質問主意書

第162回国会(常会)

質問主意書


質問第三八号

公立学校建物へのアスベスト使用の状況及び対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十七年七月十三日

津田 弥太郎   


       参議院議長 扇 千景 殿



   公立学校建物へのアスベスト使用の状況及び対策に関する質問主意書

 現在、アスベスト(石綿)による特有のがんである「中皮腫」などの健康被害が広がりをみせ、アスベスト製品メーカーなどの従業員だけでなく、家族、周辺住民、さらにはアスベストを使った建物を通じての被害も含め、極めて深刻な社会問題に発展している。
 一九八〇年にWHOにおいてアスベストが発がん物質に断定されて以降、一九九〇年代までに全面的にアスベストの使用を禁止した欧州諸国に比べ、我が国政府は危機感に乏しく、その対応も常に後手に回っていたことが各方面から指摘されている。一九八六年にILOが採択した「アスベストの使用における安全に関する条約」が、未だに批准されていないことなどはその最たる証左であり、政府の責任は重いと断ぜざるを得ない。
 労働災害としてのアスベスト被害は、今国会に政府が提出している労働安全衛生法等の一部を改正する法律案の審議においても、真摯な議論が行われるものと確信しているが、現在、子どもたちとその保護者の間に不安感が広がっている公立学校建物へのアスベスト使用問題について、使用の実態を明らかにし、万全の対策を求める立場から、以下質問する。

一、昭和六二年に当時の文部省は、公立学校建物仕上調査(以下「昭和六二年調査」という。)を行い、吹き付けアスベストの使用状況を把握したとされている。昭和六二年調査によって、吹き付けアスベストが使用されていたと報告した公立学校は、小学校七一一校、中学校三二二校、高等学校二七三校、特殊教育諸学校三一校の合計一三三七校と承知しているが、このうち現在までの大規模改造事業での補助実績は、ここで示した学校区分ごとに各何校かを明らかにされたい。

二、大規模改造事業を行った公立学校は、昭和六二年調査の結果においてアスベスト対策を行う緊急性及び必要性が高かった公立学校と理解してよいか。

三、大規模改造事業によるアスベスト対策以外にも、改築によりアスベストが除去された学校、設置者が単独でアスベスト対策工事を実施した学校もあるとの説明を文部科学省は行っているが、これらのいずれの対策も講じられずに、現在まで放置されている学校について、学校名及び所在地を明らかにされたい。

四、吹き付けアスベストが天井などにそのまま放置されている場合において、人体とりわけ児童・生徒等への健康被害の可能性は、将来も含めて存しないのかどうか、政府の見解を示されたい。 

五、現在までに発生した中皮腫の被害に関し、学校建物を通じての被害が疑われる事例はあり得ないかどうか、政府の見解を示されたい。 

六、昭和六二年調査は、昭和五〇年九月に吹き付けアスベストの使用が禁止されていることを踏まえ、調査対象を昭和五一年度以前に建設された建物に限定している。しかし、実際には少なくとも昭和五五年まではアスベストが使われていたばかりか、昭和六三年まで使われていた可能性も専門家からは指摘されている。現時点においても、昭和五二年度以降の公立学校建物には吹き付けアスベストが使われていないという政府の認識に変わりはないか。

七、昭和六二年調査は、その調査範囲を校舎(普通教室及び特別教室)、屋内運動場、寄宿舎に限定している。しかし、アスベストが最も多く使用されているのは、昭和六二年調査の対象とならなかった給食室や廊下であることが専門家から指摘されている。そもそも、なぜ昭和六二年調査の対象から給食室などを外したのか。また、調査対象以外の給食室、廊下などへのアスベスト使用の状況については、どのように認識しているのか。

八、昭和六二年調査は、調査対象も調査範囲も不十分であり、加えて調査結果に基づく対応も極めてずさんな疑いが強い。改めて早急に公立学校建物のアスベスト使用に関する全面的な調査を行い、必要な対策を講ずべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。