質問主意書

第162回国会(常会)

質問主意書


質問第三四号

北朝鮮貨客船「万景峰九二」号に対する政府の対応等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十七年六月二十三日

白 眞勲   


       参議院議長 扇 千景 殿



   北朝鮮貨客船「万景峰九二」号に対する政府の対応等に関する質問主意書

 北朝鮮は、核保有を宣言し、拉致問題の早期解決に非協力的な態度に終始している。このような状況下、「万景峰九二」号が、拉致被害者家族会のメンバーらが抗議する中、北朝鮮より新潟港に繰り返し入港している。
 政府は、「万景峰九二」号につき、関係法令の遵守を徹底すべく立入検査等を徹底して行わなければならない。そして、それらの検査により法律等違反があった場合には、今後、入港禁止等も含めた対応も真剣に検討されるべきであることは言及するまでもない。
 以上の観点から、以下質問する。

一 「万景峰九二」号及びその積荷に関する検査について

1 「万景峰九二」号自体の船舶及びその積荷についての検査は、どの機関が、どのような方法で行っているのか。各入港時の機関ごとの検査方法、検査に従事する平均人数と平均検査時間を示されたい。
 また、積荷の不正持出阻止や船舶自体の安全性確保など「万景峰九二」号の法令遵守徹底のため、現在の検査体制で、十分であると考えるか。十分でないと考える場合、今後どのような対策をとるつもりか示されたい。
2 「万景峰九二」号自体の船舶及びその積荷について、平成十四年九月から現在までの間、法律上問題のある事例はあったか。あった場合には、その事例が問題とされた理由、その事例に対する政府の行政指導や処分等及びその結果について示されたい。

二 「万景峰九二」号の積荷に関する情報公開について

 現在の北朝鮮の核及びミサイル開発に対する疑惑は、日本の安全保障に重大な影響を及ぼすことが懸念されている。したがって、「万景峰九二」号による日本から北朝鮮に対する違法な輸出はもちろんのこと、間接的にせよ結果的に軍事目的への転用のおそれがある物品の輸出は、たとえ合法的であれ、認められるべきではないと考える。さらに、北朝鮮政府は、国内の極めて深刻な食料不足を理由として、世界各国に食料支援を要請している。そのような状況の中、「万景峰九二」号に積まれている物品の中に高級食材が含まれているとすれば、北朝鮮政府の言動は著しく整合性を欠くものであると言わざるを得ない。
 このような事情を考えると、「万景峰九二」号の積荷に関する情報は、世界的にも極めて重要な内容を含んでおり、情報の不開示は全く理解できるものではない。私は、こうした観点から、去る五月二十四日に「北朝鮮貨客船『万景峰九二』号の積荷に関する質問主意書」(以下「前回質問主意書」という。)を提出し、六月三日に内閣から答弁書が送付されたが、その答弁内容に疑義があるので、改めて質問する。
1 前回質問主意書に対する答弁書において「答弁を差し控えたい」とある部分は、国会法第七十五条に規定する答弁義務を満たしていると考えるか。法的根拠を明らかにし、政府の見解を示されたい。
2 答弁を差し控える事由の一つとして、「今後、正確な事実の把握を困難にし、税関の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」が挙げられている。
(一) 「万景峰九二」号の積荷の情報公開により、どのような「支障」が予想されるのか。具体的な事例にて示されたい。
(二) 税関事務に関する事由は、一般論としては公正な見解であると理解する。しかし、北朝鮮の核、ミサイル開発疑惑などの諸問題、さらに長期化している拉致問題の解決のため、「万景峰九二」号の積荷の情報公開は、政府の断固たる姿勢を示す好機であり、国民の平和と安全の維持に有効な側面があると考える。また、北朝鮮政府の食料支援要請との整合性を検証するため、積荷に含まれる食料の情報公開は、非常に重要であると考える。情報公開による、多くの拉致被害者とその家族を含めた日本国民の生命と財産を守るための「努力」及び「日本国の主権」並びに北朝鮮諸問題解決による世界各国への「寄与」と、単なる一隻の特定船舶の情報公開に関し「おそれ」に過ぎない「支障」を比較した場合、どちらが優先されるべきか。政府の見解を示されたい。
3 答弁を差し控える事由として、さらに「船舶の所有者、輸出者等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」が挙げられている。
(一) 「万景峰九二」号の「船舶の所有者」とはだれか、具体的に示されたい。
(二) 拉致被害者及びその家族の「正当な利益」と「万景峰九二」号の所有者及び積荷の輸出者等の「正当な利益」を比較した場合、どちらが優先されるべきか。政府の見解を示されたい。

三 「万景峰九二」号の積荷について

 前回質問主意書と同様の趣旨により、五月三十日、六月四日及び六月十日の新潟港入港時に北朝鮮向けとして積み込まれた「万景峰九二」号の積荷について質問する。
1 通関時に把握している現金の件数、件別の金額及び総額を示されたい。また、検査などにより、違法な現金の持ち出しが発覚している場合、その件数、件別の金額と総額及びそれに対する措置についても示されたい。
2 メロン、ワイン、霜降り和牛及びその他高級食材は含まれているか。含まれている場合には、その名称、数量、購入先、価格等通関時に把握している情報を示されたい。
3 電子電気製品は含まれているか。含まれている場合には、その名称、数量、メーカー名、購入先、価格等通関時に把握している情報を示されたい。
4 機械部品は含まれているか。含まれている場合には、その名称、数量、メーカー名、購入先、価格等通関時に把握している情報を示されたい。

四 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法に関する答弁について

 前回質問主意書に対する答弁書によると、「政府として、万景峰九二号に対し特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法に基づいた入港禁止措置をとることは、現時点においては考えていない。」とされている。
1 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第三条には、「我が国の平和及び安全の維持のため特に必要があると認めるとき」に「入港を禁止する」とある。北朝鮮により国民が拉致され、ミサイルが日本海に向け発射されたという状況において、なぜ「現時点において考えていない」と言えるのか。その理由について、具体的に示されたい。
2 政府が考える「必要があると認めるとき」とは、いつであるか。具体的に示されたい。

  右質問する。