 ついては、自動引落し行為に対する政府の対応を回答されたい。

六 脱法手段によって、実質的に公的給付を担保とした貸付を行う業者によって改正法の実効性が損なわれないよう、仮に罰則によって規制できない範囲が存在するならば、貸金業規制法に基づく事務ガイドラインを改訂するなどして、直ちに有効な規制を行うべきと考えるが、政府の見解はどうか。

  右質問する。